確定申告会場の様子を窺うことは、日本の「行政テクノロジー」の進化を学ぶのと同義である。
日本では全国の都道府県もしくは市区町村が、確定申告会場というものを毎年設ける。地域内の多数の申告者に対応するため、その地域の「広いスペースを持った施設」を借りてそこを確定申告会場にするのだ。筆者の住む静岡県静岡市の場合は、ツインメッセ静岡という多目的大型施設を会場に指定する。
が、もしかしたら数年以内に大型会場は必要なくなるかもしれない。そのような近未来を匂わせる光景に、筆者は出くわすことができた。
確定申告会場を訪れる人が少なくなった!

筆者は毎年、自宅ではなく確定申告会場で作業を行っている。その理由は、行政テクノロジーの進化をこの目で観察するためだ。
マイナンバーカードとe-Taxの連携が始まる以前、確定申告会場には大きく分けて2つの区切りがあった。それは「PCを扱える人向けのスペース」と「PC操作が苦手な人向けのスペース」である。筆者が青色申告のできる個人事業主として初めて確定申告会場を訪れた時(2016年)は、まだPC操作が苦手な人向けスペースのほうにたくさんの来場者が集まっていたと記憶している。
しかし、それから状況は大きく変わった。マイナンバーカードというものが登場し、さらにそれと連携した確定申告ができるようになり、その上でCOVID-19という疾患が世界中の人々を恐怖のどん底に陥れる時代が到来すると、税務署は「極力自宅で確定申告をするように」という方針に転換したのだ。
いつでも確定申告会場に足を運ぶことはできなくなり、代わりにLINEのミニアプリを使った来場予約システムが導入された。パンデミック期、このシステムを使ってやって来た来場者が入場時間待ちの列を作っていたものだが、今年2026年のツインメッセ静岡にはその列すら殆どなくなっていた。自宅で確定申告をする人が増えたということだ。
今年は「ペーパーレス化」がさらに進む

会場内も、今年はどこか閑散としている感じが否めなかった。
それを写真に撮ってこの記事に掲載する……などということはさすがにできないが、明らかに来場者が以前よりも減っている。おかげで順番までの待機時間も大幅に減ったのだが、アルバイトスタッフを雇わないと来場者をさばき切れなかったかつての光景はもうない。ちなみに、筆者は2011年に確定申告会場のスタッフのアルバイトをしたことがある。
そうしたアルバイトを楽しみにしていた人にとって、以下の文章は不幸なニュースである。
2026年の確定申告会場では、原則として全員が自分のスマホを使う。仕切りのついた机だけがあって、PCは置いていない。どうしてもPCを使いたいのなら、自分でノートPCを持参するしかない(現に筆者はそれをやった)。つまり、今現在の確定申告会場とは「プラットフォームの操作に悩んだ時に署員に相談できる場」でしかないのだ。
さらに言えば、会場には収支内訳書や青色申告決算書が全く見当たらない。去年までは箱に入っていて、来場者はいつでもそれを取り出すことができたのだが……。
筆者は青色申告決算書を紙で提出したので、署員に言って1部融通してもらった。が、来年からはそれもできなくなるかもしれない。書類提出も、今やペーパーレス化が進められているからだ。
当然ながら、それに従って会場スタッフも少人数化される。ちょっとしたお祭りのようだった賑やかな光景は、完全に昔話と化してしまった。
人口のV字回復は不可能だからこそ…
行政の技術的進化によって我々一般市民が得たものは、一体何だったのか?
ある人は「スタッフが不親切になった」と話し、またある人は「マイナンバーカードのせいで、むしろ自分には難しい手順が増えてしまった」と話す。しかし、マイナンバーカードとマイナポータル、e-Taxにより我々は自宅で確定申告ができる環境を手にした。スマホとマイナンバーカードを紐付けすれば、ログインの際に物理カードを持っている必要もなくなる。
誤解を恐れずに書けば、「当事者自身の手で全てを行う」ことによる省力化(と、それができる環境)がついに実現したのだ。
静岡市の難波喬司市長は、12月2日の市議会で「2050年の人口目標を54万人に設定するのが最も適切」と述べた。2025年10月末の静岡市の人口は、約67万人である。このまま市として何も施策を行わなかった場合、2050年の静岡市の人口は約49万人になると見込まれている。
つまり、難波氏は「静岡市の人口は、何をどうやってもV字回復することはまずない」と公言したのだ。惰性のように「しぞーか(静岡市)は今後ものんびりとした暮らしをうちっちに提供してくれる」と考えていた静岡市民の意識を、容赦なく破壊する言葉だった。
難波氏は事実に触れたに過ぎない。静岡市だけではなく、日本全体を覆う事実を口にしただけだ。「人がいなくなった」ことによる影響は、あらゆる分野に容赦なく及ぶだろう。上に確定申告会場のアルバイトスタッフの話を書いたが、これからはそのような求人を出しても応じる人がいない……という現象が起きるのではないか。あらゆるところで人材争奪戦が発生し、それは恐らく今世紀までには解消しないだろう。
だからこそ、「自分でできることは自分で」を徹底させなければならない。
電子化、オンライン化、ペーパーレス化。それまで行政が二の足を踏んできたことが、急速の勢いで実現しつつあることを強調しながら今回はここで筆を置きたい。
文/澤田真一
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