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覚えておきたい配偶者や親が亡くなった時に銀行から預金を引き出せる「預貯金払戻し制度」

2026.02.19

配偶者や親が亡くなり銀行口座が凍結されたときに、葬儀費用等のための資金を引き出せなくなったらどうしようと思うことはありませんか?

本記事では、もしもの時に銀行口座から資金が引き出せる「預貯金払戻し制度」について解説します。

預金払戻し制度の2つの制度

人が亡くなると、その人の預金は相続財産として相続人に配分されることになります。ただ、その相続の配分が決まらない前に、その預金を勝手に引き出すことはできません。

相続財産の配分を決めることを「遺産分割協議」といいますが、遺産分割が終わる前に、たとえ亡くなった方のための葬儀費用や生活費の支払いのためだとしても、相続人が単独で亡くなった方の預金を引き出すことができません。

これは、遺産分割が決まる前に、勝手に相続資産を使ってしまわないようにするためではありますが、亡くなった方の生活費などの支払いを相続人自身が負担するのは、支払いが困難なこともありますし、相続人の誰か1人が負担することで不公平感が生じる可能性もありました。

そこで、2019年7月1日から「相続預金の払戻し制度」が設けられました。

預金払戻し制度には、2つの制度があります。

(1)家庭裁判所の判断を経ずに払戻しができる
(2)家庭裁判所の判断により払戻しができる

1つ目は、相続人単独で家庭裁判所の判断を経ずに、相続開始時の預金額の3/1×払い戻しを受ける相続人の法定相続分、かつ同一の金融機関で上限が150万円まで預金の払戻しを受けることができます。

2つ目は、家庭裁判所へ申立てを行い、その審判を得ることにより、預金の全部または一部の払戻しを受けることができます。

1つ目は、遺産分割に争いがあり、遺産分割協調停や審判手続きが行われ、長期間預金の払戻しを受けることができないときにおいて、利用できる制度です。

なので今回は、簡易的な方法で預金を引き出すことができる2つ目の制度を中心に解説します。

エクセルで解説!預金払戻し制度の内容

払戻しが受けられる金額は、相続開始時の預金額をもとに計算され、かつ口座や明細ごとに計算します。

同じ銀行でも、普通預金、定期預金A、定期預金Bがあればそれぞれで計算する必要があります。また、同一金融機関で上限が150万円までとなっているため、口座がC支店、D支店と同じ金融機関にあれば、そのなかで150万円までとなります。

例えば、M銀行で、普通預金が300万円(C支店)、定期預金Aが200万円(D支店)、定期預金Bが100万円(D支店)にあった場合で、M銀行で子どもがいる配偶者が引出し可能な金額は、以下となります。

・普通預金(M銀行C支店):300万円×1/3×1/2=50万円
・定期預金A(M銀行D支店):600万円×1/3×1/2=100万円
・定期預金B(M銀行D支店):300万円×1/3×1/2=50万円
合計50+100+50=200万円

支店は異なるが、M銀行で合計200万円となってしまうため、150万円までならM銀行から引き出すことができます。

スムーズに手続きするには?

簡易な方法による預金払戻し制度には、金融機関に以下の書類を提出する必要があります。

(1)亡くなられた方の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
(2)相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
(3)預金の払戻しを受ける方の印鑑証明書

上記種類は、全て役所・役場で受け取ることができ、死亡届を提出時に手続きをしていくとスムーズでしょう。

(1)の書類は、亡くなられた方が、「婚姻」「離婚」「転籍(本籍地の変更)」「筆頭者変更」「養子縁組」ごとに戸籍が編成され、それを全て集める必要があります。

まず、最終の戸籍謄本を取得し、その内容から、旧本籍をたどって集めていく必要がありますが、市区町村によっては、戸籍謄本の広域交付サービスを行っており、自分が住んでいる市区町村の役所・役場で、亡くなられた方の名前と戸籍の筆頭者を伝えれば、その市区町村外の戸籍謄本を取得することができます。

なお、亡くなられた方に親、子がおらず、兄弟姉妹が相続人となった場合に、兄弟姉妹における戸籍謄本の広域交付サービスが利用できません。

ただ、この預金払戻し制度の利用に関わらず、その後の相続手続きにおいて、預金の相続、証券の相続、不動産の相続登記に必ず必要となるため、煩雑ではありますが用意しておいて損はないでしょう。

預金払戻し制度を利用するときの注意点

遺言書に預金の分割に係る内容が書かれていた場合、この制度が利用できない場合があります。

例えば、亡くなられた方が、払戻しを受けたい人をAとすると、Aではない別の相続人へ「Bに預金すべてを与える。」という旨の遺言を残していた場合、Aは預金の払戻し制度を利用することはできません。

一方、この場合、Bは預金の払戻し制度を利用することができます。

そして、払戻しを受けた場合、相続放棄ができなくなります。亡くなられた方の債務をよく確認してから払戻しを受けた方がよいでしょう。

また、払戻しを受けた分は、遺産分割の際に相続人が取得したものとして調整されることになります。そのとき、亡くなった方のために、資金を使用したときは、領収書を保存しておきましょう。

相続財産は課税対象であるため、払戻し制度で受け取った資金も当然相続税の課税対象ですが、以下のような、亡くなった方の債務、葬儀費用に使用した資金は相続の課税価額から控除することできます。

債務控除の対象となる債務

・亡くなった方の債務で、借入金、未払金、税金の支払いなど

葬式費用の対象となるもの

・埋葬・火葬、納骨等、そのための式の費用
・お布施、かつそのお布施の金額は亡くなられた方の職業や財産等に照らして相当と認められるもの
・死体の運搬費用

※葬式費用に該当しないもの
・香典返し
・墓碑、墓地の購入費や賃借料
・初七日などの法要費用
・裁判や医学のための処置費用

お布施や読経料などの領収書がないものは、メモに日付、支払先、項目を書いておけば、その金額が、亡くなられた方の職業や財産に照らして一般的に妥当と考えられる金額であれば、葬式費用として認められます。

通常、亡くなった方の預金口座は凍結され、たとえ亡くなられた方のために使う場合であっても、遺産分割協議や相続人全員の同意がないと口座から引き出すことができませんが、預金の払戻し制度を利用すれば、亡くなった方の預金の払戻しが、相続人の1人単独で行うことができます。

簡易的な方法であれば、必要な書類も、役所や役場で揃えることができ、その書類をもって、銀行の窓口で手続きすることができます。

万が一のときに慌てないためにも、制度の仕組みや必要書類、注意点を事前に理解しておくことが大切です。知識があるだけで、家族の負担やトラブルを大きく減らすことにつながるでしょう。

文/大堀貴子

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1984年生まれ41歳、3児の母です。南山大学法学部卒業後、大手証券会社の営業を経験し、働きながらCFPを取得。その後退職し、夫のタイ駐在へ帯同し、タイ語検定3級を取得。帰国後、証券会社での経験を活かして、金融ライターになりました。そのなかで、さらに税の知識も深めるため、税理士試験を受け、5科目のうち、簿記論、財務諸表論、所得税に合格。その後、再び夫の中国駐在へ帯同することになり、オンラインの会計大学院で税理士資格を取得することを目指し、現在税理士試験2科目免除申請中。中国語のHSK5級を取得し、今はHSK6級の勉強中です。趣味は、旅行と中国時代劇ドラマを見ること。

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