2022年1月から改正法が施行された電子帳簿保存法。2026年の変更点はあるか?電子帳簿保存をやっていない場合のペナルティは?など、最新の情報と今からできる対策をまとめた。
目次
法人や個人事業主にとっては見逃せないトピックスの一つである電子帳簿保存法。2026年現在の状況はどうなっているのだろうか。
本記事では、電子帳簿保存法の現状と、まだ電子保存に対応していない場合のリスク、今から始められる対策について解説する。
電子帳簿保存法とは?2022年から2026年への流れ
電子帳簿保存法は、適正な納税を確保しつつ、帳簿書類の保存に係る負担を軽減することを目的とした法律だ。まずは基本的な内容と2026年現在の状況を見てみよう。
■電子帳簿保存法の基本と対象者
電子帳簿保存法は1998年に制定された。2022年1月には大幅な改正がおこなわれ、電子取引書類の電子データ保存が義務化。ただし、2023年12月末までは宥恕措置(ゆうじょそち)として紙での保存も認められており、本格的な運用は2024年1月からとなっている。
電子帳簿保存法は、原則としてすべての法人・個人事業主を対象とする。具体的には所得税法や法人税法に基づいて帳簿書類の保存義務を負う事業者、すなわち確定申告を行っている事業者であれば、規模の大小を問わず対応が求められることになる。
■2024年義務化と2026年の現状は?
電子帳簿保存法は2022年以降も段階的に改正されている。2023年12月末までの宥恕措置が終了したあと、2024年1月1日からは電子取引データの電子保存の義務化が本格的に適用開始となった。
ただし、2023年(令和5年)度の税制改正により、2024年1月1日以降「相当の理由」がある場合は、以下の猶予措置が認められている。
【電子帳簿保存法の猶予措置】
- 電子取引データの電子保存そのものは必須
- 改ざん防止・検索機能などの保存要件は免除され、電子取引データを単に保存しておくことができる
【猶予措置が適用される「相当の理由」とは?】
- 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
- 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
猶予措置が適用される「相当の理由」には、人手不足や資金不足、システム整備が間に合わない等の事情が含まれる。この猶予措置には期限の定めがないため、2026年現在も有効だ。しかし、これはあくまで「対応が間に合わない場合の救済措置」であり、「やらなくてよい期間」ではない。できるだけ早期に原則的な保存方法への移行が推奨されている。
また、猶予措置を利用する場合でも、電子取引データそのものは電子保存をしておく必要がある。
※参考:電子帳簿保存法のポイント|国税庁
■電子帳簿保存法はいつの取引からが対象?
電子取引データの保存義務の対象となるのは、2024年1月1日以降に行われた電子取引だ。たとえば、2024年1月15日にメールで受領した請求書PDFは電子保存の対象となる。一方、2023年12月31日以前の電子取引については宥恕期間中のため、紙に印刷しての保存が可能だ。
2026年に押さえるべき電子取引データの保存要件
それでは、電子取引データの具体的な保存方法について見ていこう。
■電子保存が必要な書類と取引の種類
電子取引データの保存義務が生じるのは、電子的に授受した取引情報だ。具体的には以下のようなケースが該当する。
- 電子メールで受領・送付した請求書、領収書、契約書、注文書、見積書など(例:PDF形式の請求書をメールで受け取った場合、WordやExcelファイルで注文書を送付した場合)
- インターネット上での購入明細(例:Amazon・楽天・アスクルなどのECサイトで購入した際のWeb明細、クラウドサービスの利用明細・請求書※PDF形式でダウンロードするもの)
- EDI(電子データ交換)取引
- ペーパーレス化されたFAX受信データ
- クレジットカードや交通系ICカードの利用明細(経費計上等に用いる場合のWeb明細)
■電子帳簿保存法の原則的な保存要件(真実性と可視性の確保)
電子帳簿保存法では、電子取引データの保存について「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件が定められている。
真実性の確保(改ざん防止措置)
電子データの信頼性を担保するための措置として、以下のいずれか1つの措置を講じる必要がある。
- タイムスタンプが付与されたデータを受領する
- 受領後すみやかに(おおむね7営業日以内)タイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残るシステム等で授受・保存する
- 改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用・備え付ける
このうち、個人や中小企業が導入しやすいのは、4.の事務処理規程だ。国税庁がサンプルを公開しており、これをダウンロードして自社の実態に合わせて運用・備え付けることで要件を満たせる。
可視性の確保
可視性の確保とは、保存した電子データを必要なときにすぐに確認できる状態にしておくことを指す。これには「見読性」「検索機能」の2つの要素がある。
- 見読性……税務調査の際に電子データの内容を画面で確認したり、必要に応じて印刷したりできる環境を整えておくこと。通常のパソコンとプリンタがあればOK
- 検索機能……「日付・金額・取引先」の3つの要素で検索できる。さらに、範囲指定検索(例:2024年4月1日から6月30日までの取引)や、2つ以上の項目を組み合わせた検索(例:取引先「○○商事」かつ金額10万円以上)ができることが求められる
検索要件の特例
基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査時にデータのダウンロード要請に応じられる場合、範囲指定検索と組合せ検索が不要になる。
電子帳簿保存法における請求書等の保管期間と保管方法
それでは、請求書等の保管期間や具体的な保管方法のアイデアを見てみよう。
■保管期間の基本ルール
電子取引データを含む帳簿書類の保存期間は、法人の場合、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金の繰越控除を受ける場合は10年間)となる。
個人事業主の場合、青色申告者は7年間、白色申告者は5年間(一部の書類は7年間)だ。
■請求書等の効率的な保管方法
電子取引データを効率よく保管し、検索要件を満たすには、いくつかの方法がある。
電子取引データの保管方法①:索引簿(Excel等)での管理
Excelなどの表計算ソフトで索引簿を作成する方法。連番、日付、金額、取引先、備考(ファイル名)を記載した一覧表を作成し、電子取引データと紐づければ、特別なソフトを購入する必要がない。検索・並べ替え機能を使えば、日付や金額での検索も容易。
電子取引データの保管方法②:規則的なファイル名による管理
ファイル名を統一ルールで命名する方法。例えば、「日付金額取引先名」の順で表記し(例:20260127_110000_株式会社○○商事.pdf)特定のフォルダに集約する。フォルダ内でファイル名による並べ替えや、Windowsエクスプローラーの検索機能を使って目的のデータを探すことができ、索引簿の作成が不要になる。
電子取引データの保管方法③:専用システムの導入
取引量が多い企業や、より効率的な管理を目指す場合は、クラウド会計ソフトや文書管理システムの導入が有効。電子取引データの自動取込、検索機能、タイムスタンプの自動付与、会計システムとの連携など多彩な機能が利用できる。
■紙の請求書等と併用する際の注意点
紙で受領した請求書等は紙のまま保存すればよく、必ずしもスキャナ保存する必要はない(スキャナ保存は任意)。
やってないとどうなる?電子帳簿保存未対応のリスクと対策

それでは、電子帳簿保存法に適切に対応していない場合はどのようなリスクがあるのかを見てみよう。
■違反した場合に想定される3つのリスク
電子帳簿保存法に適切に対応していない場合、青色申告の承認取消しや重加算税の加重などのリスクが想定される。
- 青色申告の承認取消しの可能性……最大65万円の青色申告特別控除を失うほか、欠損金の繰越控除ができなくなる。(ただし、国税庁は「取引が正しく記帳され、書面等で内容が確認できる場合は、直ちに取消しとはならない」との見解。)
- 重加算税の加重措置……電子データの改ざんや隠蔽など悪質な仮装・隠蔽行為が認められた場合、通常の重加算税35%に10%が加重されて45%となる。(適正に記帳・保存し、電子データを改ざんしていない場合は、適用される可能性は少ない。)
■今すぐ始めるべき対策(3ステップ)
電子帳簿保存法への対応は、以下の3ステップで段階的に進めていくと良い。
ステップ1:現状把握
自社でどのような電子取引が発生しているかを洗い出す。
- 請求書、領収書、契約書などの授受方法の確認
- メール、EDI、クラウドサービスなど取引形態をリスト化
- 取引先ごとに整理する
ステップ2:保存方法の決定
猶予措置を利用するか、原則対応するかを判断。猶予措置の場合は、データ保存+ダウンロード対応+書面提示対応を整える。原則対応の場合は、真実性・可視性の確保措置を選択する。小規模事業者であれば、まず猶予措置でスタートし、段階的に原則対応へ移行する方法も現実的。
ステップ3:保存ルール・社内規程の整備
電子取引データの保存場所、ファイルの命名規則、管理責任者などを定める。事務処理規程を策定する場合は、国税庁が公式サイトで公開しているサンプルを活用すると効率的。社内規定を作成したら従業員への周知・教育もおこなう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。







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