現在、パートナーシップ宣誓制度の導入が進む一方で、生活の基盤である「住まい」においては、法的な家族と認められないことによるローン審査や相続、保険加入などで制限を受けやすく、結果として希望する住まいを諦めざるを得ない現状にある。
こうした中で不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は、LGBTQ当事者の住まい購入における実態を把握するため、パートナーとの住宅購入を経験・検討した首都圏(1都3県)に在住する20代~50代のLGBTQ当事者266名を対象に「LGBTQカップルの住まい購入に関する実態調査」を実施し、その結果を発表した。
【1】LGBTQカップルが住宅購入時に遭遇する[不便や困難]
LGBTQカップルが住宅購入を検討する際に、自身のセクシャリティが理由で不便に感じたり、困ったりした経験があるかと聞いたところ、61.3%が「ある」と回答した。

【2】LGBTQカップルの住宅購入における[妥協]
「もしセクシャリティに関する制度的・心理的な障壁がなければ、より条件の良い物件を選んでいたか」という聞いたところ、46.6%が「確実に選んでいた」、33.8%が「おそらく選んでいた」と回答した。8割以上が、本来の希望よりも条件を下げて購入や検討していることがわかった。
【3】LGBTQカップルが住宅購入時に経験した[障壁]
LGBTQカップルで住宅購入時に困った経験がある人に、物件見学・内見から購入の意思決定の過程で不便や困ったことについて聞いたところ、最多回答は「希望する物件の周辺住民との付き合いが不安(35.0%)」で、コミュニティに受け入れてもらえるかどうかが、購入の意思決定に影響を与えている。
この他には、「自分たちの関係性が意図しない形で共有・漏洩されないか不安(34.4%)」や「パートナーとの関係の伝え方を悩み、問合せをためらった(32.5%)」など、不動産会社や物件オーナーに対する不安も抱えている。
実際の対応を受けた際に「『女性同士だから予算は低いだろう』等のカップルへのステレオタイプに基づいた接客をされた(32.5%)」や「セクシャリティを理由に、売主や不動産会社から購入を断られたり、遠回しに難色を示されたりした(31.3%)」など、不快な経験をした当事者もいた。
LGBTQカップルで住宅購入時に困った経験がある人に住宅購入の際に、セクシャリティが理由で条件を妥協、諦めた経験について聞いたところ、最も多い回答は「パートナーを死亡保険金の受取人に指定できる団体信用生命保険の選択肢が限られ、条件が最良ではない銀行で妥協した(36.8%)」となった。
他の回答では「より好条件の会社があるかもしれないと思ったが、カミングアウトの負担を避け、理解を示してくれた不動産会社で決めた」「ローン審査の通りやすさを優先して予算を下げた(36.2%)」が続く。
この他にも、「パートナーとの連名で購入したかったが審査の壁があり、一人の名義・単独ローンで購入した」のようにローン審査や制度面のハードルや煩雑さを避けた選択している。
また、「親にカミングアウトできず資金援助を諦めた(33.1%)」や「パートナーシップ宣誓制度や多様性に寛容そうな都心エリアに限定して探した(32.5%)」といった回答もあり、当事者特有の切実な葛藤や心理的なハードルが住むエリアの選択肢を狭めている実態がわかった。
【4】LGBTQカップルの[ローンの組み方]と[購入・検討物件]
LGBTQカップルが住宅購入に利用、または検討しているローンの組み方の最多回答は「ペアローン(35.0%)」で「単独ローン(32.7%)」を上回った。LGBTQカップルは、単独名義だと名義人が亡くなった際、その親族に不動産が相続されてしまい、残されたパートナーが家を追い出されるリスクがある。
ペアローンは「共有名義」にでき、それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入可能で、万が一どちらかが亡くなった場合にもその人のローン残高は保険で完済される点がメリットだ。さらに公正証書遺言とセットで準備することで、残されたパートナーの住居と生活を強力に守る防衛策になる。
LGBTQカップルが購入した・検討している住宅の種類は「新築一戸建て(53.8%)」が最多で、「新築マンション(47.7%)」「中古マンション(38.7%)」「中古一戸建て(29.7%)」「注文住宅(20.3%)」という結果だった。
【5】LGBTQカップルが不動産会社に求めること
不動産会社や金融機関を選ぶ際に「LGBTQへの理解」については67.3%が「重要である」(合計:「非常に重要である」30.8%,「重要である」36.5%)と回答した。
「重要である」と回答した方に、不動産会社や担当者に求めることは、「基礎知識や適切な接客マナー(36.3%)」や「周辺住民の多様性や、コミュニティの寛容度の情報提供(35.2%)」、「店頭やサイトでのLGBTQフレンドリーの表明(34.6%)」など、特別なサービス以上に、安心して相談できる環境整備が上位に挙がっている。住宅ローンや行政制度の知識や提案、LGBTQフレンドリーな行政書士・ファイナンシャルプランナーの紹介など具体的な事務手続きに関する回答も挙がった。
企画者 LIFULL HOME’S 事業本部 梶川美久里氏のコメント
今回の調査では、LGBTQ当事者の住宅購入への高い意欲と、それに反する“機会損失”の存在が明らかになりました。
LGBTQカップルの世帯年収で最も多い回答は「1,000万円以上1,200万円未満」でした。厚生労働省の調査※では、世帯の平均所得金額は536万円であることから7割以上のLGBTQカップルは経済的な基盤を持っていることがうかがえます。これは二人ともがフルタイム勤務であることや本調査の対象が首都圏在住のため賃金水準が高いことから高年収世帯の割合を押し上げている要因と考えられます。
一方で、約8割が「本来ならより良い物件を選べたはず」と回答しました。首都圏ではペアローンが一般化する中、当事者も同様に利用・希望しています。しかし、手続きの過程で関係性を開示することへのストレスや、自分たちに合った情報にたどり着けない不安が、選択肢を狭めています。制度上は可能でも、「安心して選べる状態」にはなっていないのが現実です。マイホームの購入は、人生の未来を描く大切な機会です。だからこそ、消去法ではなく、納得して選べる環境を整えることが必要です。今回の調査は、一人ひとりに最適化された情報提供と支援体制の整備こそが、誰もが自分らしい暮らしを諦めない社会につながることを示しています。
※ 国民生活基礎調査の概況
<調査概要>
調査対象:首都圏(1都3県)に在住する20代~50代のLGBTQ当事者(パートナーと共同での住宅購入検討者・経験者)/ゲイ(男性を好きになる男性)、レズビアン(女性を好きになる女性)、トランスジェンダー、ノンバイナリー / Xジェンダー(男女どちらにも当てはまらないなど)、バイセクシュアル(両性を好きになる)、パンセクシュアル(相手の性別を問わず好きになる)
調査期間:2026年1月30日~2026年2月6日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:266名
出典元:LIFULL HOME’S
構成/こじへい







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