寒い冬、朝起きると「凍っちゃいそう!」と思うほど寒いことってありますよね。大型哺乳類で、あらゆる先端技術を持っている人間ですらこんな思いをしているのに、小さな昆虫たちは寒すぎて凍ってしまわないのでしょうか?そこで今回は、彼らが凍らないために持っているワザ、凍っても大丈夫な昆虫たち、さらには現在にいたるまでの進化の歴史について解説いたします。
昆虫が凍らないために持っているワザ
私たち人間は周囲の温度が変化しても、自らの代謝によって体内で熱を産出し、体温を常にほぼ一定に保つことができる恒温動物ですが、昆虫は外部の温度の変化に合わせて体温が変化する変温動物です。温度によって活発度合いも変わってきます。そのため、冬になると氷点下になるような地域では凍ってしまうのでは?と思う方も多いはず。しかしながら、彼らはあるワザを使うことで、凍ってしまうことを防いでいます。
まず、昆虫たちは冬がやってくると、体液中のグリセロールやブドウ糖などの濃度を上げて、体液の凝固点(液体が凍ってしまい、固体になってしまう温度)を下げます。これらの物質は、寒冷地で使われる不凍液と同じような働きを持っており、体液が凍らないようにしているのです。
さらに重要なのが、凍り始めの原因となる不純物の存在です。体液中に微小なゴミや未消化物、細菌などが残っていると、それらが氷の結晶ができ始める“核”となり、比較的高い温度でも凍結が始まってしまいます。
そこで、冬を迎える前に消化管の中身を除去し、こうした不純物をできるだけ排出している仲間もいます。これによって氷の核ができにくい状態を作り出し、体液が凍り始める温度をさらに下げることができるのです。つまり昆虫は、化学的にも物理的にも凍結を防ぐ対策をとって、厳しい寒さを乗り越えています。
凍っても大丈夫な昆虫とは!?
昆虫は世界中に分布しており、極寒の南極にですら生息しています。そのため、気温が氷点下になるような地域では凍ってしまう昆虫もいますが、凍ったからといって死んでしまうわけではなく、体が凍ることを前提とした生き方をしている昆虫もおり、凍結によるダメージを受けにくい体のしくみを持っています。
彼らは細胞の内側が凍ってしまうのではなく、細胞の外側のみを凍らせることで、組織全体の水分をコントロールして、細胞内が氷の結晶によって破壊されることを防ぎます。また、小さな氷の結晶が大きくならないようにする不凍タンパク質を持っていたり、凍る場所とタイミングをコントロールすることができる仲間も存在します。
そして、体が凍ってしまうと、代謝を大きく低下させ、一時的に省エネモードになります。この間はエネルギー消費を最小限に抑え、寒さによるダメージを避けています。気温が上がって氷が溶けると、代謝は再び動き出し、活動を再開します。
この能力はどこから来た?昆虫の進化
昆虫は変温動物ながら凍らない能力や部分的に凍っても大丈夫な能力を持っていますが、これらをどのように得てきたのでしょうか?その答えは地球と昆虫の進化の歴史に注目すると、よく分かってきます。
昆虫は地球上に約4億年以上前から存在し、氷河期や急速な気候変動を何度も乗り越えてきました。その中で、寒さに弱い種は淘汰され、寒さに適応できた種のみが生き残ってきました。昆虫は、私たち人間のように服を着たり、暖房を使うこともできないため、 気温の影響をダイレクトに受けます。そのため、生き残るには先ほど紹介したような生理機能を進化させる必要がありました。
冬になると、昆虫たちはいなくなるわけではなく、寒さに耐えるモードに入っています。もし、冬に落ち葉の下や土の中などで昆虫を見つけたら、その小さな体は何億年もの進化の賜物であるということを思い出してあげてくださいね。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my
書籍情報
『昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本』
著者:牧田 習
定価:1,210円(本体1,100円+税)
体裁:新書判 / 128ページ / 4C刷
発行:小学館
発売日:2025年7月4日
ISBN:9784092274433
【Amazonで買う】
【楽天ブックスで買う】
文/牧田習
昆虫博士・牧田習さんが解説!これは良い虫?それとも悪い虫?冬の家やベランダにいる昆虫の見分け方
昆虫の最大の魅力は春夏秋冬いつでも、そして家の中から地球の裏側までどこでも見られることです。そのため、冬であっても私たちの生活圏内に姿を現すことがあります。今回…







DIME MAGAZINE



















