正月料理の主役である「餅」。
お雑煮やおしるこなど、冬の食卓に欠かせない存在として長く親しまれてきた一方、食の多様化とともに「餅文化は薄れつつある」「若者が餅を食べなくなった」と語られることも少なくなかった。
しかし、近年その見方に変化が生まれている。メーカー各社による継続的な取り組みが実を結び、若年層の間で餅を口にする機会が再び増え始めているのだ。
今回は、業界シェアNo.1を誇る「サトウの切り餅」を展開するサトウ食品の取り組みから、時代に即した餅ブランドの現在地を読み解く。
餅を「日常食」へ。製品とSNSがつくる新しい距離感
サトウ食品が近年力を入れているのが、Instagramを中心としたSNSでのアレンジレシピ発信だ。「焼いて、醤油をつける」という定番の食べ方にとどまらず、餅をもっと自由に、気軽に使える食材として再定義している。
その背景には、製品そのものの進化がある。スティック状の「サトウの切り餅いっぽん」や、ミニサイズの「サトウの切り餅シングルパックミニ」など、従来の切り餅とは異なる形状・サイズの商品を展開。調理や食べ切りやすさを重視し、タイパを意識した現代の生活リズムに寄り添っている。
こうした商品を軸に提案されたのが、味の素「丸鶏がらスープ™」と組んだ台湾風スープ「鶏餅湯(ジーモアチータン)」だ。ミニサイズの切り餅を使い、アジア系スープという文脈で餅を位置づけたこの施策は、「ちょうどいい」「わるくない」餅の楽しみ方として、若年層の感覚と噛み合った。
さらに、スティック餅を使った「手巻き餅」のプロモーションも展開。お笑いコンビ・レインボーを起用したCMでは、焼肉をサンチュで巻くように餅を包むスタイルや、ハム・チーズと合わせる軽食的な提案を提示した。
サトウの切り餅いっぽん「手巻き餅」クレープ風のレモンバターシュガー餅など、和・洋・中に縛られない発想が、餅の使いどころを広げている。
データが示す、20代の餅需要の変化
「若者の餅離れ」という言葉が定着しつつあったが、実際の数字は少しずつ様相を変えている。全国餅工業協同組合のデータによると、一世帯あたりの餅購入数量は、2022年から2024年にかけて20代で増加傾向に転じている。
この動きをどう捉えているのか。サトウ食品 経営企画部の浅川梨乃氏は、「餅は冬の行事食というイメージが強く、日常の選択肢としては意識されにくかった。だからこそ、特別なものではなく、普段の食事の中で自然に選ばれる存在として提案してきた」と語る。
特に重視しているのが「タイパ」だ。ミニサイズの切り餅を使えば、電子レンジで数分。実は餅は、想像以上に手軽な食材でもある。その事実を、SNSやポップアップイベントを通じて丁寧に伝えてきた。
こうした再認識が、若年層の生活感覚と合致し、需要の向上につながっている。
米不足が後押しする「第2の主食」という位置づけ
もう一つ、餅を取り巻く環境として見逃せないのが、米をめぐる社会情勢だ。価格上昇や供給不安が続く中で、消費者の間には「主食をどう選ぶか」という意識の変化が生まれている。
その中で浮かび上がってきたのが、「同じ米由来で、調理が簡単」という餅の存在だ。サトウ食品はこの流れを捉え、餅を“ごはんの代替”ではなく、“もう一つの主食の選択肢”として位置づけ、通年で楽しめる提案を強化している。
2026年に向けて広がる、新しい餅文化
2026年に向け、サトウ食品は体験型のPRにも引き続き注力する構えだ。SNSでの情報発信に加え、実際に食べて実感できるリアルな接点を重ねることで、餅の魅力をより立体的に伝えていく。
「餅は、使い方次第でいくらでも表情が変わる食材だ」と浅川氏は話す。餅は今も、多くの家庭で正月だけの存在になりがちだ。しかし、若者世代が生み出した自由なアレンジが他の世代へと波及していけば、餅は再び日常の中に戻ってくる。
伝統食材が、静かに、しかし確実に形を変えながら、主食の一角として再定義されようとしている。
取材・文/石原亜香利
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