衆院選後、改めて高市首相は政策を発表した。その政策は、インフレを助長する可能性がある。その内容について解説する。
インフレの仕組み
インフレとは、モノの価値が上がっていくことだ。インフレは悪者ではなく、モノの価値が上がれば、企業が商品の価格を上げることができ、その価格を上げた分売上高・利益も増え、その一部を社員に分配して賃金が上昇するという好循環を生む。
そのため、長くデフレが続いていた日本では、日銀は2%のインフレ目標を置いていた。一方で、インフレは主に、以下のような3つのデメリットがある。
(1)保有する現金の価値が下がる。
(2)実質賃金のマイナス
(3)国債の利払い費の増加
インフレはモノの価格が上がることであるから、例えば、今日100円だったものが、1年後に110円とモノの価格が上がるのである。それは、今日100円あれば買えていたものが、1年後には100円だけでは買えなくなることであり、つまり、お金の価値が下がっているのである。一方で、お金を現金ではなく、物価上昇を上回る金利で運用していればお金の価値は下がらない。2026年1月の前年同月比の消費者物価指数は1.5%の上昇であるが、1.5%を超える利回りで運用していない資産は、物価上昇分とそのお金の利回りの差の分、お金の価値が下がることになる。
そして、インフレは実質賃金のマイナスを起こすことがある。実質賃金のマイナスとは、賃金の上昇率を上回る物価上昇率となることをいう。
ここ1年、賃金上昇率を上回る物価上昇が起こっており、実質賃金はマイナスが続いていた。ただ、最近は物価上昇が落ち着いてきたことにより、2025年12月、2026年1月はプラスに転じた。実質賃金がマイナスの状態であると、受け取る賃金の価値が実質下がることになる。
さらに、日本は国債の発行額がGDP比230%と突出して多いが、金利が上がることで、その利払い費も増加し、結局は税金でしはらわなければならないことになる。実際、令和7年度当初より令和8年度の利払い費は2.5兆円増加している。
では、そもそもインフレはどのようにして起きるのだろうか。インフレには、主に以下の要因で起こる。
(1)お金余り
(2)円安
(3)石油価格の上昇
これまで、日本は長期的に物価が下落するデフレが続いていたため、日銀はインフレ2%を目標に、政策金利をマイナスまで下げ、国債を購入することで市場に資金を流してきた。デフレを脱却することができたため、日銀は、2024年3月のマイナス金利解除を皮切りに利上げをすすめ、現在政策金利は0.75%としている。それでもまだ、インフレ率よりも政策金利の方が低く、緩和的な状態、つまりお金が借りやすく市場に資金が流れやすい状態となっており、インフレを助長させるような状態である。
そして、原料や燃料を輸入に頼っている日本では、円安は物価を上昇させる。日本国内で生産されている食品でも、その食品を作るための原料や燃料が輸入であるため、その価格が転嫁され、価格が上昇する。
また、石油や石炭などの燃料は、輸入され、円から外貨で購入していることから、それ自体の価格が上昇していなくても、円安分価格が上昇し、電気代やガス代、ガソリン代の価格も上昇する。そこに石油価格自体が上がれば、さらなるインフレとなる可能性がある。
高市首相の政策は?
2月初めの衆議院議員選挙の結果を受けて、改めて内閣総理大臣に指名された高市首相は、国会で施政方針演説を行った。そのなかで、以下のような施策を行うことを述べている。
(1)責任ある積極財政
(2)軽減税率が適用される飲食料品の消費税のゼロ税率(2年間)
責任ある積極財政とは、国内産業への積極的な投資である。国内産業を盛り上げるために、投資すること自体はよいことではあるが、その財源は、将来のツケとなるかもしれない。
これまでの一般会計は、歳出(支出)が、税収(収入)を上回る状態が続いており、国債の発行で補うことが常態化している。特にコロナ禍では大幅に税収を上回る歳出を行った。日本の債務残高は2023年実績でGDP比230%と、米国の119%に比べてみても、世界のなかでも大きく突出しているが、今のところ日銀が購入し、日銀は日本人の豊富な銀行預金に支えられているため、日本がすぐ破綻するということはないが、その利息の支払いや借金のツケは結局、増税、社会保険料の上昇等で将来支払わなければならないだろう。
上記のように、国債の発行残高は増え続けている。令和8年度で見ると、令和7年度に引き続き好景気による税収が増加しているが、本来はこのようなときは、国の支援が通常より不要となるため、財政出動を抑え、国債発行をできるだけ減少させるべきである。しかしながら、逆に、極財政により、予算を増やすことで、国債の信用性が欠け、国債が売られることで金利が上がり、円安も加速させ、インフレ対策をするはずが、逆にインフレを加速させる可能性がある。
インフレは、インフレによる賃金上昇の影響がなく、資産運用による資産増加の影響を受けないような、低所得層に、生活必需品の価格が上がることで悪い影響を与える。そのため、高市首相は、低所得層への支援のための、給付付き税額控除の制度設計を行う予定としているが、すぐには結論が出ないため、2年間限定で軽減税率が適用される飲料食品について消費税をゼロとするとしている。消費税ゼロは、低所得層だけでなく、高所得層まで適用されることになるため、スーパー等で高所得層が、消費税がゼロだから少し高くても買うということになれば、この政策もまたインフレを加速する可能性がある。
原油価格も高騰
円安によりガソリンや電気代が高くはなっていたが、そのもととなる原油や石炭自体の価格は比較的安定していたが、ここにきて、米国・イスラエルとイランの戦争が激化し、中東から石油タンカーを運ぶ要となる、ホルムズ海峡が事実上封鎖されたことから、石油価格が上昇している。60ドル台であったWTIが一時119ドルまで上昇し、3月10時点でも90ドル台となっており、未だに石油価格が高い状態となっている。このような状態が続けば、今のインフレにさらなる追い打ちをかけることになるだろう。
(参考)
首相官邸 「第221回国会における高市内閣総理大臣施政方針演説」
2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)1月分
文/大堀貴子







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