
リチウムイオンモバイルバッテリーが、ついに社会問題と化してしまった。
2025年は世界中でリチウムイオンバッテリーの発火事故が発生した年でもある。各国の交通当局はその対策に追われた。我々のズボンのポケットに、或いはバッグの中にいつも入っているモバイルバッテリーは、もしかしたら我々を殺すかもしれないことが分かってきたのだ。
大袈裟な表現ではない。モバイルバッテリーが火元と見られる航空火災事故も、実際に発生している。航空機の中での火災は、それがどんなに広がったとしても乗員乗客に逃げ場はない。日本の国土交通省も、慌てるようにモバイルバッテリーの機内持ち込みに関する方針を発表した。
が、その後も鉄道などでのモバイルバッテリー出火事故が相次いで発生している。
そこで注目されるようになったのが、「ポストリチウムイオン」と呼ぶべき新素材製品である。
鉄道車内でモバイルバッテリーから煙
この記事を執筆しているのは2026年2月9日だが、この6日前——即ち2月3日にこのような騒動があった。以下、TBS NEWS DIGの記事からの引用である。
「きょう午後4時45分ごろ、東京・江東区にある都営新宿線「森下駅」の電車内で、「モバイルバッテリーから煙が出ている、具合の悪くなった人がいる」と119番通報がありました。
警視庁などによりますと、走行中の電車内で、乗客の男性が持っていたモバイルバッテリーから火が出たということです。70代の男性と20代の女性が体調不良を訴えて病院に搬送されました。」
(都営新宿線の電車内でモバイルバッテリーから出火 少なくとも男女2人が体調不良訴え救急搬送 一時全線で運転見合わせるも現在は再開 TBS NEWS DIG)
こうしたことは、今や誰の身にも起こり得る。
電車は航空機よりもまだ火元から逃げられる可能性があるとはいえ、最悪大惨事につながる事態であることは言うまでもない。
その上で、一般的なリチウムイオンは「衝撃に弱い」という点も付け加えなければならない。
スマホを所持したことのある人なら、それを地面に落としてしまった経験があるはずだ。しかし、場合によってはそれが原因で出火してしまうこともある。一般社団法人全国危険物安全協会の作成した資料には、こうある。
「リチウムイオンバッテリーは外部からの衝撃が加わり、へこむなどすると内部ショートが生じ、発煙や発火につながります。リチウムイオンバッテリーを搭載した製品は小型のものも多く、手をすべらせて落下させたり、ポケットに入れたまま座って体の下敷きにしたりなどして事故となることがあります。外部からの衝撃が加わることのないよう注意しましょう。」
(意外と身近に、危険物~リチウムイオン電池の火災に注意~ 一般社団法人全国危険物安全協会 )
そんなことを言われても、落としてしまうのは仕方ないだろう……と思うのは人情というものだ。
はっきり言って、手元が狂ってモバイルバッテリーを落としてしまうなどという出来事は避けられるはずがない。地球から万有引力を取り除かない限り、人間の手はどうしても物を地面に落下させてしまう。だからこそ、「ポストリチウムイオン」モバイルバッテリーが大注目されているというわけだ。
モバイルバッテリーと人権問題
エレコムが去年発売したナトリウムイオンモバイルバッテリーは、「世界初」を謳っている。
一般的なリチウムイオンバッテリーよりも熱暴走が発生しにくく、故に衝撃があっても発火しにくい仕組みになっているという。しかも、リチウムイオンバッテリーの約10倍ものサイクル寿命も備えているとのこと。
ナトリウムイオンバッテリーは、リチウムやコバルトといったレアメタルを使用しない点にも注目する必要がある。
リチウム、コバルトは共に深刻な人権問題をもたらしていると言われている。採掘現場で働くのは低賃金労働者で、彼らはかつての日本の炭鉱でもあったような劣悪な環境下で酷使されているという報告もある。
曰く付きのレアメタルの使用を回避するという点でも、ナトリウムイオンバッテリーは極めて有効な一手になり得るのだ。
結局は「消費者のリテラシー」にかかっている
しかし、ナトリウムイオンにしろリン酸鉄リチウムイオンバッテリーにしろ、我々一般消費者が気をつけなければならないことがある。
Amazonや楽天市場等のECでそれらを購入する場合、製品のメーカーに注目しよう。現時点においても、新素材の使用を謳っている「謎のメーカーの製品」が売られている。エレコムのナトリウムイオンバッテリーが人気を集める中、それより安価だが製品として信用できるのか……という具合のものが今後津波のように送り込まれるだろう。
すると、結局は仕様素材そのものよりも「消費者のリテラシー」の問題になってしまう。
現状、ナトリウムイオンバッテリーもリン酸鉄リチウムイオンバッテリーも「少数派」の製品のため、価格は従来型リチウムイオンバッテリーよりも割高になってしまう。だからこそ、そこに「できるだけ安い値段でナトリウムイオンバッテリーを入手したい」という需要が生まれる。残念ながら、それを狙って粗悪品を販売する業者も出てくると思われる。
出火事故を防ぐイロハのイは、オンラインショッピングにまつわるリテラシーを養うことである。
【参考】
都営新宿線の電車内でモバイルバッテリーから出火 少なくとも男女2人が体調不良訴え救急搬送 一時全線で運転見合わせるも現在は再開 TBS NEWS DIG
ナトリウムイオンモバイルバッテリー エレコム
意外と身近に、危険物~リチウムイオン電池の火災に注意~ 一般社団法人全国危険物安全協会
文/澤田真一
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