会長に頼み込んで実現した大物俳優のキャスティング
『龍が如く』といえば、意表を突いた芸能人の起用も有名。誰がキャスティングされるのか、心待ちにするファンも少なくない。
「実写のようなドラマ作りを目指しているので、どちらかというと、アニメ調の声質を得意とする声優さんよりはキャラに臨場感を持たせられる俳優さんを多く起用しています。例えば、風間のおやっさんという桐生の親分が出てきた時に、どう考えても渡 哲也さんのイメージが湧いて。そんな時、たまたまセガサミーの周年式典のような場で、会長が登壇するのをオンラインの社内報で視聴したんです。すると、まさかの渡さんが挨拶で登場。大学の同級生とのことで。すぐに社長室に行って頼み込んで紹介してもらいました。キャスティングは、話題作りではなく、世界観を表現するためのものなんです。あの渡 哲也さんがゲームの声をやるなんて、普通、想像だにしないですよね」
まさに、それが『龍が如く』。毎作、ファンの想像を超える仕掛けが用意されているのだ。
「僕らは、作品を作る時に続編のことは考えていません。1作1作に全力を注いだ結果、積み重なった20年なんです。ユーザーが出してほしいと思うものは、ユーザーの想像の範囲内。つまり発想で負けているわけです。その上を行くところから持ってくることが売る側の責任。だから勿体ないからとっておこうというネタはないんです。中には、いろいろ騒がれることもあります。例えば『7』は、桐生一馬から春日一番への主役交代。しかもRPGへのジャンル変更。騒がれましたね。でも遊んだらしっかり『龍が如く』だし、面白いんです。最新作『極3』でいうと、『外伝Dark Ties』というもう1本のゲームを付けています。これも本来なら1本の作品として販売していい商品です。20周年という特別なタイミングだからファンへの感謝という意味でやりましたが、30周年とか来ない限りもうやらないと思います……。あとはグラフィックの進化もそうですし、キャスティングの変更、ストーリーの追加など盛りだくさんです。極めつきは、10年前には入っていない大オチを追加しました。これからの歴史が変わるぐらいのことですが、先のことは深くは考えていません」
出し惜しみしないで、出し尽くす。その結果、ユーザーの想像を超える作品が完成する。そのパワーの源はどこから来るのだろう。
「僕、仕事しなくていいんであれば、一切したくないんですよ。シナリオだって、最初、社内に書ける人間が誰もいないから仕方なく作ったんです。プロにお願いするための資料を作ろうとしたんですけど、やり方が分からず600ページぐらいの脚本に近いものが出来上がってしまった。仕事上必要なことなので、評価もあるからつづけている。昔、渡 哲也さんが『仕事が大嫌いなんだ』と言ってて。どうしてかっていうと、『やるとなったらとことんやらないと気が済まない。だから億劫で億劫で仕方がない』と。その感覚、そっくりなんです。やるってなったらやっちゃうんですよ。今は事業部長もやっていますから、全部、背負ってる感じです。全体的に俯瞰しています」
名優たちの起用がキャラクターに臨場感を与える
『龍が如く』には数多くの俳優が出演。実写ドラマのような名演で、プレーヤーの没入感を高める。
風間新太郎 × 渡 哲也


桐生一馬の育ての親を演じたのは渡哲也さん。当時のセガ・会長に紹介してもらい実現した。
浜崎 豪 × 香川照之


最新作『極3』に出演する香川照之さん。横浜中華街を支配する極道・浜崎豪役を演じている。
島袋力也 × 笠松 将


『極3』に出演する笠松将さん。沖縄と仁義を愛する熱い極道、琉道一家若頭・島袋力也役。
マーケティングもすべてゲームコンテンツ
事業部長という立場でありながら、今もストーリー原案を手掛けているという横山さん。事業の運営とシナリオ創作、異なる領域を行き来する思考スイッチの切り替えにコツはあるのか。
「意識したことがないです。もっというと、マーケティングもクリエイティブもセットなんですよ。僕、新作のネタを思いつく時って、プロモーションからキャスティング、販売時期、全てセットで考えているんで。僕、マーケティングもゲームのコンテンツの一部だと思っているんです。『龍が如く』を楽しむっていう意味での課金ポイントがゲームを購入する時に発生しているだけで、その作品にかかわる映像やイベント、SNS、記事など全て、ユーザーが楽しんでいる。つまりゲームコンテンツなんです」
俯瞰で描く全ての設計図はユーザーのため。その揺るぎない姿勢が『龍が如く』が放つ熱気の正体なのだろう。気になるのは次世代へのバトンパス。横山流の組織づくりについて聞いてみた。
「若いから良いとか、若手の力とか信じてなくて。重要なのは、単純に面白いアイデアを生み出せる力があるか。だから僕、ユーザーの想像力もそうですけど、スタッフの想像力とも日々戦いだと思っています。あえて負けてやろうとか、やらせてやろうとか、一切思わない。その分、優れたアイデアはすぐに採用します。ただ、まだ負けたっていう感覚を体感してないんですよね(笑)。もちろんダメ出しの時は、しっかり、理屈立てて言葉を尽くして説明しますよ。それが感覚を否定する、受け入れる、という作業だと思っているので、あまり意識的に若い子を育てるっていう感覚がないんです」
戦う姿勢はまさに『龍が如く』。となると「龍が如くスタジオ」にも、後に主役が狙える春日一番が出現か? ちなみに……。
「僕、女性キャラを作るのが苦手なんです。男がやることはイメージできるんですけど、女性は感情がわからない。なので、正直、途中から遥は、女性版桐生をイメージして書いています。桐生って、抑圧されているじゃないですか。夢を追いかけちゃいけない、こんなことやっちゃいけないと。遥には単にその真逆をやらせているんです。女性は本当わからない」
主人公を変更する大胆な一手を打つ

『7』から桐生一馬に代わり新主人公・春日一番が登場。バトルシステムもアクションからRPGに変更されファンの間に衝撃が走った。予想を超えるサプライズ、これぞ『龍が如く』だ。
ファン必見の完全オリジナルストーリー

最新作に同時収録された強敵・峯義孝を主人公にした『龍が如く3外伝 Dark Ties』。単体でも発売できるボリュームだが、20周年を記念しての大盤振る舞い。

峯 義孝
女性を表現するのは難しい……

桐生一馬と行動を共にする『龍が如く』のメインヒロイン。『1』では9歳だったが作品が出るごとに遥も成長し、大胆な行動を取ることも。まさか桐生一馬の写し鏡だったとは。

澤村 遥
20周年記念イベントを開催


リアルイベントもゲームコンテンツと捉える横山さんは、全ての内容を把握し、アイデアを盛り込む。渋谷で開催された『龍が如く 冠婚葬祭展』には、幅広い層のファンが来場した。
やるとなったらとことんやらないと気が済まない

取材・文/小櫃 謙 撮影/干川 修 編集/寺田剛治
©︎SEGA







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