例外的に大きい人間の男性のペニス

進化の過程で体毛が薄くなるなど、我々人間はある種の〝野性味〟をいくつも失ってきたのだが、意外なことに人間の男性のペニスはほかの哺乳類と比べると例外的に大きい。
平均的な人間の男性器は勃起時に13センチ以上あるが、チンパンジーやボノボのペニスは8センチで、オランウータンは8.5センチ、ゴリラにいたってはわずか3センチしかない。
いったいなぜなのか。生物学者たちは人間の男性が持つこの特異な身体的特徴の理由について数十年にわたって議論を重ねている。
有力な説としては人間は二足歩行になったことで、生殖行為において受精に適した場所、つまり膣からさらに奥の子宮頸部に近い場所に精液を届けることがより困難になり、その結果、ペニスが長く大きくなったという。
ペニスが例外的に大きい一方で、人間の男性の精巣はかなり小さく、たとえばチンパンジーの精巣は脳の3分の1以上の重さがあるが、人間の精巣は3%以下の重さしかない。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの古気候学教授、マーク・マスリン氏によればオスのチンパンジーはどんなメスともタイミングが合えばすぐに性交を行い、それを可能にする量の精子を蓄えているが、人間の男性は1日に2回以上射精すると精子量は80%以上減少するという。つまり人間にとって1回の性交はより重要な意味を持っていることになる。
ということは人間の男性のペニスは数少ない性交で受精の確率を高めるために長く進化したともいえそうだ。
ペニスの大きさは評価対象なのか
クジャクのオスの大きく華美な羽など、多くの動物種において目立つ身体的特徴は優れた身体能力や遺伝的優秀性のシグナルとして機能しているが、人間の男性のペニスもそうした側面があるのだろうか。
豪・西オーストラリア大学(UWA)の研究チームが今年1月に「PLOS Biology」で発表した研究では、人間のペニスがステータスの象徴として、あるいは魅力を象徴するシンボルとして機能しているかどうかを検証している。研究チームはペニスの大きさをほかの身体的特徴から切り離し、それが男性の認識に独立して影響を与えるかどうかを探った。
約200名の女性と約600名の男性の計800名以上の成人が参加した実験では、参加者は異なる身長、体型、弛緩時のペニスサイズが組み合わされたさまざまな体型の人物像の計343体を評価したのだが、研究チームは評価する人物像の提示方法が結果に影響を与えるかどうかを検証するため、実験を2つの異なる視聴形式に分けた。
1つ目の形式では、実物大の人物像が壁に投影され、人物像の身長と物理的な存在感がリアルに表現された。2つ目の形式では、参加者はオンラインアンケートを通じて、パソコン画面またはタブレット上で人物像のビデオ映像を見て評価を行った。
女性参加者は性的魅力に基づいて人物像を評価するよう求められ点数をつけた。
男性参加者は2つの異なる評価課題のいずれかに割り当てられ、半数は人物像の性的競争意識に基づく評価が求められ、人物像が自分のパートナーに話しかけてきたら、どれほど嫉妬を感じるかを推測して点数をつけた。
もう1つのグループは人物像が自分と喧嘩をすることになった場合、どの程度脅威を感じるのかその戦闘能力を評価した。
評価では実物大とモニター上の両方で一貫したパターンが明らかになった。つまり参加者が実物大の投影映像を対面で視聴した場合でも、オンラインの端末の小さなスクリーンの中の人物像を見た場合でも、評価パターンは同様の傾向を示したのである。これらの身体的評価が個人や視聴環境の違いを超えて堅牢である可能性が示唆されることにもなっている。
女性はペニスが大きく理想体型の男性を好む

参加者の評価を分析した結果、女性参加者は背が高く、胴体が逆三角形で、ペニスが大きい男性をより魅力的だと評価した。しかしこれら3つの身体的特徴は単独で作用するのではなく、相互に影響し合っていることも判明した。
女性にとってペニスの大きさが魅力に及ぼすプラス効果は、もともと背の高い男性や逆三角形の体型の男性でより強く現れた。一方、背の低い男性や洋ナシ型の肥満体型の男性の場合、ペニスの大きさは魅力スコアにそれほど大きな影響を与えていなかった。これは女性がこれらの身体的特徴を個別に評価するのではなく、複合的なパッケージとして評価していることを示している。
また女性の評価では収穫逓減(diminishing returns)の傾向が見られた。魅力スコアは身長、体型、ペニスのサイズの好みと共に上昇したのだが、その効果には限度があり上限で頭打ちになり始めた。上限を超えてこれらの身体的特徴を誇張しても魅力スコアは高まらなかったのだ。
人物像の性的競争力を評価した男性参加者の評価は、女性の好みをほぼ反映したものだった。男性もまたペニスが大きく、身長が高く、肩幅が広い人物像ほど嫉妬を引き起こす可能性が高いと評価した。
しかし男性の評価は収穫逓減のパターンを示さず、人物像の魅力は身体的特徴の大きさに比例して増加し続けた。この結果は男性が女性が誇張された身体的特徴を好む傾向を過大評価している可能性があることを示唆している。
たとえば筋骨隆々の男性のボディビルダーを見て男性はその筋肉量に比例した評価をする傾向があるが、女性は男性の一定以上の筋肉量にはあまり興味を示さず、そもそも非現実的な体型のボディビルダーをあまり好まない傾向もありそうだ。
「過ぎたるはなお及ばざるが如し」のケースも
人物像の戦闘能力について男性参加者は、より大きなペニスを持つ人物をより脅威的で支配的であると評価した。もちろん身長と体型は高い戦闘能力の印象を最も強く予測する因子であったが、ペニスのサイズもまた明確かつ統計的に有意な影響を与えていた。
これは男性が潜在的な相手の強さや攻撃性を判断する際に、性器の大きさを視覚的な手がかりとして利用していることを示唆している。研究チームはテストステロンへの曝露が性器の発達と筋肉量の両方に影響を与えるため、より大きなペニスはホルモンの健全性と高い身体能力を暗示するシグナルとして認識される可能性を指摘している。
研究チームはストレスに対する生理学的反応にも着目している。人間の場合、弛緩状態のペニスは恐怖や不安を感じる状況下でアドレナリンが放出され縮むことがあるのだが、弛緩状態のペニスが大きいことは、人物が落ち着いていて自信に満ちており、ストレス反応を起こしていないというシグナルとして作用する可能性があり、実力を持つ人物の“余裕”を感じさせる働きもありそうだ。
研究チームはそれぞれの評価に対する反応時間も測定した。その結果、被験者はペニスが小さく、身長が低く、逆三角形ではない体型の人物を見た際に、より速く判断を下すことがわかった。これらの人物がすぐに無視されたことは、これらの特徴が脳によってきわめて速く処理、分類されていることを示唆している。つまりひと目見て脅威を感じない人物はすぐにスルーされていることになる。
総合的な結論として人間のペニスは生殖という主要な機能に加え、交尾相手を引き付ける性的装飾としての役割と、ライバルを威嚇する社会的シグナルとしての役割を担っていることが突き止められた。ある意味で身も蓋もないことだが、端的にペニスが大きいほど男性の魅力が増し、戦闘能力があると認識されているのである。
とはいえ女性の視点からはそこには限度があり「過ぎたるはなお及ばざるが如し」という論語の言葉の意味をよく理解することで救われる男性も少なくないのだろう。
※研究論文
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003595
文/仲田しんじ
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