コロナ禍の雇用調整助成金の支給で財政悪化している雇用保険。本記事では、その財政状態について詳しく解説し、雇用保険料が今後どうなるのか予想してみた。
雇用保険とは?
雇用保険は、主に会社員が加入しているもので、失業時や育児で休業し給料が受け取れなくなった時に雇用保険から給付金を受け取ることができる、労働者を守るための保険だ。
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保険料は、給与に対し労働者が0.55%、会社が0.9%をかけた金額が、給与から天引きされる。
例えば、月あたりの給与が30万円のとき、30万円×0.55%=1,650円が毎月天引きされることになる。一定率でかけるため給与が上がるほど保険料は高くなり、給与が50万円のときは、50万円×0.55%=2,750円となる。
※保険料率は、令和7年(2025年)度一般事業の場合
雇用保険の給付は、主に以下の給付がある。
・失業者手当(雇用保険基本手当)
失業時に原則離職日の翌日から1年間、失業前の給与の45~80%の給付を受け取ることができる。
・育児休業給付
子どもの出生時に出生時育児休業給付金、出生後に、子どもを養育するために会社を休んだ時は育児休業給付金、子どもを養育するために時短勤務をした時に育児時短就業給付金を受け取ることができる。
・介護休業給付
介護で仕事を休んだ時に、介護給付金を受け取ることができる。
・一般教育訓練給付金
キャリアアップのために大学院や専門学校などの講座を受講した場合に、その受講費用の20~80%の給付金を受け取ることができる。
・高年齢雇用継続給付
60~65歳未満で、失業はしていないが賃金が60歳時点の75%未満に下がった人、または失業手当(基本手当)の給付を受けて再就職したが失業手当給付時の賃金水準の75%未満に下がった人が、給付を受けることができる。
なぜ?雇用保険の財源不足と原因
雇用保険の保険料は、失業給付等には労働者と会社が負担し、雇用保険二事業は会社負担のみ、育児休業給付は労働者と会社が負担し、不足分は国庫で負担している。
雇用保険二事業は、失業給付をできるだけ減らすための事業で、そのための事業主への助成金や労働者の職業訓練に係る給付等を行っている。
そして、コロナ禍で特例措置で大規模に支給された「雇用調整助成金」は、この雇用保険二事業のうちの1つであり、その支給額は累積で6.4兆円にも上ってしまった。
通常は前述の通り、保険料はすべて会社負担で成り立っているが、雇用保険二事業の給付のために積み立てられている雇用安定資金は、この支給により0となった。
そのため、雇用調整助成金の支給のための不足分は、国庫からの直接繰入、さらに失業給付のための積立金から2.9兆円(うち国庫から2.4兆円繰入)借入れすることで賄った。

上グラフは、雇用保険二事業の給付のための積立金残高の推移である。
2020年のコロナ禍において、雇用調整助成金の大規模支給により、積立金が一時0となった。0となったときに、失業給付等の積立金から借入したため、下グラフの失業給付等の積立金残高も大きく減少した。
借入ということは、今後返済されるということだが、金額が大きいことから、すぐに全額返済するのは難しいのではないかと考えられる。

失業給付等のための積立金は、失業給付の受給者が少ないとき、つまり企業業績が好調で雇用環境が好調なときには、積みあがっていく。
そのため、アベノミクスで好調であったコロナ禍前では大きく積立金が積みあがっていた。
一方で、企業業績が悪化し、雇用環境が悪化すれば、失業給付の受給者が増加し、積立金が大きく減少する可能性があるため、将来万が一大きな景気悪化が起きた時のために、手厚く積み立てておきたい資金である。
この先、雇用保険料は上がるのか?
ここ直近で雇用保険料が上がるのか?その答えはNOだ。実際保険料はその逆で下がる。
2025年度は雇用保険料の労働者負担が0.55%であったが、2026年度は0.5%と引き下げになる予定だ。これは、雇用保険料の財政状態が良いからではなく、政府が物価上昇の影響を和らげるため、雇用保険料を引き下げたからだ。
今のところ、雇用状況がよいため、失業給付等のための積立金が枯渇することはないが、そもそもこの積立金は不景気に備えているもの。
今後近いうちに不景気となり、雇用状況が悪化し、失業者が増え、失業給付の受給者が急増すればたちまち積立金が枯渇する可能性がある。
そうすれば、雇用保険料が上がる要因ともなり、かつ国庫負担率が上がり、私たちの税金負担が増える可能性もある。
バブル崩壊後の経済低迷時に、そのような状況が起きた。当時、失業手当の受給者が急増し、1998~2002年までに、3兆8,975億円あった積立金が4,064億円まで急激に減少し、雇用保険料率が一時的に2倍になったことがある。
もし、当時と同じように、保険料率が2倍近くの1%まで上がれば、例えば、月あたりの給与が30万円のとき、30万円×1%=3,000円が毎月天引きされ、賞与も入れれば年間3万円超となる未来もあるかもしれない。
(参考)厚生労働省 財政運営について
文/大堀貴子







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