近年、顧客が事業者に対して不当な要求などを行う「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が社会問題となっています。
2026年中に施行される法改正により、各事業者にはカスハラ対策が義務付けられることとなりました。事業者においては、正当なクレームには適切に対応しつつ、カスハラに対しては毅然と拒否する姿勢が求められます。
消費者の側でも、事業者に対してクレームを入れる際には、どこからがカスハラに当たるのかを意識しつつ、不当な言動をしないように努めてください。
1. カスハラ(カスタマーハラスメント)とは?
2026年中に施行が予定されている改正労働施策総合推進法では、下記(1)~(3)を満たす言動がカスハラ(カスタマーハラスメント)に当たるものとされています。
(1)職場において行われる顧客等の言動であること
※顧客等:顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者
(2)労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
(3)労働者の就業環境が害されること
たとえば店舗や施設の利用者は、提供された食品や商品、サービスなどの不備について、運営者にクレームを入れるケースがあります。正当な理由があり、かつ常識的な範囲内の方法で行われるクレームは認められるべきです。
しかし、根拠のない理不尽なクレームや、従業員に対する過度な要求を伴うクレームは不当であり、事業者は従うべきではありません。このようなクレームはカスハラに当たります。
事業者には、カスハラから従業員を守るための取り組みを行うことが求められます。他方で消費者においては、店舗や施設などを利用するに当たり、カスハラに当たる不当な言動をしないように心掛けなければなりません。
2. カスハラのボーダーラインは?正当なクレームと区別するための判断基準
一般的にカスハラに当たるかどうかは、以下の2つの基準によって判断します。
(1)要求する内容は妥当か
(2)要求を実現するための手段・態様は、社会通念に照らして相当か
2-1. 要求する内容は妥当か
顧客等のクレームが正当であると言えるためには、事業者に何らかの法的責任が生じていることが必要です。
たとえば、顧客等が購入した商品に欠陥があったときは、事業者は代替品を提供したり、場合によっては返金したりする法的な義務を負います。この場合に、顧客等が事業者に対して代替品の提供や返金を求めることは妥当です。
これに対して、商品に全く欠陥がないにもかかわらず、代替品の提供や返金を求めることは不当と言えます。顧客等の要求に法的な根拠がないからです。
根拠のない不当な内容のクレームを続けることは、カスハラに当たる可能性が高いと考えられます。
2-2. 要求を実現するための手段・態様は、社会通念に照らして相当か
顧客等の要求する内容が妥当であっても、その要求を実現するための手段・態様が不当であればカスハラに当たります。
たとえば、顧客等が購入した商品に欠陥があったときは、事業者の責任を追及するために必要な範囲内で、ある程度厳しい言葉を投げかけることもやむを得ないでしょう。
しかし、対応した従業員に対して暴力や罵倒を行ったり、土下座を要求したりする行為は、常識的な限度を明らかに超えています。
たとえ店舗や施設の側に落ち度があっても、是正対応などを求める言動が暴力的・威圧的なものであったり、従業員を不当に長時間拘束するものであったりする場合は、カスハラに当たる可能性が高いと理解しておきましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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