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香り系焼酎の火付け役! 業界の常識を覆した国分酒造の挑戦

2026.02.26

芋焼酎といえば「独特なクセ」や「濃厚な味わい」という印象が強い。しかし昨今、果物のような香りが感じられる〝香り系焼酎〟が市場で存在感を強めている。

そのパイオニア的存在こそ、国分酒造が手がける『flamingo orange』だ。蔵元が語る、ヒットの裏にあった挑戦とは。

かつての欠点「イモ傷み臭」が、最大の武器に

サツマイモを主原料とする芋焼酎は、原料由来の芳醇な香りが特徴で、多くの焼酎ファンを魅了してきた。一方でそのクセのある香りは、若い世代や女性にはなかなか親しまれてこなかった。

従来のイメージを覆す存在として、クリアな飲み口のなかに果物様の華やかな香りが感じられる〝香り系焼酎〟が話題を集めている。その火付け役とされているのが、国分酒造が2018年から販売している『flamingo orange』だ。

国分酒造は1970年に発足した10社合同の加治木酒造協業組合からスタート。1986年に6社合同の国分酒造協業組合を設立し、現在の工場を建設した。その後、2015年4月の組織変更を経て国分酒造株式会社となった。

飲んだ瞬間に広がるのは、サツマイモとは思えないライチや柑橘のような香り。実はこうした香りは、業界内ではもともと『イモ傷み臭』というオフフレーバー(欠点臭)と見なされてきたと、国分酒造代表取締役の笹山護さんは語る。

「その名の通り、原料芋が傷んだ際に発生する香りで、低品質な焼酎の指標として否定的な見方をされ続けてきました。しかし我々は貯蔵方法を工夫し、原料芋の品質を落とさずにこの香りを高める手法を確立しました」

2013年には香り系の先駆けとなる芋焼酎『安田』を発売。業界内の評判は芳しくなかったものの、お客様からは好評だった。

「『こんな焼酎は初めてだ』というお言葉を頂きました。この経験が『flamingo orange』の原点といえますね」

3つの挑戦が生んだ嬉しい誤算

『flamingo orange』ヒットの背景には、大きく3つのカギがあった。1つ目は「減圧蒸留」への挑戦だ。

「以前より杜氏から減圧蒸留を試したいと相談を受けていました。『粘度が高く濃厚な芋麹のもろみなら、減圧蒸留でまだ見ぬ新しい香りを引き出せるのではないか』と。思いもよらないようなことを考え挑戦する、というのがうちの杜氏のモットーなんです」

蒸留工程を見守る杜氏の安田宣久さん。通常は米麹を用いるが、同社は『flamingo orange』など多くで芋麹を採用。米麹より粘度が高く、蒸留時に焦げ付くリスクがある。

芋焼酎では、原料の個性を引き出すために常圧蒸留を用いるのが一般的。一方、気圧を下げて低温で蒸留する減圧蒸留は、クセのないクリアな酒質になる反面、サツマイモ本来の特徴が出しにくいとされてきた。

「2016年に試作してみたのですが、出来上がったのはやはりただの飲みやすい焼酎。販売店からの反響も薄いまま終わってしまったのです。正直、この段階では『flamingo orange』のような焼酎を造ることは意識していませんでした」

転機となったのは、第2の要素である新たな「酵母」との出会いだった。

「東京の飲食店でオススメされた他社の焼酎から、濃厚なバナナの香りがしたんです。聞けばワイン用の酵母を使っているという。こんな香りが芋焼酎から出せるのかと衝撃を受けました」

酵母でこれほど香りが変わるのか──新たなヒントを得た笹山さんは、鹿児島県工業技術センターで開発されたばかりの焼酎用酵母『鹿児島香り酵母1号』の使用を決意する。そして最後のピースが、原料芋の『サツママサリ』だった。

「ちょうど蔵全体で、原料芋を主流の『コガネセンガン』から『サツママサリ』へ移行した時期だったのですが、この品種が持つ果実香の強さがカギになりました」

いざ仕込むと、もろみの段階からこれまでにない濃厚な果実香が漂ってきた。

「果実系の香りは、低温で蒸留する減圧蒸留のほうがより引き立ちます。もろみの時点でこれだけ香っていれば、きっといい焼酎になる。そう直感しました。バナナ系の香りを狙っていたんですが、ライチのような華やかな香りになったのは、嬉しい誤算でしたね」

※:製造における最高責任者。2017年に「現代の名工」を受賞した安田宣久さんが担っている。

ヒットを後押しした、炭酸割り文化の浸透

こうして2018年に発売された『flamingo orange』は瞬く間に話題となり、毎年即完売するほどのヒット商品となった。

「ハイボール人気の流れを汲む形で、炭酸割り文化が一気に広まったのが大きいと感じています。減圧蒸留由来のスッキリとした味わい、そしてフルーティな香りはまさに炭酸割りにピッタリです」

商品名とデザインは東京の酒販店『伊勢五本店』が考案。香りの印象であるオレンジと、ハイビスカスの品種『オレンジフラミンゴ』から着想を得ており、ラベルデザインも花弁と鳥をモチーフに仕上げている。

業界内でも〝香り系焼酎〟はトレンドに。風向きは大きく変わってきている。

「一昔前まで『焼酎はお湯割りやロックでたしなむもの』という価値観をどの酒蔵も持っていました。今では、多くの焼酎メーカーが炭酸割りを念頭に置いた酒造りをするようになってきています」

国分酒造でもミントのような香りの『coolmint green』や濃厚なバナナ様の香りが楽しめる『sunny cream』など、製法を変えた多様な商品を展開している。現在、紅茶やバラのような香りが特徴の品種『ハマコマチ』を使った焼酎にも挑戦しており、2025年には『安田ハマコマチ』として初の製品化を実現した。

「今の国分酒造があるのは、杜氏を筆頭に試行錯誤を繰り返し、新しいことに挑み続けてきた結果です。これからもその気持ちを忘れずに、お客様に喜ばれる商品を作りたい」

常識にとらわれずに挑戦する姿勢こそが、焼酎の新たな可能性を広げる翼となるのだろう。

取材・文/桑元康平(すいのこ)

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