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なぜ、京都の人は「イケズ」と呼ばれるのか?

2026.02.07

DIME本誌で好評連載中の「玉川徹から働き盛りの君たちへ」。2025年は京都がテーマだった。生まれも育ちも関東の私は、テーマが京都と決まって、期待と同時に怖かった。京都人は「いけず」と言われている。対談でいけずされたらどうする?何がどういけずなの?しかし、登場してくれた京都人たちは全くいけずじゃなかったし、玉川徹さんの上手な話の引き出しもあって、どの対談も質の高い内容に仕上がった。

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すっかり京都人に対する誤解は解けたが、なぜ京都の人はいけずと言われてしまうのだろう。それとも、私のような「一見さん」には見せない「極悪イケズ部分」があるのだろうか。そんな疑問に答えてくれたのが、テレビドラマでも大人気の「鴨川食堂」シリーズの作者柏井壽さんの新刊「ほんとうの京都 古都をめぐる知られざる58の視点」(SBクリエイティブ発刊、定価1100円)である。「なぜ京都人はいけずと言われるのか」を、わかりやすく解説してくれた。

内容が異なる3つの「祇園さんへ」の会話事例

柏井さんご自身も「京都人と言えばいけず。すっかり浸透してしまいました」と、いけずと言われている状況を、認識されている。しかし、その多くは誤解、もしくは曲解によるものだと言う。

誤解を招く理由の一つは、京都人独特の言い回しにあると、柏井さんは分析している。「同じ言葉であってもその時の状況によって、大きく意味合いが異なることがあって、それを瞬時に判断し対応するのは、京都人ならではだろうと思います」と言う。

今回は柏井さんが3つの京都ならではの独特の会話を紹介してくれた。一つ目は春うららのお昼前、道端で出会った京都人ふたりの会話である。

どこへお行きやすのん?
へえ、ちょっと「祇園」さんのほうまで
よろしいなぁ。たんと美味しいもん召し上がっとぅくれやすな
おおきに

この会話に出てくる「祇園さん」は祇園エリア一帯の地名を表す祇園である。相手の服装などから察すると、「料理屋さんへでも、食事に行くところだろう」と分かったので、会話がきちんと成立している。しかし、これが梅雨あけ7月半ばの夕暮れ時の会話だとこうなる。

どちらへ?
へえ、「祇園」さんへ行ってこう思うてますねん
よろしいなぁ。ようけのおひとや思いますけど、せいだい愉しんできとぉくれやすな
おおきに

この二人の「祇園さん」は祇園祭のことを指している。7月半ばは祇園祭の真っ最中。大勢の人出という話から、宵山のころで、祭りもたけなわ。同じ「祇園さん」でも祭りに行くという、全く違う会話が成立している。さらにもうひとつ柏井さんの事例だとこんな「祇園さん」も出てくる。大晦日で夜遅くに出会った二人の会話である。

寒おすなぁ。どちらへ?
へえ。ちょっと祇園さんへ
お参りどすか、よいお年を
おおきに、そちらさんもどうぞよいお年を

この会話の祇園さんは八坂神社への「をけら参り」を指している。大晦日で夜遅く、祇園さんの方へ行くと言えば八坂神社へのお参りである。年越しの行事に行くことが、「祇園さんへ」のひとことで相手に通じて、会話が成立する。

同じ「祇園さん」という言葉であっても、会話をした時期、相手の服装などによって、どの祇園へ何をしに行くか、目的まで察しなければならない。食事や祭り、年越し行事など、相手が何のために祇園へ行こうとしているのかを的確に判断した上で、良好な会話が成り立つのである。

逆に言えば「祇園さん」だけで相手が何を思い、何を言おうとしているのかを、的確に見抜く力がなければ会話が成立しない。「察する力」こそが京都人との会話に求められ、それが京都人の「いけず」と誤解される基になっているのではないか、というのが柏井さんの分析である。

「京都の人は、相手が何を思って、何を言おうとしているのかを見抜く力を、子どものころから身につける、いわば訓練のようなしつけを受けます。そしてその中には、本音を包み隠す術もあって、なかなか厄介です」と新刊書「ほんとうの京都」で解説してくれた。

京都人の高い非言語コミュニケーション力

確かにこうした京都ならではの独特の会話が通じないと、疎外された気分になる。祇園に料理屋がたくさんあり、祭りの中心会場で、八坂神社が祇園方面にあると知らなければ、「祇園へ」だけでは会話が全く成立しない。「いけず」と誤解されるのも無理はないだろう。最初から「祇園の料理屋へ」とか、「祇園祭りの宵山へ」とはっきり言ってほしい。

逆に「祇園へ」だけで会話を成立させてしまう、共通認識があってこその京都人なのだろう。他の地域にない、言葉に隠された想像力を発揮できる実力に、京都らしさがある。子どものころから、親からそんなしつけをされていたら、適わない。相手の表情や言葉から、本音を引き出す能力は、朝廷や幕府など主が変わっても、したたかに生き抜いてきた京都人の知恵なのかもしれない。

この想像を飛ばすという、貴重な体験を得たことがある。DIME2.3月号の「玉川徹から働き盛りの君たちへ」では、京都の老舗料亭・菊乃井の主人村田吉弘さんと玉川徹さんとの対談が掲載されている。取材時に村田さんは「料亭はリビングミュージアム」だとして、室内に展示されている国宝級の貴重な美術作品を、惜しげもなく紹介してくれた。

食器も魯山人など一流の作家の作品を使っていると言う。しかし、その器に描かれているのは、さりげない菊の花びらや、モミジの赤だけで、決して大輪の菊やモミジの大木ではなかった。「大輪の菊の花だと、あっ、すごいね、で終わっちゃう。お椀を開けた裏に花びらがスッとあるだけで、菊やモミジを感じて秋の冷たい空気まで想像できる。それが日本人」と、村田さんは言い切ったのである。

想像力と察する力に触れた出来事だったが、こうした想像力が理解されないと「いけず」と感じられるのだろう。京都人の高い非言語コミュニケーション力や、相手への配慮に、学ぶべき部分は多かった。京都人の想像力は、きっとビジネスの世界でも役に立つはず。

文/柿川鮎子

Author
明治大学政経学部卒業後、経済系新聞社で自動車、ISOなどの担当記者に。退社後5年間、動物病院に勤務した経験から、飼い主さんの気持ちに寄り添ったペット記事を執筆中。 得意なテーマは 1)生産性向上などのマネジメント関連と、 2)犬猫やエキゾチックを含 めた飼育動物全般、の2つ。 作家として小説「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「極楽お不妊物語」(河出書房新社)を発刊。ノンフィクションでは小学館刊「全国から飼い 主が駆けつける!犬の名医さん100人データブック」、文春新書「動物病院119番」、ほか多数。趣味は野鳥観察、現在、2羽のオカメインコを溺愛中。

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