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TBWA HAKUHODOがAIデバイス「RADIO TIME MACHINE」を開発、過去のニュースとヒット曲を紹介する音声コンテンツを自動生成

2026.03.09

TBWA HAKUHODOは、過去の西暦にダイヤルを合わせると、その西暦のニュースとヒット曲を紹介するラジオ番組のような音声コンテンツをAIが自動生成して、音声出力する新たなAIデバイス「RADIO TIME MACHINE」を開発。2026年3月5日に公開した。

また企業とRADIO TIME MACHINEを活用する第1弾の取り組みとして、医療・介護・保育サービスなどを全国で提供するニチイ学館とともに、高齢者向け介護施設でのRADIO TIME MACHINE導入検証プロジェクトを開始する。

「RADIO TIME MACHINE」開発の背景

生成AIは近年爆発的に普及し、生活者が日常的に利用するツールになった。そして2026年はAIそのものの進化に加え、AIを搭載したデバイスの実用化や社会実装が進む年として注目されている。

こうした潮流の中、TBWA HAKUHODOでは、生成AIを単なる業務効率化などの手段だけではなく、人と人との関係性をより豊かにする「ヒューマンイノベーション」に活用できないかと考え、少子高齢化が進む日本社会での高齢者支援をテーマに新しいデバイスの企画・開発に至ったという。

■認知症予防などに繋げる非薬物療法「回想法」に着目

開発において着目したのが、過去の写真や音楽などを活用し、当時の思い出を振り返り発話することで、認知症予防などに繋げる非薬物療法「回想法」だ。

「回想法」のように、懐かしい過去の出来事や記憶を振り返り発話する行為を、生成AIによって支援できないかと考え、文章生成AIや音声生成AIを組み合わせた独自のシステムを開発。これにより、過去の情報を盛り込んだラジオ番組風の音声コンテンツを楽しめる新しいAIデバイス「RADIO TIME MACHINE」が完成した。

同社では、「このデバイスを利用することで、高齢者は懐かしい記憶を振り返るだけでなく、高齢者同士が互いに思い出を共有してつながりを深めることや、高齢者と若手介護スタッフなど異世代間の理解も深められると考えています」とコメントしている。

■機能概要と音声コンテンツ例

筐体のデザインは、80歳から90歳の高齢者が若い頃に親しんでいた、1950年代から60年代のラジオ機器をモチーフとして採用。液晶画面にはラジオ機器のような目盛や指針が映し出されるが、そこに表示される数字は周波数ではなく西暦になっている。

ダイヤルを回すと1950年から2025年まで1年刻みに指針を操作でき、聞きたい西暦に指針を合わせると、その西暦の操作している日と同じ日付のラジオ番組風の音声コンテンツが再生される。

音声コンテンツでは、その西暦の今日のニュースをラジオパーソナリティが紹介。さらにニュースの合間には当時のヒット曲が実際に流れ、当時の空気感を再現したラジオ番組のような体験を楽しめる。

<音声コンテンツは毎日自動的に更新>
音声コンテンツはシステムによって毎日自動的に更新され、その日ごとに新しいコンテンツを楽しむことができる。また、音声コンテンツの再生時間は、数分のループから数時間まで使用目的に合わせてAIで自在に情報量をコントロールできるよう設計されており、現在は約20分間でコンテンツがループするように設定されている。

例えば使用者が3月5日にRADIO TIME MACHINE を操作して1950年を選択した場合、以下のような音声コンテンツが再生される。

◎RADIO TIME MACHINE 音声コンテンツ例
皆様、いかがお過ごしでしょうか。日ごとに寒さも和らぎ、春の足音が少しずつ近づいてくる今日この頃、このラジオタイムマシーンで穏やかなひとときをお過ごしいただければ幸いです。本日も、日本の活気ある出来事を皆様にお届けいたします。 まずは、鉄道のニュースからでございます。先日、国鉄の新しい電車が完成したのをご存知でしょうか。東海道線で活躍する新型車両、八十系電車、通称「湘南電車」がその姿を現しました。二つ扉のクロスシートでゆったりと座れ、前面は二枚窓という、実に洗練された造りとなっております。わたくしも、この新しい電車で、いつか海を眺めながら旅をしてみたいものだと思っております。車窓を流れる景色を肴に、駅弁を広げる日も近いかもしれませんね。それでは、この旅路に思いを馳せる時に聴きたい一曲です。高峰秀子で「銀座カンカン娘」です。

■RADIO TIME MACHINE デバイスデモムービーはこちらから

「RADIO TIME MACHINE」のメカニズムについて

音声コンテンツで流れる過去の出来事は、独自に作成したニューストピックリストに基づいている。ニューストピックリストを作成する上では、Wikipediaに掲載されている過去の出来事を参照しており、各年のニューストピックリストをもとに生成AIが当時のラジオ番組を模したニュース原稿を自動生成する。

その原稿を、AIボイスが当時のラジオ番組風に読み上げることで、まるで過去のラジオパーソナリティがその日の出来事を紹介しているかのような音声コンテンツが生成される。

またヒット曲については、当時の流行などを反映した独自のヒット曲リストを作成。デジタル配信用の音源データをニュースの合間に再生する。これにより、ラジオ番組のような構成の音声コンテンツが完成する。

※Wikipediaの原文そのものをラジオ原稿に引用することは行わず、Wikipediaに掲載されている過去の出来事の事実参照のみを行なった上で、生成AIがラジオ原稿を作成しています。
※使用している楽曲の権利については、現時点では直近で行う実証実験や研究のための限定的な利用目的として、版権元より使用許諾を得ています。実用化に向けては、音楽ストリーミングサービスを提供している企業と連携を調整しています。

■途切れることのない音声コンテンツを毎日自動的に生成

AIボイスは、使用許諾を得た開発関係者30名以上の声を収録して、それを基に生成された。しかも単にAIボイスで原稿を読み上げるのではなく、各年代のラジオ番組に見られる話し方や抑揚、語りのテンポなどを参考にして規則性を構築。時代感を反映した音声として都度生成している。

これにより、まるで当時のラジオ番組を思わせる懐かしく、自然な語り口を再現しているのだ。

このような仕組みを組み合わせることで、途切れることのなく音声コンテンツを自動的に生成と再生を続けられる点がRADIO TIME MACHINEの大きな特徴と言える。

高齢者は複雑な操作を行なわなくても、まるでラジオ番組のような音声コンテンツを継続して楽しむことができる。

ニチイ学館と介護施設への導入を検証するプロジェクトをスタート

RADIO TIME MACHINEを活用する取り組みの第1弾として、2026年3月5日よりニチイ学館の介護施設への導入を検証するプロジェクトをスタートさせた。

ニチイ学館では、利用者のウェルビーイング向上や、利用者と介護スタッフのコミュニケーション課題を解決できる新しいサービスやパートナーを検討しており、今回のプロジェクト発足に至った。

■プロジェクトの目的<1> 高齢者のウェルビーイング向上

同社では、RADIO TIME MACHINEで過去のニュースやヒット曲に触れることで、利用者は自分自身の思い出が呼び起こされ、その結果、心理的な安定やさらなる安心感につながり、日々の生活により一層の彩りをもたらせると想定。

また、個人で楽しむことに加え、利用者同士の会話や交流が生まれることで、ウェルビーイングの向上に寄与することも期待される。

■プロジェクトの目的<2> 利用者と介護スタッフが抱えるコミュニケーション課題を解決

ニチイ学館が介護スタッフ向けに行なったアンケート調査によると、業務における負担や課題として「利用者の見守りやコミュニケーションの難しさ」などが挙げられた。

介護スタッフは「もっと利用者とコミュニケーションを取りたい」と望んでいるものの、世代の離れたスタッフにとっては会話のきっかけをつかむことが難しく、共通の話題を見つけづらいといった課題を抱えているケースも見られた。

そこでRADIO TIME MACHINEを使用することで、介護スタッフと利用者との会話のきっかけが生まれ、相互理解がさらに深まり、より良い関係性の構築につながると考えられる。

1月下旬から2月下旬に実施した事前実証の結果

プロジェクトの開始に先立ち、1月下旬から2月下旬までの期間、ニチイ学館の施設において複数の利用者に「RADIO TIME MACHINE」を体験してもらう事前実証が行なわれた。

「RADIO TIME MACHINE」の使用時と非使用時における利用者の様子を、表情解析・骨格推定を用いた活動量解析・発話速度の観点で比較したところ、3つの結果が得られた。

<表情解析>
表情解析を行ったところ、過去を振り返り当時の思い出に浸ることで、笑顔の値(口角の角度や頬の挙上を検出)が平均として8.7%上昇するという結果が得られた。中には、ラジオを聴くことで、23.8%値が上昇した利用者もいるなど、笑顔が増える結果となった。

<身体活動量解析>
骨格推定を用いた身体活動量解析を行なったところ、身振りや手振りが10%増加するという結果が得られた。相手に内容を説明しようとする動機が高まったことが要因と考えられる。

<発話速度>
発話速度の分析を行なったところ、1分あたりの発話量が10.8語増加するという結果が得られた。ラジオを聴くことで様々な記憶が呼び起こされ、それを相手に伝える意欲が高まったのではないかと推察できる。

■プロジェクトの様子を収めたドキュメンタリームービーはこちらから

<ロングバージョン(8分)>

<ショートバージョン(90秒)>

今春から北里大学とTBWA HAKUHODOによる共同研究を開始

今春からTBWA HAKUHODOは、北里大学医療衛生学部の福田倫也教授らと、ニチイ学館の施設においてRADIO TIME MACHINEによって高齢者にもたらされる作用について共同研究を行うことが決定した。

認知症の周辺症状である「行動・心理症状」の具体例としては、落ち着かない、怒りっぽい、意欲が低い等の様子などが挙げられる。今回の共同研究では、RADIO TIME MACHINEが認知症の行動・心理症状を抑制し、認知症の症状がある高齢者がより穏やかに過ごせるようになる作用を、評価尺度を使用した数値化や、行動分析、表情分析などの手法で明らかにしていく。

また、認知症の症状がない高齢者に対しても同様の手法を用い、気持ちの安定さや前向きさなどの変化を確かめていく予定だ。

このような研究を通じて、RADIO TIME MACHINEが次世代の高齢者ケアにおける新たなツールとなり得ることの提示を目指す。

■北里大学 医療衛生学部 福田倫也教授 コメント

世界に先駆けて超高齢社会(65歳以上人口が、全人口に対して21%を超える状態)を迎えた日本は、その後も高齢化率が上昇し、2025年は29.4%と言われています。

また、高齢になるに伴って、認知症者も増加し、65歳以上の8人に1人、85歳以上の2〜3人に1人が認知症に罹患していると考えられ、要介護の主な原因の第1位は認知症と報告されています。加えて近年、認知症の前段階と言われる軽度認知障害(MCI)も注目されています。

そのような状況下で、対話等を通した高齢者への支援は喫緊の課題です。具体的には、高齢者の多くが利用している介護施設において、高齢者−介護職員間、高齢者同士の対話を促す日常的な仕組みが必要です。さらに、介護施設での人材不足を補う、技術による仕組みも求められます。

過去の情報に触れることにより記憶が呼び覚まされる「RADIO TIME MACHINE」に、高齢者の生活がより豊かになる可能性を感じています。また、介護施設のみならず、一人暮らしの高齢者の生活の質向上への効果も期待しています。

■RADIO TIME MACHINE 事業責任者 コメント

<TBWA HAKUHODO Innovation Hub 鈴木 賢史郎氏>

RADIO TIME MACHINEの構想は、「高齢化問題に対しアイデアで解決できることはないか?」と社内で議論を行った際に生まれました。

その後、モックアップをいくつも制作し、2年半の歳月をかけてハードデザインやプログラムを何度も更新していきました。今年から、介護施設で高齢のご利用者に、RADIO TIME MACHINEを体験して頂いています。

70年前のニュースをキッカケに、当時住んでいた家の近所の様子などを事細かにお話しする方もいらっしゃいました。子どもの頃のニュースや音楽に触れていく中で、忘れていたご両親のお名前を突然思い出す方もいらっしゃいました。

私は観察者として間近に同席しておりましたが、ご利用者の皆さんの喜びに満ちあふれた笑顔が、とても印象的でした。

近い将来、RADIO TIME MACHINEが全国の介護施設に導入されることで、同世代のご利用者同士が昔を振り返り、刺激をし合いながら、毎日をさらに楽しんでくれることを願っております。

関連情報
https://radio-time-machine.com
https://www.tbwahakuhodo.co.jp

構成/清水眞希

@DIMEはサイトローンチ時より編集業務に携わる。現在は雑貨や家電、オーディオなどの新製品に加え、各種の社会調査・統計、話題の新スポットからイベント情報などを担当。信条は正確さとわかりやすさ。最近の趣味は日付が変わる時刻のウオーキング。

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