2005年、裏社会を軸に〝男の生き様〟を描いた稀有なゲームが発売された。「本当にいいの?」と戸惑いながら、多くの人が手に取ったあの時から20年。アンタッチャブルな世界をエンタメに変え続けてきたクリエイターや関係者などに話を聞いた。そこで見えたのは、ファンに仁義を切ったを真摯なモノづくりの姿勢だった。
『龍が如く』人気を確固たるものに築き上げたひとつの要因が初代主人公・桐生一馬の存在に他ならない。そんな桐生に最も近い人物といえば、声優・黒田さんだ。20年間、演じつづけることで見えた桐生一馬という男の魅力を紐解く。
なお、現在発売中のDIME4月号では人気ゲームシリーズ「龍が如く」を大特集している。こちらも必見だ!
ひとつだけ桐生と私、違うところがあります

声優/桐生一馬役
黒田崇矢さん
俳優として大河ドラマなどで活躍するも体を壊し声優の世界へ。『呪術廻戦』『きかんしゃトーマス』など数多くの作品に出演している。
黒田さんが好きな桐生の名言
長い事暗い道を歩いてると、
「この先もずっと暗いもんだ」と思っちまう。
前に進む事が嫌になる。
自分の道がこの先どうなってるか
分かってる奴なんてこの世に1人もいねぇ。
俺らにできるのは、立ち止まって泣くか、
1歩でも前に進むかの2つだけだ。

桐生一馬
『龍が如く』シリーズの初代主人公。元東城会四代目会長。最新作『龍が如く 極3』では、沖縄の児童養護施設のおじさんとして子供たちと生活。しかし、土地を巡る事件に巻き込まれていく。
桐生一馬は自分そのもの 役作りに悩んだことがない
『龍が如く』ナンバリングタイトル『0』~『6』までのメイン主人公を務め、春日一番に主役交代した『7』以降も作中に登場し、圧倒的な存在感を放ち続ける桐生一馬。最新作『龍が如く 極3』では、カタギという立場で穏やかな日々を送りながらも事件に巻き込まれ渦中の人となっていく。
極道の世界に身を置いていた人間ではあるものの正義感が強く、筋の通らないことが大嫌い。己の信じる道をブレずに真っすぐ貫く男の中の男。そんな桐生を20年間演じ続けたのが俳優・声優の黒田崇矢さんだ。
「私は元々キックボクシングや空手などの格闘家を目指していたのですが、体を壊してしまい、格闘技を休んでいた時期があったんです。そんな時に友人から文学座の受験に付き合ってほしいと頼まれ、想像以上の高倍率の中で合格することができました。その後はリハビリを続けながら舞台や時代劇などに出演してきましたが、体が完全には回復せず、そうした状況の中で声のお仕事のお話しをいただきました」
そうして役者の世界から声優界に入った直後、あるパイロット版ゲームの収録に参加することになる。それが後の『龍が如く』だった。そして、20年にもおよぶ付き合いのはじまりに……。
「当時はまだ社内プレゼン用の試作版みたいなものだったので『龍が如く』というタイトルもついていませんでしたが、あるひとりのヤクザを演じました。それから1年後ぐらいにゲームの主役の話が来て、それがその時に演じた桐生一馬だったんです」
まるで声の世界に呼ばれるように、桐生一馬と運命の出会いを果たす黒田さん。台本を読んで感じた桐生の人物像は、自分そのものだと思ったそうだ。
「ものの考え方や生き方、人生哲学みたいなものが私と似ているんですよね。こういう場面ではきっと私も同じ選択をするだろうなと感じることも多く、自分が正しいと信じた方向へ迷わず進むところにも共感しました。なので役作りに悩むことはなかったですね」
生き様に共感したとはいえ、俳優から声優への転身、声の出し方に苦労はなかったのだろうか。
「俳優の頃からやっていることはあまり変わっていなく、人格や性格、しいて言えば人物像を作ることだけなんです。声優だからといって声質を変えようという意識はなくて、あらゆる場面であらゆる人間に出会った時に、その人物が自然に反応していく、そんな感覚で演じています」
児童養護施設・アサガオで見せる桐生の一面

シリアスな場面からバトル、子供との会話など、シチュエーションは様々。黒田さんは、声質ではなく感情を変えて収録に挑んでいる。
20年の時を経て感じた柏木と桐生の関係
本能的な反応を声に変換する……。こうして20年の長きにわたり愛される主人公・桐生一馬が誕生した。最新作『龍が如く 極3』では、過去作にはなかった新たなシーンを追加するとともに、声の再収録にも挑んだという。
「『龍が如く』は、毎回その1作に全ての力を注いで作っているので、次の展開を計算しながら作るなんて余力を残さない。そうして20年が経過してどんどん物語が進み全体像が見えるようになると、当時は描き切れなかった人間関係などが見えてくるんですよ。例えば、桐生や柏木の関係なんかもそのひとつです。そういった場面を改めて表現するために何箇所か録り直しを行ないました。あと『極』シリーズに関してはきれいになったグラフィックを見るのを私も毎回楽しみにしています。ぜひ多くの人に楽しんでもらえたらうれしいですね」
『3』に比べ、より精緻に進化した『極3』のグラフィック

PS3版『龍が如く3』のリリースから17年が経過。人間の肌質や衣装の繊維まで、グラフィックが格段に進化。
桐生一馬と黒田崇矢のたったひとつの違い
人生観も声も違和感のない融合で命が吹き込まれた桐生一馬。だからこそ醸し出せるゲームキャラ以上の存在感に、多くのファンが魅了されるのだろう。
では最後に、桐生一馬と黒田崇矢の決定的な違いとはどんなところか、尋ねてみた。
「私は常に周りを楽しませようと笑いを取りにいくのですが、桐生はそれをしないんですよね。桐生は真面目で不器用ですが、天然なところで自然と周りを笑わせてしまう。あと桐生は顔がかっこよすぎますね(笑)」
謎だった柏木 修との関係性もより緻密に


柏木 修
20年経過することで見えた桐生の元兄貴分・柏木 修との関係性。繊細な表現を録り直して追加することで、物語に深みを持たせている。
取材・文/小櫃 謙 撮影/干川 修 編集/寺田剛治
©︎SEGA







DIME MAGAZINE












