医師に対する死と終末期ケアに関する教育は不十分
医師は、あらゆる職業の中でもとりわけ「死」に直面する機会が多い。それは、人命を救い、人を助けることに人生を捧げる職業に伴う宿命だ。
しかし、現代の医学教育は、この避けられない課題に対して医師を十分に準備させていないようだ。最新のエビデンスレビューにおいて、医学部生が、人生の最終段階を迎える患者やその家族を支援する方法について学べる、エビデンスに基づいた教育はほとんど存在しないことが明らかになった。
米ワシントン州立大学人間発達学分野のRaven Weaver氏らによるこの研究結果は、「Academic Medicine」に12月3日掲載された。
研究グループは、この状況は、患者にとってだけでなく、将来医師になる学生自身にとっても不利益であると指摘している。Weaver氏は、「トレーニングは、医師が患者や家族の死に対する恐怖を和らげるのに役立つが、同時に医師自身の恐怖も軽減する。医学部生は、実際に現場で働き始めるまで、この問題について十分な経験を積むことができない場合が多い。患者と直接向き合う前に、教室での教育によってこの課題について考えるきっかけを与えることができる可能性がある」とニュースリリースで語っている。
Weaver氏らは今回、PubMedとEMBASEで2010年1月から2025年4月の間に発表された、医学部における死や終末期ケア教育についての論文を検索し、最終的に43件の研究を対象にスコーピングレビューを行った。
その結果、医学部における死や終末期ケアの教育方法には大きなばらつきのあることが明らかになった。その中には、死亡診断書の書き方、終末期医療の定義、事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)などの基本事項の説明にとどまる場合もあった。一方で、1週間のホスピス実習や、3年次に必修の緩和ケア実習など、より実践的な教育を行っているカリキュラムも存在した。しかし研究グループは、「米国の医学部において、死や終末期ケアに関する一貫したエビデンスに基づく教育アプローチは存在しない」と結論付けている。また、たとえこうした教育が行われている場合でも、実施期間が短く、長期的な影響はほとんど期待できないと指摘している。
論文の筆頭著者であり、米ワシントン州立大学の卒業生であるLogan Patterson氏は、不十分な教育が将来の医師をいかに無防備な状態にするかを、身をもって経験したという。同氏は、「救急外来で1回でも当直をすれば、終末期について十分に向き合ってこなかった患者に出会うだろう。慢性疾患の患者を、本人が望んでいると思って家族が病院に連れて来たものの、実際には本人は入院を望んでいなかったというような場面も何度か目にした。医師に対するより良い教育があれば、こうした混乱を、病院で時間との戦いになる前に防げるはずだ」と話している。
Weaver氏は、医学部在学中または臨床現場で追加研修を行うことで、望まれない治療を減らし、家族の不必要な医療費負担を回避できる可能性があるとの見方を示す。同氏は、「研究によると、医療費が最も高くなるのは人生の最後の1年で、その多くが本人の望まない治療だ。医師は、当然のことながら、患者の命を救いたいと思う。しかし、患者の生活の質(QOL)を十分に考慮できていないことが多いのだ」と語る。
さらに、このような教育は、患者や家族とともにこの避けられない人生の最終段階を迎える際の、医師自身の精神的負担を軽減する助けにもなるとPatterson氏は言う。同氏は、「ほぼ全ての医師が、死や終末期ケアに関する教育が不足していると感じているだろう。医師が患者とこの話題について話すことは避けられない。キャリアの早い段階で少しでも死や終末期ケアの知識を得ておくことは、医師だけでなく患者にとっても必ず役立つはずだ」と話している。(HealthDay News 2026年1月16日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/academicmedicine/advance-article/doi/10.1093/acamed/wvaf003/8362000
構成/DIME編集部
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