つい最近、電気自動車の新型日産リーフを運転して、改めて「やっぱりこの装備は内燃機関車、電気自動車、ハイブリッド、PHEVを問わず、あると便利でスムーズに走れ、経済的でもあるな」と感じたのが、ステアリングの奥左右に備わるパドルシフト(電気自動車の場合、回生ブレーキコントロールパドル、回生レベルセレクターなどと呼ばれる)だ。
実は、筆者のクルマ選びにおける必須装備のひとつがそのパドルシフトで、なんと2002年から連続してパドルシフト付きのクルマに乗っているのである(すべてガソリン車だが)。
そもそもクルマのパドルシフトとは、フェラーリのF1マシンに使われ、その後市販車としては1997年にフェラーリのF355というクルマにF1マチックという名前で初採用されたと言われている。そのせいか、パドルシフトはスポーティな走りをするときだけに使われる、マニア向けの機能・・・と誤解している人も少なくないはずで、2ペダルのAT車を買って、わざわざパドルをカチカチ押してシフトする必要なんてあるのか・・・と考える人もいるはずである。たしかに。
パドルシフトは決してスポーティな運転のためだけにあるわけではない
そんなパドルシフトはステアリング奥の左右に付いている、船のパドル由来の装置。左側に「-」、右側に「+」のスイッチが配置されているのが一般的だ。ステアリングから手を離さずに、指先だけの操作でシフトアップ、シフトダウンができるようになる。今ではホンダ・プレリュードのようなスポーティカーにはもちろん、コンパクトカー、SUV、ミニバン、さらには軽自動車にまで幅広く採用されていることからも分るように、特殊なスポーツカー、スポーティカーだけの装備、機能ではないということだ。
すでに愛車のパドルシフトを使いこなしている・・・というならともかく、「愛車にそんなスイッチが付いていたかも知れないが、使ったことはない・・・」のであれば、ぜひ、さまざまなメリットがあるので、使いこなしてほしいものだ。
パドルシフトの使用はスムーズな運転とカーブや山道での安全な走りに直結
では、一般的な乗用車にも付いているパドルシフトを使いこなすことで、どんなメリットがあるのかを、まずはガソリン車のパドルシフトを例に説明したい。使う上での最大のメリットは、日常的な走行シーンの中でのスピードコントロールのしやすさにあると考える。
例えば、流れのいい一般道、高速道路を走っていて、前車がスピードを落としたとする。当然、こちらのクルマと前車の間隔が狭まり、こちらはブレーキを踏んで減速することになる(あるいはアクセルオフで減速)。が、同乗者がいる場合、下手にブレーキを踏むと強い減速Gがかかり、同乗者が不快になることもある。テイクアウトの飲み物を飲んでいたらこぼしてしまうかもしれないし、後席でメールやラインを打っていたら、入力ミスにつながるかもしれない。後席に、車内でどこかにつかまれない愛犬を乗せていたとすれば、後席から落ちてケガをしてしまいかねない(ドッグベッドやハーネスなどを用い、安全に乗せてあげるのが鉄則)から危ない。
パドルシフトはブレーキの負担とメンテナンス費用の低減にもつながる
また、山道を走っていれば、カーブ手前で減速するのが基本で、長い下り坂などではスピードコントロールが不可欠になる。しかし、エンジンブレーキだけでは減速に限界があり、そのためにフットブレーキばかりを使い続けていると、ブレーキディスクとブレーキパッドが接触し続け、高熱を発生。ブレーキを踏んでも止まらなくなるフェード現象を引き起こしてしまう可能性がある。
そうしたシーンで、フットブレーキを踏まずにスピードコントロール(減速)を行うのに、じつはパドルシフトは大いに役立つ。そう、前車との距離が縮まった時、カーブの手前、山道の下り坂といったシーンで、パドルシフトの「-」を手前に引くことでギヤダウンし、減速が下手にブレーキを踏むよりずっとスムーズに行え、乗員(愛犬)に不快感を与えにくく、また、ブレーキの負担も軽減できることになる。ベテランドライバーがするような、速度コントロールのための緩いブレーキング操作(急ブレーキではない)、減速が、パドルシフトによって可能になるということだ。
山道を活発に走るシーンでは、カーブの手前でパドルシフトの「-」を引くことでスムーズに減速でき、安全にカーブを曲がることができ、カーブを抜けたら「+」を引いてシフトアップしていく痛快なドライビングも可能になるのである。
スポーティな運転シーンではより活発な走りも可能になる
ホンダ・プレリュードのようなスポーティカーを山道で運転しているときのスムーズかつキビキビとしたドライビングで、ハイブリッドカーの減速セレクターが威力を発揮してくれるのはもちろんだ。
具体的には、Dレンジの状態からパドルを引くと減速セレクター表示灯が点灯。「-」パドルを引くと減速の強さが3段になり、「+」パドルを引くと減速の強さが0段に。停止間際まで減速したりアクセルペダルを踏み込むと、減速セレクターは自動で解除され、減速セレクター表示灯が消灯。0段から-パドルを引くと2段になる・・・というメカニズムである(プレリュードの例)。
しかし、2002年から連続してパドルシフト付きのクルマに乗っている筆者としては、パドルシフト付きのクルマに乗るメリットはそれだけではないと実感している。それは、内燃機関車のパドルシフトによる減速はエンジンブレーキによるもので、ブレーキ機能に頼らずに済む点だ。つまり、消耗パーツであるブレーキパッドが減りにくいメリットもあり、実際、2002年から2014年まで愛用していたミニバン(2代目オデッセイ・アブソルートV6)、2014年から2020年まで乗っていた、欧州車の特性としてブレーキパッドか減りやすいと言われるVWゴルフ7ヴァリアントとともに、長期間の所有にして、ブレーキパッドの交換はなし。ディーラーに車検などで持ち込んだときにも、ブレーキパッドの減りの少なさに驚かれたものだった。
見出し 電気自動車では航続距離を延ばせる効果もある
そして、つい最近試乗した電気自動車の日産リーフの回生ブレーキコントロールパドルだ。シフトポジションがDのとき、回生ブレーキコントロールパドルの操作で回生ブレーキの強さを変更することができ、回生ブレーキの強さは1(弱)~4(強)で変更可能。例えば、長い下り坂をドライブしているときは、一時的にエンジンブレーキと同様の効果を得るために、回生ブレーキの強さを強くすることができ、アドバンスドドライブアシストディスプレイに現在の回生ブレーキの強さが▼(図のC)表示されることになる。
そのメリットは電気自動車特有の部分もあり、回生ブレーキコントロールパドルの操作によって回生ブレーキをかけるとモーターが発電機として働いて電気を生成し、電気がバッテリーに蓄えられるのだ。よって、バッテリー残量の減りが少なくなり、結果として一回の充電で走行できる距離が延び、加えて回生ブレーキはモーターの抵抗を用いて減速するため、ブレーキのディスクローターとブレーキパッドの接触頻度が減少し(こちらはガソリン車と同様)、ブレーキ周りの部品の消耗を抑えることができ、メンテナンス費用を抑える効果もあるということだ。
もし、ガソリン車、ハイブリッド、PHEV、電気自動車を問わず、愛車に今まで使っていなかったパドルシフトが付いているなら、ぜひ、スムーズなスピードコントロールと緩い減速のために、メンテナンス費用逓減のために、電気自動車であれば航続距離を延ばすために、安全な場所で使い方を習得し、使いこなしてほしい。繰り返すけれど、パドルシフトはスポーティな運転のためだけにあるものでは決してない。パドルシフトを使いこなせるようになれば、同乗者から「減速がスムーズになって、運転がうまくなったね」と言われるかもしれないし、同乗した車内でどこかにつかまれない愛犬も大喜びするに違いないのである。
文/青山尚暉
写真/雪岡直樹 青山尚暉







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