インバウンド効果やユネスコ無形文化遺産に「伝統的酒造り」が登録されるなどで世界的に日本のお酒が注目を集めている。全国の約1600の酒類メーカー(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)が加盟する日本酒業界最大の団体「日本酒造組合中央会」は、2025年度(1月~12月)の日本酒輸出総額が昨対比:約106%の約459億円、数量は昨対比:約108%の約3.35万キロリットルだったことを発表した。米国における追加関税措置などの影響を受ける中での推移だったが、輸出金額と数量ともに前年を上回った。
・輸出実績推移
輸出金額1位は中国、輸出数量1位はアメリカ
・国別輸出金額・数量
・日本酒輸出分布図
国別の輸出金額は、中国が第1位で前年比:約114%の約133億円だった。輸出数量も約6660キロリットル(前年比:約125%、第2位)で、金額と数量ともに前年を上回る数字だった。輸出数量は、アメリカが昨年比:約97%の約7720キロリットルで1位だった。
輸出金額は約111億円(前年比約97%、第2位)で、数量と金額が前年をわずかに下回った。近年、輸出が好調な韓国は、輸出金額が約44億円(前年比:約117%、第4位)、輸出数量が約5483キロリットル(前年比:約112%、第3位)で、金額と数量ともに過去最高を記録。
ほかではカナダとフランスが過去最高金額・数量となり、フランスではファインダイニングと呼ばれる非和食の高級レストランにおける日本酒の提供機会も拡大しているという。日本酒の輸出先国数は、過去最多となる81か国に拡大しており、日本酒の海外展開は着実に広がっているようだ。
プレミアムな日本酒が各国の幅広い層に浸透
・輸出金額国別推移
・輸出量国別推移
1リットル当たりの日本酒の輸出単価は、過去最高額を記録した2022年以降、ほぼ横ばいで推移しており、香港、シンガポール、マカオでは引き続き2000円/リットルを超える水準になっている。10年前の2015年の平均輸出単価は771円/リットルだったが、2025年には1368円/リットルになって約1.8倍に上昇。
比較的高価格帯の日本酒が、世界市場を牽引する傾向は継続しているようだ。中国は、日本酒が市場に浸透して多様な種類が取り扱われるようになったことから、1リットル当たり1998円で前年からはわずかに低下した。
「日本酒造組合中央会」の取り組みは?
2025年は、訪日外国人が年間約4200万人を超えて過去最高を記録するとともに、インバウンド消費額も約9.5兆円と過去最高だったことが日本政府観光局から発表されている。
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから1年が経過して、日本酒文化への国際的な関心が高まる中で、「日本酒造組合中央会」は、海外への輸出だけでなく、国内における訪日外国人の消費や購入機会の拡大にも取り組んでいるという。
訪日外国人への対応では、主要国際空港(成田、羽田、中部、関西、新千歳、福岡)で試飲・販売を蔵元が行うことで売上好調な「國酒キャンペーン」を拡充して、ほかにも国内の料飲店や酒販店での日本酒消費・購入に繋がるツールを作成してPRを行っており、蔵元は酒蔵とその地域を一体として観光資源として体験してもらう取り組みも進めている。
さらに世界のソムリエに日本酒の魅力をより深く理解してもらうことを目的に、国際ソムリエ協会(ASI)やフランスソムリエ協会(UDSF)とパートナーシップを締結。ソムリエコンクールや若手ソムリエ向け教育プログラムへの参画、レストランにおける日本酒サービスマニュアルの作製、各国トップソムリエの日本招聘などガストロノミー分野で高い影響力を持つソムリエ層にも啓発活動を行っていくという。
中長期的な今後の日本酒輸出展望は?
現在、日本酒輸出金額の約64%は中国、アメリカ、香港の3か国で占められているが、近年は韓国が香港に迫り、過去最高水準になるなど市場構成が変化している。輸出先国・地域の多角化を進めることで、安定的かつ持続的な輸出拡大を図っていくことが重要といえそうだ。
ワイン文化が浸透している欧州や米国では、既に効果が現れ始めているソムリエに対して料理とのペアリングにおける日本酒の優位性やユネスコ無形文化遺産に登録された文化的価値、レストランでの適切なサービス方法などの提案を行っていき、市場への浸透を図っていくという。インバウンドの多い中国語圏向けでは、SNS活用による情報発信の充実で、訪日時の消費や購入を促してファンになってもらうことで輸出への効果も期待したいところだ。
マレーシア、タイ、ベトナムなどの東南アジア諸国は、今後も経済成長や人口増加が見込まれるので、各国ごとに異なる法規制や商習慣の調査を踏まえて、その国に応じた効果的な施策を展開して日本酒市場の開拓と定着を図っていくという。
メキシコ、ブラジルなどの中南米地域でも各国ソムリエ協会との連携により、現地でスペイン語やポルトガル語での教育やペアリング提案ができる人材の育成をして、日本酒のPRや試飲会の開催を通じて市場浸透を進めていく。お酒の日本文化としての側面をアピールしていくことでブランド力が挙がれば、世界の市場でも戦えるはずだ。
構成/KUMU







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