2026年2月11日にアメリカ労働省が発表した1月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は前月から13万人増と、13か月ぶりの大幅な増加となった。これを受けて12日の円相場は153円台前半で推移。財務省の三村淳・財務官は、「一切ガードは下げていない」「高い緊張感を持って市場動向を注視しながら、市場との対話を続ける」と発言した。
そんな総選挙後の円相場と、長期金利に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から届いたので概要をお伝えする。
衆院選後の円高は介入警戒感による円売りポジションの調整や、複数のドル安要因によるもの
2月8日に投開票が行われた衆議院議員選挙について、市場では与党勝利なら株高と円安が進み、長期金利は上昇するとの見方が優勢だった。
しかしながら実際は、日経平均株価が大幅高となった一方、ドル円はドル安・円高に振れ、長期金利も大きく上昇する展開には至っていない。
以下、ドル円と長期金利が予想に反した動きとなった背景を探り、今後を展望してみたい。
まず、ドル円からみていくと、日本時間の2月9日早朝、一時ドル高・円安で反応したものの、本邦当局による為替介入に対する警戒感が非常に強く、その後の円安方向の動きが限定的となったと推測される。
この点に関しては、市場で1月下旬に浮上した日米当局による「レートチェック」の観測が効いているように思われ、投機筋の円売りポジションの縮小につながったほか、複数のドル安要因も影響したと考えられる(図表1)。

■高市首相らの発言で現実的な財政運営の見方が徐々に広がり、長期金利上昇圧力が緩和か
次に、長期金利に目を向けると、10年国債利回りは9日に上昇したものの、10日は低下し、比較的落ち着いた動きにとどまった。
市場では、高市早苗首相が衆院選後、財政運営についてどのような見解を示すかに注目が集まっていたが、高市氏は2月9日の記者会見で、食料品の消費税について、2年間に限りゼロとして、財源は特例公債(赤字国債)に頼らず、夏前には国民会議で中間とりまとめを行ないたい旨を表明した(図表2)。

また、片山さつき財務相も前日8日のテレビ東京の番組で、食料品の消費税減税について、基金や特別会計などを総点検して財源を集める考えを示した。
これらの発言を受け、高市政権は現実的な財政運営を行なうとの見方が徐々に広がり、財政悪化やインフレ加速への懸念が幾分和らいだことで、長期金利上昇圧力が低下。そして円安の抑制にも作用したと推測できる。
■高市政権の財政運営を見極めることは必要だが、円の急落や長期金利急騰リスクは小さいとみる
しかし、高市政権の財政政策が、市場の信認を得るまでには、まだ時間を要すると思われ、依然として円安や長期金利上昇が進みやすい地合いにあるとみている。
ただ、ドル円については、再び157円を超えてドル高・円安が進んでも、為替介入に対する警戒感が強いことから、一気に160円を超える展開は見込み難いと思われる。
また、この先のドル円を見通す上では、日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策も注目される。
10年国債利回りは、直近でつけた2.35%台を超えてくるかが焦点で、高市政権の掲げる「責任ある積極財政」がどのように実現されるのか、国民会議での議論や日本版DOGE(政府効率化省)による財政効率化の進展が待たれる。
なお、三井住友DSアセットマネジメントは高市政権の財政政策について、大まかな方向性としては拡張的であるとしても、財政規律には一定の配慮がなされ、野放図なものとなる可能性は低いとみており、長期金利急騰の恐れは小さいと考えている。
構成/清水眞希







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