ビックカメラの好決算を決算資料と店舗の声から分析。インバウンドに売れている商品と、インバウンド戦略の強さを読み解く。
目次
訪日客の回復が進む中、家電量販店大手ビックカメラが好調な決算を発表した。売上増の背景には国内需要の回復だけでなく、インバウンド消費の伸びがある。
本記事では決算資料と店舗現場の声をもとに、訪日客が実際に何を買っているのか、そして同社がなぜインバウンドに強いのかを読み解いていく。

出典:https://tourist-info.biccamera.com/s/?language=en_US
ビックカメラ好決算の中身 インバウンド需要はどこまで業績を押し上げた?
決算資料を見ると、今回の売上増は国内需要の回復だけでなく、訪日客による買い物需要の伸びが重なった結果であることがわかる。
■売上も利益も大きく伸長 決算数字に表れた免税売上のインパクト
2026年8月期第1四半期の連結売上高は2,386億円(前年同期比6.5%増)と増収となり、営業利益は74億円(同66%増)と大きく伸びた。ビックカメラ単体でも売上は1,162億円(同7.9%増)、営業利益は同275%増の28億円と大きく拡大している。
売上が増えただけでなく、しっかり利益が残っている点が今回の特徴で、その背景の一つには免税売上が四半期として過去最高水準に達したことがある。国内客と訪日客の双方の需要が好決算を支えたかたちだ。
■インバウンド+ECの相乗効果、売上85億円増の内訳を読む
単体売上は前年同期から85億円増加しており、内訳を見ると既存店内需が57億円増、インバウンド関連が13億円増、ECが11億円増となっている。

出典:P4
https://www.biccamera.co.jp/ir/library/pdf2026/20260114.pdf
免税売上は、会社予想を上回り、第1四半期として過去最高を記録した。

出典:P14
https://www.biccamera.co.jp/ir/library/pdf2026/20260114.pdf
一方でECも着実に伸びており、来店客だけでなくオンラインでも需要を取り込んでいる。店舗とネットの両方で売上を積み上げたことが、今回の好決算につながったといえる。
訪日客はビックカメラで何を買うのか?決算資料で見えたリアルな購買傾向
ここでは、ビックカメラの売上拡大に大きく貢献しているインバウンド消費の動向に注目する。どの国・地域の旅行者が、実際にどのような商品を購入しているのかを見ていこう。
■中国一強から変化?台湾・欧米客が伸びるインバウンド構図

出典:P14
https://www.biccamera.co.jp/ir/library/pdf2026/20260114.pdf
地域別の売上構成を見ると、中国が依然として最大の比率を占める一方、台湾や欧米・豪州の割合が伸びている点が特徴だ。特定の国だけに頼るのではなく、複数地域から安定して需要を取り込めていることが、売上の底堅さにつながっているといえる。
■理美容家電がトップ独走、その裏で伸びる時計とカメラ

出典:P14
https://www.biccamera.co.jp/ir/library/pdf2026/20260114.pdf
商品カテゴリ別の売上構成を見ると、もっとも大きな割合を占めるのは「理美容家電」だ。ドライヤーやシェーバー、美顔器、シャワーヘッドなど、日本製の品質や機能性が評価され、安定した人気を保っている。実際、Air BicCamera銀座店では入口付近に理美容家電売り場を配置し、中型店並みの広さを確保するなど、訪日客需要を見据えた売り場づくりが進んでいる。

出典:https://www.biccamera.com/bc/i/shop/shoplist/shop140.jsp
一方、伸び率で目立つのが「時計」と「カメラ」だ。カメラではインスタントカメラや高価格帯のデジタルカメラの品ぞろえを拡充しているという。
時計では有楽町店で高級腕時計の中古販売を開始し、物価高に直面する30〜50代のビジネスパーソンや訪日外国人の需要を見込むなど、高単価商品の動きも売上を押し上げる一因となっている。

出典:https://www.biccamera.co.jp/pdf/news/2025/20250709.pdf
■炊飯器・水筒・イヤホン…店舗スタッフが語る売れ筋商品
決算資料だけでなく、店舗現場の声からも訪日客需要の強さが見えてくる。Air BicCamera銀座店では、理美容家電や健康家電、イヤホン、ステンレスボトル、デジタルカメラ、旅行小物など、訪日客に人気の商品を中心に展開している。同店の店長は「売れ筋を集めた」と語る。加えて、文房具やキャラクターグッズ、ゲーム機・ソフトなど、日本らしさを感じられる商品も展開し、実用品と土産需要の両方を取り込む狙いが見える。
羽田空港第3ターミナル店(4階店舗)では、来店客の7〜8割が外国人で、炊飯器やドライヤー、美顔器、イヤホン、ステンレスボトルが特によく売れるという。炊飯器は中国・台湾客を中心に依然として人気が高く、日本製の保温ボトルも品質の高さから支持を集めている。和柄デザインの商品が品切れになることもあるという。
なぜビックカメラはインバウンドに強い?好決算を生む仕掛け

実は、インバウンド売上が伸びているビックカメラには、明確な「インバウンド強化戦略」を打ち出し、注力している背景がある。その結果として、現在の好決算につながっているといえるだろう。では、具体的にどのような工夫や取り組みが行われているのかを見ていこう。
■インバウンドを「成長エンジン」に据えた数値目標の本気度
ビックカメラの特徴は、インバウンドを一時的な追い風ではなく、経営の柱として計画段階から組み込んでいる点にある。2025年8月期から2029年8月期までの5年間を対象とする「ビックカメラグループ中期経営計画~Vision 2029~」では、成長領域の一つとしてインバウンドを明示し、免税売上の拡大や売上高目標など具体的な数値を掲げている。
さらに、生活様式や国籍ごとのニーズの違いに対応した商品・サービスの拡充も方針として打ち出しており、「訪日客を増やす」だけでなく「客単価を高める」戦略を前提としていることがうかがえる。
■駅前・空港・夜間営業 訪日客を逃さない店舗設計
店舗戦略もインバウンド仕様に最適化されている。観光地や主要駅周辺、旗艦店の近隣には訪日客向けの小型専門店を出店し、菓子や酒類、理美容家電、旅行小物など「まとめ買い」や「土産需要」が高いカテゴリーを重点的に配置している。
例えば2026年1月30日には、札幌に「ビックカメラ Select」ブランドの第1号店をオープンした。ニーズを的確に捉えた商品を厳選して提案する店舗として、韓国人旅行者に人気の酒類や、各国の訪日客から支持を集める菓子類などを豊富に取りそろえているという。

出典:https://www.biccamera.com/bc/i/shop/shoplist/shop134.jsp
また、ナイトタイムエコノミーへの対応として営業時間を延長する店舗もあり、夜間でも買い物しやすい環境づくりを進めている。
都市部の一等地×夜間営業×訪日客特化店という組み合わせにより、旅行日程の限られた訪日客の購買機会を逃さない設計になっている点が強みだ。
■翻訳・免税・クーポンまで、買いやすさを仕組みで支える強さ
店頭オペレーションにおいても、インバウンド対応は体系的に進められている。商品情報を多言語で表示できるタブレットの導入やAI通訳機の貸出、スタッフ向け英語研修の実施などにより、来店客と従業員双方の言語の壁を下げている点が特徴だ。
さらに、グループ全店のレジに免税販売管理システムを導入し、不適切な取引を防ぎながらスムーズな免税手続きを可能にしている。決済や手続き面でのストレスを減らすことで、購買体験そのものを向上させているといえる。
加えて、航空会社や旅行代理店との提携拡大を通じて、訪日前からの集客導線も整えている。例えばロサンゼルス発日本行きの一部路線では、機内で免税クーポンを配布し、対象商品が最大7%割引となる施策を実施するなど、来日前から購買意欲を喚起する取り組みも行われている。

出典:https://www.biccamera.co.jp/pdf/news/2025/20250612.pdf?#zoom=90
テクノロジー、人材教育、外部連携の三層で仕組み化していることが、継続的なインバウンド売上を支える土台となっている。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/Ema







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