「終活」という言葉はすでに定着しているが、その言葉の響きはどこか、自分の人生の“終わり”を淡々と準備するような寂しさを感じさせる。
2026年2月12日、そんな従来の「終活」イメージを覆す”生き活支援”アプリ『JAANE -じゃあね-』がローンチされた。
運営するのは塩原慶之氏が代表取締役を務める株式会社Z。モデルで俳優の高橋メアリージュンさんが、取締役CPRO(Chief Public Relations Officer)に就任し、広報活動を行う。
最後にかける言葉は「ありがとう、ごめんね、愛してる」の3つだけ
『JAANE -じゃあね-』は、突然の事故や病気などの“もしも”に備え、生前に大切な人へメッセージを残すことができるアプリ。写真とテキストでメッセージを登録できる「メッセージ機能」を搭載し、ユーザーの安否が一定期間確認できなかった場合、代理人の承認を経てメッセージが届けられる仕組みだ。
さらに、人生でやってみたいことを登録する「バケツリスト機能」も。人生の有限性を意識することで行動を起こすきっかけを促し、“終活”ではなく“生き活支援”サービスとして位置づけられている。
今回、塩原代表にアプリ開発のきっかけや特徴について、そして高橋さんには『JAANE -じゃあね-』に参画した思いを聞いた。
――“終活”ではなく、“生き方支援”アプリなのですね。
塩原「はい。僕はそもそも、『終わりの活動』という響きがあまり好きではありませんでした。『“生きている今”になぜもっと焦点を当てないのだろう?』という思いがずっとありました。
『終活』は、“自分が亡くなった後”の整理を考えるものですが、『JAANE』は“生きている今”に焦点を当てて、いかに自分の行動を変えていくかにフォーカスしたサービスです」
――『JAANE -じゃあね-』を使ってどんなことが出来るのか教えてください。
塩原「主に2つの機能があります。1つ目は『メッセージ機能』です。アプリをダウンロードすると、毎日、もしくは週次で、『今日もお元気ですか?』といったメッセージが届きます。
それに『元気だよ』と返答する。それだけのシンプルな仕組みなのですが、もし僕が今夜、何らかのアクシデントでこの世を去ったとします。すると、明日、明後日とそのメッセージに応答できなくなりますよね。
一定期間応答がないと、あらかじめ登録しておいた代理人、例えば僕の場合は家族に、『塩原さんと連絡が取れません』という通知が届きます。そして家族が僕の死を確認した上で、『メッセージを送信しますか?』というボタンを押すと、僕が生前に書いておいたメッセージがその時に届けられる、という仕組みです」
――アプリを入れている人同士でメッセージが見られるということですか?
塩原「仕組み自体はとてもシンプルです。例えば僕が高橋さんに最期のメッセージを残したい場合、高橋さんのメールアドレスを教えていただく必要があります。
すると、高橋さんには、『塩原さんからメッセージが登録されました。受け取りますか?』という通知が届きます。ただ、その通知を見ても、僕が生きている間はメッセージの内容を読むことはできません。
『塩原さんは“今日”という“最期の日”を思い、あなたにメッセージを残しました。今はまだ読めませんが、その気持ちだけ受け取ってください』という内容が届くだけです。
そして、僕が本当に亡くなった時に初めてメッセージが届き、そこからアプリを通して読むことができる、という流れです」
――なるほど。毎日生存確認をしながら、いざという時は大事な相手に言葉を届けられると。
塩原「実際にやってみると分かるのですが、誰かにメッセージを書いていると、『もし本当に今日が人生最期の日だったら、僕は何を残すだろう?』と自然に考えることになると思います。
実は、世界中を回っていろんな方に『人生最期の日に、大切な人へどんなメッセージを残すか』とインタビューしたことがあります。
すると、結局はほとんどの人が残したいと言った言葉は、たった3つでした。『ありがとう』『ごめんね』『愛してる』英語にすると、『Thank you』『I’m sorry』『I love you』この3つしかなかったんです」
――世界共通ワードなのですね。
塩原「本当に今日が最期の日だったら、『金を返してくれ』とか『あの仕事どうなった?』みたいな言葉は出てこないんですよね。『今日最期だったら、そんなことよりも、もっと伝えたいことがある』と思える。
それが、ひとつのウェルビーイングというか、心の豊かさや安心感に繋がるのではないかと思っています。そういう意味を持った機能が、『メッセージ機能』です」
――もう1つが「バケツリスト機能」です。
塩原「そうですね。つまり『死ぬまでにやりたいことリスト』です。英語で “What’s on your bucket list?” と言いますが、『生きている間に、本当は何をやりたいのか』を改めて考えるきっかけになります。ホスピスでお話を聞くと、多くの方が亡くなる前に、『あの時、あれをやっておけばよかった』と口にされるそうです。
人生の終わりに残る後悔は、“やってしまったこと”よりも、“やらなかったこと”の方が多いと言われています。だからこそ、その後悔を少しでも減らすためのツールとして、『バケツリスト機能』があります。
やりたいことと期日を書くだけのシンプルな機能なのですが、期日を入れると不思議と覚悟が決まるというか、世界の見え方が少し変わるんです。『それを実現するためのヒント』が日常の中で自然と目に入るようになるのです。そんな風に、人生の一歩を踏み出すきかっけを作る機能です。
メッセージ機能とバケツリスト機能、この2つを軸にしたアプリです」
1日10億件の影にある「未送信の本音」を届けたい
――高橋さんをCPROに起用した決め手は。
塩原「決め手は本当に一言で、『共感』です。実は高橋さんとは以前から知り合いで、アプリの構想段階からお話をしていたんです。するとすごく共感してくださって、まだアプリが世の中に出る前から『実はもう家族にも話しているんですよ』と言ってくださっていました」
――高橋さんは、なぜ『JAANE -じゃあね-』に参画しようと思ったのですか。
高橋「お話をいただいた時は、本当に光栄でした。かなり前から『こういうアプリを作りたいんだ』と聞いていたので、その時から『めちゃくちゃいいじゃないですか!』と言っていたんです。
実は私は、高校1年生、16歳の時に初恋の相手を突然亡くしました。病気ではなく、本当に突然だったので、何が起きたのか分からないくらい呆然としてしまって……」
――それは辛い経験ですね……。
高橋「人の死に直面したのが初めてでしたし、当時は芸能界に入りたてで、自分の夢を追うのに必死で、彼に優しく接する事ができていなかったと思います。『大好きだったこと、もっと伝えておけばよかった』そういう後悔がすごく残りました。
だからこそ、このアプリのコンセプトを聞いた時、すごく心に響いたんです。周りにいる人たちをもっと大切にしたい、『愛してる』『ありがとう』『ごめんね』をちゃんと伝えていきたいと思いました。
このアプリが広がったら、塩原さんがおっしゃる通り、少しずつ“より優しい世界”になっていくんじゃないかと思いました。CPROのお話をいただいた時は、本当にありがたくて、迷わずにお受けしました」
――高橋さんは『JAANE -じゃあね-』を活用して、どんな人にどんなメッセージを残したいですか。
高橋「私は家族全員に残したいですね。『ありがとう』『愛してる』『あなたたちの子どもに生まれてこられて、本当に世界一幸せです』と。すごくシンプルな言葉になってしまうんですけど、それを伝えたいと思っています。」
――このアプリをどんな方に活用してほしいですか。
高橋「丁寧に生きたい人、本当に大切なものを大切にしたい人に。1回きりの人生なので、本当に悔いなく、自分らしく生きたい人に使っていただきたいです。」
塩原「先ほど、『終活』という言葉がありましたが、僕はこのサービスを“想いの未送信市場”だと思っています」
――「想いの未送信市場」ですか!
塩原「例えば、みなさんが毎日、LINEやメールを10件送るとした場合、日本全体では、1日約10億件のメッセージが飛び交っていることになります。でも、その10億件の中にはきっと、“送られなかった言葉”もたくさんあると思うんです。
『本当はありがとうって言いたかった』『ごめんねって言いたかった』『本当は大好きだった』そんな言葉が、言えないまま時間だけが過ぎていく。人はいつか必ず別れの瞬間を迎えます。
でも、その時になって初めて『伝えておけばよかった』と思う言葉があると思うのです。だから僕は、そういう“未送信の想い”を残せる場所があってもいいんじゃないかと思ったんです。今はまだ言えなくても、その想いをどこかに残しておくことで、人は少しだけ勇気を持てるかもしれません。
『せっかく書いたし、明日言ってみようかな』と、そんな小さな一歩踏み出せることもあるかもしれません。言葉もそうですし、バケツリストの行動もそう。ほんの少し背中を押してくれる存在として、このアプリを使っていただけたら嬉しいですね」
人生は有限。「伝えたい、話したい」と思った時には自分や相手がこの世にいないかもしれない。
そう考えると、“終活”ではなく、これからの“生き方”を具体的に思い描いていくことが大事になってくる。
『JAANE -じゃあね-』を活用して大切な人へ伝える言葉を今から考えながら、“人生でやりたいこと”を、より深堀してみてはいかがだろうか。
取材・文/コティマム







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