株の取引で損失が出た場合、損益通算をすると課税対象になる利益の額を抑えることができ、節税できます。本記事では、損益通算の仕組みから損失を繰り越せる繰越控除、確定申告の方法までを解説します。
目次
株の取引をしている方、「利益が出た銘柄もあるけれど、トータルでは損をしてしまった」「複数の証券会社を使っていて、片方だけ赤字になった」ということはありませんか?
株の損失は、そのままにしておくとマイナスとなって終わりますが、損益通算をすれば税金を安くできる可能性があります。
この記事では、損益通算の仕組みから、損を翌年以降に持ち越せる繰越控除、確定申告の方法から注意点まで、分かりやすく解説します。
株の損失が節税に?損益通算の仕組みとポイント
損益通算は、株の利益と損失をまとめて計算し、課税対象となる利益を少なくする制度です。まずは、何ができるのか、いつまで・どこまでが対象なのかを整理しましょう。
■損益通算とは株の利益と損失を相殺する仕組み
損益通算とは、かんたんに言うと1年間の株の利益と損失をまとめて算出し、税金を計算し直すことです。「損益通算」と聞くと、馴染みがないため難しく感じるかもしれませんが、プラスとマイナスをまとめて、最終的な金額に対して税金をかけます。つまり、「相殺」という認識でOKです。
たとえば、同じ年に
A社で +30万円(利益)
B社で −10万円(損失)
が出た場合、損益通算ができれば、課税のベースはAとBの金額を合計した20万円 になるイメージです。
■損益通算の対象となる損失の種類
「何でも相殺できる」わけではなく、対象にはルールがあります。上場株式等の譲渡で出た損失は、確定申告をすることで上場株式等の利益や、条件を満たす配当等(申告分離課税を選択したもの等)と損益通算できます。
ただし、上場株式等でも相対取引など一部の取引形態では対象外になることがあります。
■損益通算できるのは同年の利益と損失
損益通算で相殺できるのは、基本的に同じ年内(1/1〜12/31)に生じた利益と損失です。「去年の損」と「今年の利益」をいきなり相殺することはできません。ただし、去年の損を翌年以降に持ち越して相殺する方法があります。これが次にご紹介する「繰越控除」です。
損益通算すれば翌年以降の節税にも?繰越控除を押さえる
その年の損失が大きい場合、「プラスと相殺しても結局マイナスだから、損益通算する意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、マイナスしか残らなくても、その損失を“将来の利益”から差し引ける可能性があるとしたら…?損益通算する価値はあるんじゃないでしょうか。
ここでは、損益通算しておけば損失を翌年以降に繰り越せる「繰越控除」について解説します。
■繰越控除は譲渡損失を3年繰り越せる仕組み
損益通算をしても消しきれなかった損失は、確定申告をすることで翌年以降に繰り越して再度利益と相殺することができます。これは繰越控除といわれる制度で、翌年から最大3年間損失を繰り越せます。
■繰越控除の具体例
たとえば、2025年に100万円の大きな損失が出たとしましょう。
2025年:100万円の損失
2026年(繰越1年目):40万円の利益 → 前年の損失(100万円)と相殺して税金は0円
2027年(繰越2年目):30万円の利益 → 残った損失(60万円)と相殺して税金は0円
2028年(繰越3年目):20万円の利益 → 残った損失(30万円)と相殺して税金は0円
このように、過去の損を未来の利益とぶつけることで、数年間にわたって節税が可能です。なお、上記の例では最終的に損失が10万円残っていますが、繰越期間は3年間のため2029年には損失を繰り越せません。
仮に、繰越3年目である2028年に20万円の損失が生じた場合、それまでに繰り越してきた損失30万円はカウントできなくなりますが、2029年を新たな繰越1年目として、2028年に生じた損失20万円を繰り越していく形になります。
■繰越控除の注意点
繰越控除はメリットの大きい制度ですが、注意が必要な点もあります。下記の二点を押さえておきましょう。
損益通算後に取引がない年でも確定申告が必要
繰越控除を続けて使うには、損失が出た年に申告するだけでなく、その後の年も連続して確定申告書を提出する必要があります。取引がなかった年に申告をしないままだと繰り越しが途絶えてしまうため、注意しましょう。
扶養・配偶者控除に影響が出る場合がある
「源泉徴収あり」の特定口座で完結していれば、株の利益は扶養控除の判定基準に含まれません。しかし、損益通算のために確定申告をすると、その利益が所得としてカウントされるため、所得の計算結果が変わります。その結果、合計所得金額が配偶者控除のラインを超えてしまうケースがあるため、扶養の判定や控除(配偶者控除等)に影響が出る可能性があります。「戻ってくる税金」と「増える負担」のどちらが大きいか、慎重な判断が必要です。
損益通算するための確定申告のやり方
損益通算は、自動的には適用されません。そのため、自身で確定申告する必要があります。
■確定申告の方法
確定申告の方法は、主に次の3つです。
- e-Tax(スマホ・PC)で行う
スマホやPCからe-Taxにアクセスし、必要事項を入力して送信します。メンテナンス時間を除いて24時間いつでも送信でき、待ち時間もないのが最大のメリットです。マイナンバーカードを使って確定申告を行う場合は、事前に対応スマホやマイナポータルアプリ等の準備をしておきましょう。
- 郵送で送付する
作成した申告書と必要書類を管轄の税務署へ郵送します。申告期限の当日消印有効なので、期限近くに投函する場合は注意が必要。郵便局の窓口で手続きをし、期限内の消印を押してもらったかを確認しましょう。
- 税務署の窓口で作成する
必要書類を持参し、税務署の窓口や確定申告会場で申告書を作成します。職員に相談しながら記入できるので書類の書き損じや「分からない!」を減らせますが、期間中は非常に混雑することが難点です。当日に出向いても手続きは可能ですが、待ち時間が長いことが予想されるため時間に余裕をもって行きましょう。国税庁はLINEによるオンライン事前予約を推奨しています。
■確定申告に必要な書類
株の利益に関する確定申告には、以下の書類を提出します。
- 申告書第一表
- 申告書第二表
- 申告書第三表(分離課税用)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 令和○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
また、申告書作成のためには次の書類も準備しておきましょう。
- マイナンバーカード
- 特定口座年間取引報告書など株取引の金額が分かるもの
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
なお、e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードに関する2種類のパスワードが必要です。スムーズな申告のため、事前にパスワードを確認しておくと安心です。電子証明書の有効期限切れにも注意しましょう。
- 利用者証明用電子証明書(数字4桁)
- 署名用電子証明書(英数字6~16文字)
株に関する損益通算でよくある質問

最後に、損益通算まわりで聞かれやすい3点をQ&Aでまとめます。初めての損益通算で分からないことがある方は参考にしてくださいね。
■特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告は必要?
「源泉徴収あり」の特定口座といえば、確定申告が不要で手間がかからないことが最大のメリット。しかし、損益通算・繰越控除を使いたい場合は、確定申告が必要になります。「源泉徴収ありの特定口座だから、何もしなくても自動で適用になるだろう…」と思っていた方は要注意!必ず期限内に確定申告を行いましょう。
■NISA口座の損失も損益通算の対象になる?
NISA口座は、少額投資非課税制度が適用される口座です。利益も損失もないものとされるため、損益通算や繰越控除はできません。また、確定申告も不要となっています。
■住民税の還付はいつ?
所得税の還付金は申告から1〜2ヶ月ほどで口座に振り込まれます。一方で、住民税の反映タイミングは自治体や状況で差があります。自治体により異なりますが確定申告の情報が自治体に連携され、翌年度の住民税(納税通知)に反映されていく流れが一般的です。翌年6月以降の住民税が安くなっていることで確認できます。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせいただくことをおすすめします。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。







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