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10年前の売れ残りシールが完売!?埼玉・新秋津の文具店「ひまわり堂」にかつての平成女児が集う理由

2026.03.13

西武池袋線とJR武蔵野線が交わる町・新秋津。その一角に、かつて〝平成女児〟だった人たちの記憶をそっと呼び覚ます文具店がある。色とりどりのメモ帳、きらきらしたシール、キャラクターのペンケース──子ども時代に胸をときめかせたアイテムが、いまも変わらず棚に並ぶ『ひまわり堂 文具店』だ。

平成という時代、女の子向け文具は特別なコレクションではなく、日常の延長にあった。学校帰りに立ち寄り、限られたお小遣いでお気に入りを選ぶ。そんな子どもの頃の小さな高揚感は、いまや世代で共有する体験になっている。

なぜ、〝あの頃の空気〟は今もこの店に息づいているのか。長年にわたり地域に根ざして店を営んできた、ひまわり堂 文具店の店主・内田和仁さんに話を聞いた。

偶然のバズが生んだ〝平成女児コーナー〟

地元の文具店には、大手量販店にはない魅力がある。お小遣いを握りしめて文房具を選ぶ時間は、子どもにとってかけがえのないひとときだった。

ひまわり堂 文具店は、昔も今も変わらず文房具を通してその時間を支えてきた店だ。しかし、ここ最近は平成女児カルチャーのブームの影響もあり、店の雰囲気に少し変化が生まれているという。

「1年くらい前からですかね、地元ではないお客さんが来るようになったんです。お友達や彼氏と一緒に、〝レトロ探し〟みたいな感じで。最初は本当にレトロ好きの方が中心で、Xを見て来てくれていました。

それがだんだん広がっていって、ご存じのようにブームになっていったんです。特にシールの影響は大きかったですね。平成女児カルチャーを体験した世代や、シール好きの方たちが増えてきました。年齢でいうと、だいたい20代後半から30代前半くらいの方が多い印象です」

現在、店内の一角には〝平成女児コーナー〟が設けられている。通常の文房具が並ぶなかに、当時の空気感をぎゅっと閉じ込めたような一角が現れる。まるで時間が巻き戻ったかのような感覚と、カラフルでキラキラとした世界観に、思わず足を止めてしまう。

このコーナーは、もともと店に残っていたシールをXに投稿したところから始まったという。

「お店に『くちチャックん』という、10年前に登場したうさぎのキャラクターのシールがたくさん残っていたんです。売れないまま在庫になっていて、仕入れたのは私なので、『失敗しちゃったな』と正直思っていたんです。

それで、ちょっとギャグのつもりで『まだこんなに残っています』って Xに投稿してみたら、それがバズっちゃって(笑)。でも、今となっては、そういう昔のキャラクターってみんなにとってはレアなんですよね」

どこの文具店でも、売れ残った商品は処分したり、返品したり、あるいは福袋にしてその年のうちに売り切ってしまうことがほとんどだ。そのため、当時のアイテムが店頭に残っているケースは多くない。

しかし、ひまわり堂では、お客さんがそのシールを探して訪れたことをきっかけに、状況が変わったという。そこから少しずつ需要が広がり、もともとブックスタンドの売り場だった一角は、やがて〝平成女児コーナー〟へと姿を変えていった。

「〝平成レトロ〟っていう言葉は、なんとなく耳にしていたんです。だから、ちょっとギャグ感覚というか、自虐も込めて投稿してみようかなと。そしたら、みんながすごく楽しんでくれて。

それで、在庫にあった平成女児のペンポーチをここに並べてみたんです。するとXでたくさん見てもらえて。それなら〝平成女児コーナー〟にしてみよう、という流れでした。

最初は今みたいな規模ではなくて、本当にミニマムな感じでした。この場所も、もともとは地味なコーナーで、置いていてもなかなか商品が動かなかったんです。どうせなら何か面白いことをやってみようと思って、残っていたものをここに集めてみました。

バラバラにあると〝売れ残り〟みたいに見えてしまうんですけど、こうしてまとめると、不思議と雰囲気が出るんですよね。平成らしい、明るくてポップな感じになるというか」

今では、このコーナーのディスプレイをすることが内田さんの楽しみのひとつになっているという。

平成女児文具の進化と現在地

ひまわり堂 文具店は1996年に創業し、今年で28年目を迎える。開店当初は子ども向けの文房具は扱っておらず、大学生や地域の年配層を対象に、一般的な文房具やお祝い用の袋などを中心に展開していた。

「最初はノートやボールペンなど、比較的渋めの文房具を中心に扱っていました。子ども向け文具を置き始めたきっかけは、レモン株式会社の1枚100円ほどのシールからです。試しに少しだけ置いてみたところ、子どもたちがとても喜んでくれて。

そこから、ひまわり堂での最初の子ども向け文具の展開が生まれ、鉛筆やペンケースなどのファンシー文具をどんどん増やしていくことになりました」

それ以降、放課後になると子どもたちがひまわり堂 文具店を目指して駆け込んでくるようになった。1990年代から2000年代初頭にかけては、ジュニアファッションでもカラフルな色使いやポップなデザインが広がった時代だったが、子ども向け文具の世界も同様に、流行やデザインの変化を重ねながら現在へと続いているという。

「サンエックスさんやクーリアさん、クラックスさん、カミオジャパンさんなど、各メーカーさんが本当に質の高い商品を次々と出していて、〝すごいな〟と思うものはどんどん増えていきました。

ただ、コロナ前くらいからでしょうか。低学年のうちは柄物は禁止、という学校が増えてきたんです。『子どもの気が散ってしまうから、入学時は無地のものを持ってきてください』という方針ですね。もう7、8年ほど続いている流れだと思います。

そうした風潮に合わせて、〝かわいい〟文房具もだんだんシンプルになっていきました。たとえば平成に流行したデニム素材のペンケースも、より装飾の少ないデザインへと変わっていきました。柄物が難しいとなると、今度は色味にこだわるようになります。派手な装飾ではなく、落ち着いたおしゃれなカラーを選ぶ傾向が強くなりました。

その結果、最近のペンケースは、どこかコスメポーチのような雰囲気になってきています。そうした変化ははっきり感じますね」

しかし、最近のシンプルなペンケースは、ひと昔前のものと比べると格段におしゃれになっているという。装飾は控えめでも、自分でカスタマイズできる仕様になっているのが特徴だ。

透明ポケットが付いていたり、チャームを付け替えられたりと、缶バッジや〝推し〟の写真を入れてアレンジできる。シンプルであることが前提になったからこそ、自分らしさを後から重ねていくスタイルへと変化しているのだ。

「確かに多様性は広がっていると思います。その一方で、制約が増えたことも、レトロブームが一気に盛り上がった理由のひとつかもしれません。

学校で柄物が制限されるなどの流れがあると、今度はその反動で、いわゆる〝女児カルチャー〟のような世界観へと気持ちが向かう。そういう動きはあると思います。

実際、かつて主流だった『ぷくぷくあわわちゃん』や『なっとうちゃん』のようなキラキラしたキャラクターデザインは、しばらくのあいだ本当に見かけなくなっていました」

これからも地域に愛される店を目指して

取材中も、ひまわり堂 文具店には客足が絶えることがなかった。入れ替わり立ち替わり人が訪れ、なかには小学生の頃から通い続けているという常連の姿も見られた。

シールや平成女児の文具を求めて足を運ぶ人が多い一方で、昔から顔なじみの内田さんとの会話を楽しみに来店する人も少なくない。この店では、買い物の時間そのものが人と人とをつなぐ〝大切なひととき〟になっている。

近年はシール交換の盛り上がりもあり、Xで入荷情報を告知すると、早い時には2時間ほどで完売してしまうこともあるという。倉庫に残っていた平成女児の文具も、いまではほとんどが売り切れ、復刻アイテムが中心となっている。まさにブームの渦中にあるが、内田さんはそれを一過性の現象としてではなく、前向きに受け止め、できる形で〝平成女児コーナー〟を続けていきたいと話している。

「商品は常に入れ替わりますし、追いかけ続けなければなりません。ペンひとつ取っても次々と新商品が出ますから、それにも対応していく必要があります。また、いろいろな世代のお客さんのニーズにも応えていかなければいけません。

そのなかで、うちの規模でできる範囲のことを丁寧にやっていきたいと思っています。何より、やっているこちらも、どこか癒やされる部分がありますし。

流行や見た目が〝かわいい〟というだけでも、もちろんいいのですが、少しタイムスリップするような感覚を味わえる場所があることで、いろいろな人が足を運んでくれる。それはとても素敵なことだと思います。

デジタル化が進みすぎた今の時代だからこそ、昔を懐かしむ体験が〝人間味〟を取り戻してくれているのかもしれませんね。景色に少し温度が生まれるというか、みんなでシールを探したり交換したりする時間が、〝心の健康〟につながっているようにも感じます」

流行は移り変わっても、ここに流れる時間は変わらない。


平成女児を思わせるカラフルでキラキラした文具も、いまどきのシンプルなアイテムも同じ棚に並び、世代ごとのときめきを受け止めている。その景色こそが、『ひまわり堂 文具店』らしさだ。
懐かしさと新しさが交わるこの場所は、昔からの積み重ねが今も人々に愛される理由になっている。

取材・文/Tajimax

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ルーズソックス、ガラケー、プリクラ、フィルムカメラ。 度々、「懐かしい」と話題にあがる平成カルチャーが、最近では 〝エモい〟という感情価値をまとってきている。 …

東京都出身。2018年からSNSを中心に90年代〜00年代の平成ガールズカルチャーをメインに紹介している。以降、『オリコンニュース』『現代ビジネス』『WWD.JAPAN』『クイック・ジャパン』『Fashion Tech News』『東洋経済オンライン』などで平成カルチャー関連のインタビューや執筆・寄稿に携わる。古雑誌をメインに平成ガールズカルチャー関連のアイテムを膨大に所有。

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