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プロ野球を国民的な娯楽にした「長嶋茂雄」は一体何が凄かったのか?

2026.03.25

日本は野球が盛んな国ということは、既に国際的に知れ渡っている。

筆者がこの記事を書いている時点では、メジャーリーグの開幕を控えている段階だ。大谷翔平は、今年はどのような活躍を見せてくれるのだろうか? 今からその話題でスポーツニュース番組も持ち切りだが、これは言い換えればプロ野球観戦が日本人にとっての娯楽に定着したという意味だ。

「何を今更そんなことを」と返されてしまうかもしれないが、実は戦後10年超経った時点ではプロ野球は「職業野球」と呼ばれ、ブルーカラーはともかくホワイトカラーの間では明確に差別されていたのだ。「スポーツそのものを飯の種にしている低学歴の連中」という具合に。

それを大きく変えたのが、「長嶋茂雄の巨人入団」である。

アナタは息子をプロ球団に入れますか?

企業が部活動として行う野球は、現在では「実業団野球」よりも「社会人野球」として呼ばれることが多い。しかし、その呼び名は「プロ野球選手は“社会”の外にいる存在」という無意識の偏見につながってしまうので、以下は「実業団野球」で統一したい。

実業団野球、そして六大学野球は、現代では「プロへ行くためのつなぎ」という色合いが強い。六大学野球を経て実業団野球に進んだA選手が、2年後にどの球団から声をかけられるのか。実業団野球の選手がドラフト指名されようものなら、その企業の広報部はてんやわんやである。企業の公式SNSアカウントには「A選手、巨人へ入団決定!」という誇らしい文字が出現するだろう。

しかし、ここで読者の諸兄諸姉に質問したい。もしもアナタがA選手の親だったら、息子をそのままプロ野球に送り出せるだろうか?

プロの世界は熾烈である。結果が出なければ簡単にクビを切られてしまう業界だ。ドラフトの順位は、その後の活躍を保証してくれるものでは全くない。せっかく早稲田や慶応義塾に入れたのに、極めて不安定な職業に息子を送り込むのは、相当な抵抗感があるはずだ。

昔であれば、そうした息子の進路は家族ぐるみ、そして学校ぐるみで大反対されていたことをここで思い出す必要がある。

「高卒就職組」が新聞で取り上げられていた時代

筆者の手元に、1954年1月5日の読売新聞朝刊8ページ『千葉読売』の紙出力資料がある。

実はこれが、読売新聞に長嶋茂雄の名が登場した(検索可能の)もっとも古い記事。地元の図書館で検索してみたのだが、高校3年生の頃の長嶋が出ていることに筆者は感動すらしてしまった。

ただしこれは、長嶋1人だけの活躍を書いた記事ではなく、千葉県内の有力高校球児がどの針路を選んだかを伝える内容だ。長嶋はもちろん、千葉県立佐倉一高(現・佐倉高)から立教大学に進学している。

興味深いのは、この記事で名前が掲載されている選手は誰もが大学か、そうでなければ国鉄、東京電力、日立製作所といった企業に就職している点だ。就職組は、当然ながら「高卒社員」としてそれぞれの実業団チームに入ったはずである。

この時代、プロとアマの実力差は決して大きいものではなかった。というより、プロ球団でもチームによっては六大学野球や実業団野球よりも明らかに実力で劣るということがあったのだ。全国紙ではプロ野球よりも、何と実業団軟式野球の大会結果のほうが大きな記事になっていた。

なお、1954年に南海ホークスにテスト生として入団した野村克也は、国鉄とカネボウの就職内定を蹴った上でプロ入りしている。野村が貧困家庭の出身であることと、当時の進学・就職事情を考えると、野村は「最高条件の針路」を捨てて賭けに出たことがよく分かる。

「入団2年目の若手プロ野球選手」=「大相撲の横綱」

そんな当時のプロ野球だが、立教大学に進学して六大学野球で大活躍を果たした「立教三羽烏」長嶋茂雄、本屋敷錦吾、杉浦忠がいずれもプロ志望したことで流れは大きく変わる。

その中でも、長嶋は六大学野球で一番の人気を獲得し、その動向が大衆にとっての注目の的になった。長嶋のプレーは、軍隊の風習が色濃く残っていたそれまでのものとはまるで異なり、失敗を恐れない大胆なアクションを発揮した。本当に失敗したとしても、爽やかな笑顔を浮かべている選手はこの当時長嶋以外になかなかいなかったはずだ。

小学館が1959年に創刊した『週刊少年サンデー』第1号の表紙は、「子供の耳打ちに応じる長嶋茂雄」である。この時、長嶋はまだプロ2年目。つまり、当時の小学館はルーキーイヤーを終えたばかりのプロ野球選手を表紙に抜擢したのだ。なお、全く同時期に講談社が創刊した『週刊少年マガジン』では、大相撲の3代朝潮太郎が表紙になっている。この時の朝潮は、横綱に昇進して間もない頃。小学館は、長嶋茂雄というルーキーに近いプロ野球選手を大相撲の大関や横綱と同格の存在にしたのだ。

そして、ここからプロ野球は市民権を獲得するようになる。

長嶋茂雄がいなかったら…

長嶋茂雄は、その存在自体が「プロ野球の地位向上」には欠かせないものだった。

もしも長嶋が存在しなかった場合、プロ野球が日本人全体に受け入れられるまでのスケジュールは大幅に遅れていた可能性がある。そして、大相撲以外の「プロ競技」自体の確立・受容にまで影響が及んでいたのではないだろうか。

地位や学歴を問わず、誰しもが楽しめるプロスポーツの確立。

長嶋茂雄は、我々日本人に極めて大きなプレゼントをしてくれたのだ。

文/澤田真一

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1984年生まれ。静岡市生まれ相模原市育ち。グラップリング歴20年超。世界のスタートアップ情報からガジェットレビュー、Apple製品、キャッシュレス決済、その他諸々のジャンルの記事を執筆。

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