総務省が2026年1月23日に発表した、「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)12月分」によると、生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数では、前年同月比で2.9%の上昇となっています。
インフレで物価が上昇する中、スマートフォンにかかるコストは無視できない状況です。
一方で、ほかにない個性、魅力を求めるスマートフォンユーザーも多いです。
そんな中、英Nothing Technologyが発売したスマートフォン「Nothing Phone (3a) Lite」は、オシャレなデザインとリーズナブルな価格帯を実現し、人気を集めています。
楽天モバイルでの一括払いは3万2890円。48回払いでは月々700円を切る価格で購入できます。
SIMフリー版「Nothing Phone (3a) Lite」では、在庫切れで購入できなくなるという人気ぶり。
しかし、実はこの状況を手放しで喜んでばかりもいられません。2025年の半導体価格が急激に上昇しているからです。
「今後は3万円台で新品のスマートフォンが買えなくなる」……未来を不安視する声があがっているのです。
スマートフォンの半導体市場はどうなってる? 黒住代表にスマートフォンのプロ・法林岳之氏が直撃
そこで、2026年のスマートフォンの価格はどうなるのか? 半導体市況はどうなるのか? という疑問について、Nothing Technology Japan(ナッシング・テクノロジー・ジャパン)代表の黒住吉郎氏に、スマートフォンのスペシャリスト・法林岳之氏がインタビュー。市況の変化について直撃しました。
2025年8月からRAMやROMといったメモリーの価格が3倍以上に急上昇
法林氏:「スマートフォンの半導体の価格が上昇しています。スマートフォンにはさまざまな半導体を使いますが、RAMやROMといったメモリーが気になります。今、マーケットはどんな状態ですか?」
黒住氏:「RAMやROMの価格や供給量が問題になり始めたのは、2025年8月くらいからでしょうか。2026年2月現在も、情勢が落ち着いたとは言い難い状況です。我々Nothingの場合、この半年あまりで半導体の価格が3倍以上になっています。
RAMとROMの価格は、7、8年前から半年前までの間に2倍ほど値上がりしてはいました。でも、2025年夏からの半年間で3倍から4倍に跳ね上がったのには、正直言って驚きました。
しかも、天井がどこにあるかは、正直、読めないですね」
為替や原材料費、半導体価格……2026年スマートフォンの価格はどうなるの?
法林氏:「スマートフォンは部品を調達してから製品化するまで、通常、1年から1年半くらいかかります。今、販売されている製品にはもちろん、ここ最近の半導体価格の高騰は反映されていますが、実は、これから発表されるスマートフォンの価格に、本格的な価格高騰圧力がかかりそうです」
黒住氏:「その通りだと思います。スマートフォンで利用する半導体の中でもメモリーは、共通化しやすい部品です。仮に3種類のスマートフォンを製造するとしても、メモリーの規格さえ合っていれば、基本的に同じ半導体メモリーを共通で採用しやすい。なので、製造が中止されても、先買いして在庫していても、在庫リスクはかなり低い。
そのため、半導体価格が上昇していても、各メーカーはストックを持ち、そして先物でブッキングします。ですが、さすがに3倍以上の値上げとなると……ストック分で価格を相殺するにも、限界が出てきます。
2026年1月あたりから、じわじわとコストへのインパクトが強まっています。そして、この春から秋にかけて各メーカーは新製品を導入していきますが、価格への影響はさらに強くなっていくでしょうね」
法林氏:「スマートフォンにはチップセットやディスプレイ、バッテリー、カメラなど、さまざまな部品が使われていますが、中でもメモリー価格の上昇は、際立っているのでしょうか?」
黒住氏:「基本的にすべての部品が高くなっています。我々Nothing Technology Japanのように、完成品を輸入して販売するスマートフォンメーカーは、すべての部品をドル建てで購入していることになります。
仮に、使用する部品の価格が海外で上昇していなくても、輸入すると円安という為替の影響を受けるため、結果的にはすべての部品の価格が上昇することになってしまいます。
また、デバイスコストは本来、大量生産により徐々に下がっていくのものです。でも、今のスマートフォンは、機能の進化が理由でもありますが、従来と同じレベルの部品を調達すると、逆に高くなっている状況なんです。それが製品価格を押し上げる圧力になっています。
とはいえ、為替や部品全体の価格上昇に比べて、メモリーが半年で3倍、4倍になるという今の状況は、突出してシビアです」
法林氏:「ということは、2026年は年末までスマートフォンは値上がりせざるを得ない、そういうことですね」
黒住氏:「はい。その可能性が高いです」
なぜメモリーの価格上昇が起きているのか?
黒住氏:「メモリー価格が上昇した背景として、為替やインフレなどの社会状況はありますが、より大きいのはAIブームの影響でしょうね。
例えば、サーバーに使うメモリーの量が、今までとは桁違いになっている。まず、そこへの供給でメモリー不足になっています。
それから、EVに使用する半導体の需要も大きいですね。特に中国のメーカーの需要が2025年は多かったです。
また、スマートフォン自体の市況も2025年は悪くなかったです。コロナ禍で販売台数が増え、その後は一服しましたが、2025年は市況がまた良くなっています。
そして、Windows 10のサポートが2025年10月に終了することも影響しました。そこで、PCの買い替え需要が起きました。
つまり、2025年はメモリーへの需要が多い1年で、そのためメモリーの供給不足が起こり、結果的に価格上昇を引き起こしたと言えそうです」
「Nothing Phone(3a)Lite」はなぜ、4万2800円という価格を実現できたのか?
法林氏:「そんな2025年の状況を受けながら、2026年1月15日に発売された『Nothing Phone (3a) Lite』は、直販価格が4万2800円、楽天モバイルでは戦略的な価格設定により、一括払いで3万2890円の値付けです。こんな低価格をどうやって実現したのですか?」
黒住氏:「我々Nothingは、まだまだスタートアップの段階ではありますが、経営的に逆ザヤ(コストが価格を上回る状態)とならないよう注意しつつ、未来に向けての投資をしていかなければなりません。今回の『Nothing Phone (3a) Lite』の価格を抑えたことは、我々の企業努力ではあります。
ただし、この価格を半年後に実現できるかといえば、無理だと思います。
まず、先ほどお話ししたとおり、メモリーの蓄えがあって、相対的にコストを下げることができたのが、正直ラッキーでした。タイミングがすごく良かった。
また、我々の企業努力をご説明すると、Nothingの製品はすでに35か国以上で販売されていますが、Nothing全体では営業部門も含めて1000人に満たないため、判断の速度が早かったり、身の丈に合った経営をしている。その上で、効率性を重視しています。
例えば、日本でわかりやすい例をあげますと、NTTドコモさんの「B21」や「N79」、いわゆる「ドコモバンド」と呼ばれる周波数帯を、あえてカバーしていません。でもこれは、Nothingがリソース的にフォーカスできないところは、勇気を持ってフォーカスしないと決断しているからでして、その積み重ねで開発自体のコストを抑えています。
一方、我々が力を一番入れなくてはならないデザイン性や、ユーザーエクスペリエンスに直結するソフトの開発などは、リソースを集中することで差別化を図っています」
法林氏:「なるほど。でも、おサイフケータイにしっかりと対応されている。『日本ローカルの仕様だから対応しません』という海外のスマートフォンメーカーもいます。Nothingは販売数を増やさなければいけない中で、おサイフケータイに対応しているのはどういう意図ですか?」
黒住氏:「日本のマーケットの重要性は、Nothingの中で際立って高いんです。もちろん、ビジネスとしてのポテンシャルもありますが、日本のユーザーのみなさんが持っている、プロダクトに対する厳しさ、審美眼の中で学べるフィードバックが大切ですし、プロダクトを作る上でのインスピレーションの多くが、日本にあるからです。
そんな大切なマーケットでユーザーの生活にどこまで入り込んでいけるのか……おサイフケータイの採用が、大きなきっかけの1つになると思っています。
もちろん、今後は時代の変化で採用しないケースがあるかもしれないです。でも、今はしっかり対応できていることで、『ちゃんと日本での使い勝手を考えているんだな』って、日本のユーザーの方に伝わっているんじゃないかと思っています。
それと、CEOのカール・ペイを中心にNothing全体が日本のことを好きなんですね。好きって言うと陳腐に聞こえるかもしれないけれど、リスペクトがあるんです。だから、『真面目に作ろうよ』って思いが強いんです」
オーディオとスマートウォッチでもNothingの魅力は際立つ
法林氏:「スマートフォンはもちろんですが、オーディオとスマートウォッチをしっかりと作っていますね。僕は『Nothing Ear (2)』が手放せなくなっています。Nothingがオーディオにコミットしているのはなぜなんですか?」
黒住氏:「Nothingは2020年10月に創業しました。そのルーツの1つにスウェーデンのteenage engineeringというオーディオメーカーがあります。
先進機能だけれど、ちょっとレトロなデザインというコンセプト。熱いファンが多いメーカーでして、Nothingの最初のデザイン・インスピレーションでもあり、実際に経営にも参画しています。つまり、Nothingの根っこに近い部分にオーディオの存在があるんです。
『我々のプロダクトを使ってほしいな』とイメージしている方の中に、若くてクリエイティブなみなさんがいまして、いつの時代もそうなんですが、若い時ってやっぱり音楽が生活や文化のど真ん中にあるんですよね。
好きなアーティストがいて、そのアーティストの音楽性や、身につけているものなどに惹かれていく。だから『やっぱり音楽は外せないよね』って思うんです。
そんな音楽の原点に近いデバイスである、イヤホンやヘッドホンをNothingは作ろうと思っています。そして、イヤホンなどからNothingの製品を使ってもらえるのもうれしいです。スマートフォンより手軽で買いやすいプロダクトですし、複数所有しててもいい。
ご存じのとおり、我々Nothingは後発組ですよね。なので、今スマートフォンを所有しているみなさんにとって、Nothingを選ぶ理由が必要になってきます。
特定のブランドのスマートフォンを、5年も10年も使ってきて、そこから変えるのって大きな判断が必要だと思うんです。だから、代替品ではなくて、みなさんのライフスタイルにフィットすることで、『Nothingっていいパートナーなんだ』と感じていただきたいと思っています」
オシャレで高性能なのにお買い得。「Nothing Phone (3a) Lite」はこんなスマートフォン
それではここからは、「Nothing Phone (3a) Lite」を改めてご説明いたします。
同機は、楽天モバイル版で3万2890円という低価格を実現しながら、ブランドの象徴ともいえる、内部構造が見える背面のシースルーデザインを採用しています。
そして、LEDで光る演出が楽しい「Glyphライト」や統一感のあるUIなど、手に取るたびに所有欲を満たしてくれるスマートフォンです。
■低価格でも実用性は高い。MediaTek Dimensity 7300 Proとおサイフケータイを搭載
Nothing初のエントリーモデルですが、中身はパワフル。チップセットには「MediaTek Dimensity 7300 Pro」を採用し、120Hz駆動の滑らかな有機ELディスプレイを搭載しています。
もちろん、WebブラウジングやSNSの操作性はスムーズで、不要なストレスを感じることはありません。
そして、おサイフケータイにもしっかり対応。最大2TBのmicroSDカードスロットも備えており、多くの写真や動画を保存したいユーザーのニーズも満たします。
■「Essential Space」が提案する、新しいスマホとの距離感
注目したいのが、「Essential Space」です。
本体側面の「Essential Key」でスクリーンショットや音声メモを保存すると、自動的に整理し、ユーザー好みの提案や要約、アクションプランなどを作成できます。
背面の光で通知する「Glyphライト」と組み合わせれば、仕事中に画面を見ることなく、大切な連絡だけをスマートに判別できるのも便利です。
■「Nothing Phone (3a) Lite」の主なスペック
サイズ(約):幅78×高さ164×厚さ8.3mm
重量:約199g
ディスプレイ:約6.77インチ
解像度:2392×1080 FHD+
CPU:MediaTek Dimensity 7300 Pro 5G/オクタコア 2.5GHz×4+2GHz×4
OS:Android 15(Android 16へのアップデートに対応)
メモリー:8GB(RAM)/128GB(ROM)
外部メモリー:microSDXC(最大 2TB)
アウトカメラ:約5000万画素(f/1.88)+約800万画素(f/2.2)+約200万画素(f/2.4)、デジタルズーム最大10倍
インカメラ:約1600万画素(f/2.45)
バッテリー容量:5000mAh
SIM:nanoSIM/eSIM
おサイフケータイ:対応
NFC:対応
防水・防じん:対応
まとめ。2026年の上半期はスマートフォンの買い時!?
最後に、法林岳之氏に2026年スマートフォン市場の予測と、買い時について解説してもらいました。
――スマートフォンの価格は今後、どうなるでしょうか?――
法林氏:「メモリーの高騰による影響は、特に大きいと思われます。
『Nothing Phone (3a) Lite』はRAMが8GB、ROMが128GBのスマートフォンです。一般的にスマートフォンはチップセットやディスプレイ、カメラ性能などで価格に差は出ますが、今後、同等のスペックの新製品をリリースしても、4万2800円という価格を実現するのは難しいかもしれません。今の市場動向を踏まえると、2026年後半には1万円程度上昇するリスクがありそうです。
そして、上位モデルでは、さらに価格が上昇する可能性があります」
――ハイエンドモデルを中心に、1年で新型が登場するサイクルがあります。半導体高騰の影響で変わりますか?――
法林氏:「あり得ると思います。
機能面でも、例えばカメラ性能の差別化が難しくなっています。『性能が大きく進化した』とメーカーが言えるほど明確な違いを出せたら、その時は新型を発表する。そんな流れができるかもしれません」
――今、販売しているスマートフォンを買うべきですか、待つべきですか?――
法林氏:「2025年末からのメモリー価格の高騰は、過去の事例に当てはまらない、大幅な上昇になりました。そのため、買い換えのタイミングが合うのであれば、今販売されているモデルを購入するのはひとつの手だと思います。
例えば、『Nothing Phone (3a) Lite』はいい選択肢だと思いますし、予算が許せば、上位モデルの『Nothing Phone(3a)』や『Nothing Phone(3)』を選ぶのもいいと思います。
一方で、「買い換えのタイミングにはちょっと早いかも?」という人も、黒住さんが『次期モデルが出た時、旧モデルから買い替えする方へ何らかのサポートをしたい』と話していましたので、そういったメーカーのサポートに期待しつつ、現行モデルを買いながら、新型の登場を待つというのもありかもしれません。
ただし、メモリーの高騰、為替の変動など、想像以上に価格上昇リスクが高まるかもしれませんので、注意が必要です」
――今後も半導体の価格は上昇するのでしょうか? また供給量不足は解消されますか?――
法林氏:「半導体価格が上昇傾向にあるのは間違いないですが、2025年の環境は特別でした。半導体の値上がり幅は、2026年末にかけて、徐々に狭くなっていくかと思います。
ただし、半導体メーカーに、利幅だけで動かれると怖いと思います。例えば、AIのサーバー向けのメモリーが儲かりそうだと予測したメーカーが、スマートフォン向けのメモリーの供給量を減らし、そのため価格が上昇するという流れです。
まあ、今のような需要がいつまでも続くとは考えにくいので、いずれ供給量は安定するかと思いますが、2026年は半導体不足で製品が売り切れる、そんな事態が起きるリスクは高いと思います」
構成・文/中馬幹弘
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