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「安い地方便」の廃止、地方発着のエアラインが陥っている危機

2026.02.22

地方都市から別の地方都市へ行くには、どうしたらいいだろうか?

幸いにも、日本は世界有数の鉄道大国である。新幹線というものが存在し、それを使って日本各地へ足を運ぶことができる……と言いたいところだが、残念ながら新幹線が通ってない地域も少なくない。そこで生まれるのが、旅客機に対する需要だ。航空便であれば、海でも山でも乗り越えることができる。

が、ここにも大きな影が。非常に安価で知られた地方~地方間のとある航空便が、撤退を発表したのだ。地方発着の国内エアラインが、岐路に立たされている。

「茶どころ」の只中の空港が揺れた日

島田市と牧之原市は「茶どころ」である。戊辰戦争で新政府軍に敗れた旧幕府軍の士族が、荒れ野同然だった今の牧之原を開拓して茶畑を作った。NHKの朝ドラ『ばけばけ』でも「禄を失った旧士族の自活問題」が描写されていたが、牧之原の場合は江戸に住んでいた旗本が帰農して緑の茶畑をそこに生み出したのだ。

富士山静岡空港は、そんな茶畑地帯の只中にある。

1月20日、静岡空港を巡るこのような話が県内で大きな話題になった。以下、日本経済新聞の記事を引用する。

全日本空輸(ANA)は20日、静岡空港(静岡県牧之原市)を発着する沖縄線と札幌線を10月1日から運休すると発表した。人件費などコスト増で実質赤字が続き、再開の見通しはない。静岡空港の国内定期線はフジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)のみになり、県は東南アジアや東アジア方面の就航を急ぐ。

ANAは2009年の空港開港時から就航しており、現在は2路線がそれぞれ1日1往復している。新型コロナウイルス禍が終わり、足元で順調に搭乗者数を増やしていた。ただ静岡空港は単価の高いビジネス利用が少なく、ANAのほかの国内線と比べて搭乗率も低い。
(ANA、静岡空港発着の沖縄・札幌線運休 コスト増で10月から日本経済新聞)

静岡県は「新幹線『のぞみ』が停車しない県」として知られている。当の静岡県民はこれを「しぞーかは“通過県”だもんで」と自嘲していたりもするが、のぞみが停車しない以上は陸路で札幌に行くとなると、相当な長時間移動を強いられる羽目になる。が、飛行機であれば静岡から新千歳空港までは2時間以内で行くことができる。

しかも、安い。

たとえば、この記事を執筆しているのは2月13日だが、とりあえず4月1日出発の静岡~新千歳間の航空券をANAで手配すると仮定する。ANA公式サイトで調べてみると、最も安い航空券は(往復)スーパーバリュー45で、価格は1万6,390円。往復分を仮定しても、せいぜい3万3,000円程度である。

静岡県民が北海道へ旅行するとしたら、移動手段は静岡空港からの航空便一択になることは間違いない。

なお、同じ日の静岡~那覇間の便を検索してみると、最も安い航空券の価格は1万7,310円。こちらも安い! 私情を差し込んでしまうが、これだけお得感に満ちた便を撤退させるのはあまりにもったいないのでは……?

静岡空港は「地域活性化」の役に立っているのか?

もちろん、筆者の考えと平均的な静岡県民の考えは大きく異なることは承知している。

ANAの静岡~新千歳及び那覇便がなぜ撤退してしまうのか。それは「採算が取れない」からだ。日経新聞の記事にもある通り、ビジネス利用が少なく搭乗率も決して高くない。それは静岡から見たアウトバウンドに問題がある、ということだ。

無論、インバウンドも振るっているわけではないはずだ。静岡県内のもっとも有名な観光地といえば、多くの人は御殿場を連想するだろう。言い換えると、空港のある静岡中部は観光地としては影の薄い存在という意味である。

実はこのあたりは、静岡空港が建設中の頃から指摘されていた。「果たして静岡空港は集客可能の施設になり得るのか?」と。土地接収の問題では地主と大いに揉め、これは当時の静岡県知事を退任させる事態にまで発展した。

静岡空港は、本当に地域活性化の役に立っているのか? そのような議論は今でも存在する。

4月に静岡~ハノイ便が就航

が、ここで敢えて未来を楽観的に想像してみよう。

上に引用した日経新聞の記事には、このような記述もある。

静岡空港の運営会社は最終赤字が続いており、ANAや中国方面の運休も今後響く。台湾や香港線の復活のほか、タイなどほかの東南アジア方面への営業を強化する。
(同上)

つまり、静岡空港の現状を逆転する手段として「東南アジア方面のLCC路線を就航させる」という一手が浮上しているということだ。

なお、静岡空港では4月28日からベトジェットエアのハノイ便が新規就航する。これは火・木・日の週3便で、静岡からは10時30分発14時着。預入荷物込の片道の価格は、諸費用込みで概ね100米ドル程度(オフシーズンの価格)。こちらも「安価」と呼ぶに相応しい、なかなかどうして魅力的な航空券だ。

ANAの札幌・那覇便撤退がきっかけとなり、静岡県と静岡空港の運営会社はベトジェットエアのようなASEAN諸国のキャリア誘致に、より注力するようになるのではないか。

だとすると、此度の撤退劇は結果的には「悪いこと」ではないのかもしれない。

「エアラインを巻き込んだ経済効果」の必要性

ただし、海外LCCの誘致がこの記事の冒頭に述べた問題提起―—即ち、日本国内の地方~地方間のエアラインが危機に迫られているという状況を改善させることはない。海外LCCがもたらす効果は、あくまでも「空港の経営状況」に対してのみ及ぶものである。

残念ながら、この問題に対しての決定的な答えはまだ見出されていない模様だ。

去年開催された大阪万博は、「西日本のためのイベント」とも言われている。大阪万博がもたらした経済効果は、主に沖縄を除く西日本の府県や市区町村にもたらされた。逆に言えば、東日本や沖縄県に「万博効果」はあまり及ばなかったということだ。日本列島の東西をつなぐエアラインをも巻き込んだ経済効果を形成するに至らなかった、と書くのはいささか辛辣だろうか。

地方~地方間のエアラインを維持しようと本気で考えるのなら、それには「列島全体を巻き込んだ一大企画」が必要になってくるはずだ。札幌、東京都心、名古屋、大阪、福岡といった東西の大都市が目的を共有して行う「巨大イベント」の開催が、21世紀前半~中頃のどこかで求められるのではないだろうか。もちろん、そこまで至るには一筋縄ではいかないだろうが――。

【参考】
ANA、静岡空港発着の沖縄・札幌線運休 コスト増で10月から日本経済新聞
ベトジェットエア 静岡-ハノイ線の新規就航について 富士山静岡空港

文/澤田真一

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1984年生まれ。静岡市生まれ相模原市育ち。グラップリング歴20年超。世界のスタートアップ情報からガジェットレビュー、Apple製品、キャッシュレス決済、その他諸々のジャンルの記事を執筆。

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