マッチングアプリは相性の良い男女が出会うために便利ですが、中には既婚者であることを隠して利用する人もいるようです。マッチングアプリを通じて交際した相手が既婚者だった場合、相手に対して慰謝料を請求できるのでしょうか。
それとも、逆に相手の配偶者から慰謝料を請求されてしまうのでしょうか?
1. 既婚を隠されていた場合に問題となる「貞操権侵害」
人は皆、誰と性的関係を持つかを自分の意思で決める権利を有しています。これは「貞操権」あるいは「性的自己決定権」などと呼ばれるものです。
相手が既婚者であることを意図的に隠しており、自分は相手が未婚であると信じた状態で性的関係を結んだ場合は、貞操権侵害が認められることがあります。
「相手が既婚なら性交渉はしない」という意思決定の機会を不当に奪われているためです。
貞操権侵害を受けた場合は、相手に対して慰謝料を請求できます。
たとえば東京地裁令和7年12月8日判決では、既婚者であることを意図的に隠して、マッチングアプリで出会った女性と性交渉を繰り返した男性に対し、約151万円の損害賠償が命じられました。
参考:マッチングアプリで独身装い交際は「貞操権」侵害、既婚男性に151万円の賠償命令…東京地裁|読売新聞オンライン
2. 既婚者であることを知らなくても、相手の夫や妻から慰謝料を請求される?
相手が既婚者であることを知らずに交際していた場合、客観的に見ると「不倫」に当たります。相手の夫や妻がその事実を知ったら、自分に対して慰謝料を請求してくるかもしれません。
2-1. 既婚者であることを知る機会があったかどうかがポイント
既婚者である相手との交際が「不法行為」に当たる場合は、相手の夫や妻に対して慰謝料を支払わなければなりません。
相手が離婚しない場合は50万円~200万円程度、離婚する場合は100万円~300万円程度を支払うのが一般的です。
ただし、不法行為は故意または過失がなければ成立しません。
つまり、相手が既婚者であることを知っていたか、または知る機会があったのに見逃したのでなければ、相手の夫や妻に対して慰謝料を支払う必要はありません。
特に相手が既婚者であることを意図的に隠していた場合は、既婚であると知る機会があったか否か(=過失の有無)が重要となります。
もし訴訟(裁判)に発展すれば、裁判所は相手とやり取りしたメッセージの内容や交際期間などの事情から、過失の有無を判断します。
2-2. 慰謝料を支払ったとしても、交際相手に対して求償できる
相手の夫や妻に対して慰謝料を支払ったとしても、不倫の責任の大半は、既婚者であることを隠していた相手にあると考えられます。
この場合は、支払った慰謝料のうち、相手の責任の割合に応じた額を支払うよう請求できます。
たとえば慰謝料100万円を支払った場合には、相手の責任が9割であれば90万円、8割であれば80万円の支払いを請求可能です。
相手が離婚しない場合は、「自分」「相手」「相手の夫または妻」の3者間で話し合って解決を目指すのが望ましいでしょう。
たとえば慰謝料の適正額が100万円で、既婚であることを隠していた相手の責任が9割であれば、最初から10万円だけを支払って済ませるといった解決が考えられます。相手に対する求償も含めて、1回で解決できる点が大きなメリットです。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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