寒い時期は暖かい温泉で身体も心も温めたい。でも、どこにどんな温泉があるの?私に合った温泉はどんな温泉?そんな疑問に答えてくれる、温泉専門サイトYuumies(ユーミーズ)のトライアル版がスタートした。温泉好きの、温泉好きによる、温泉好きのための、“お湯“から探せる温泉検索サービスで、既存の温泉検索サービスとは違う視点で温泉の魅力を再発見できるように、設計されている。
サイトを運営している井出辰之助さんはinfusiondesign 代表でイベントプロデューサー兼温泉プロデューサーとして活躍中。全国約1500湯以上を巡り、2019年から“YAMAP”のウェブマガジンで温泉コラムなどを連載している。“湯口は宇宙”という井出さんに、サイトの上手な使い方や、自分だけの最高の温泉の見つけ方を教えてもらおう。
温泉は「最も地球と交わえる場所」
――はじめまして!井出さん。温泉プロデューサーとして全国約1500湯もの温泉を巡ってきたということですが、温泉地のご出身ですか?
井出さん 出身は東京都です。昨年は新規だけで約210湯。合計約300湯に入っています。
――ほぼ毎日、温泉に入っている換算ですが、温泉の魅力はどこにありますか?
井出さん まずは、地球を肌で感じ、最も地球と交われる場所だ、ということです。もちろん、川や海も同じだと思うのですが、温泉はその土地の地層やいろんな偶然が重なって生まれるものです。そうした地球のはるかな時間と奇跡を、人の身体を通じてセッションできる、そんな意味合いからも、温泉はとても魅力的です。
――普段は温泉以外に、野外音楽フェスの企画プロデュースなどでも活躍されていますね。
井出さん 2019年5月からWOWOWと共に静岡県富士市で野外音楽フェス「FUJI&SUN」を主催しています。昨年から自身の趣味でもある人力チャレンジ応援部エリアにて、温泉コンテンツをつくり、温泉トークショーを開催しました。今年は、6月6,7日に開催します。
また、4月にはピーターバラカンさんが昨年まで恵比寿のガーデンホールで行っていた「LIVE MAGIC」という音楽イベントを、今年から温泉トピックでやりたいということでオファーを請け、毎年スキーと温泉旅で訪れている山形県蔵王温泉スキー場にある「JURIN」という温泉宿で「ONSEN MAGIC」として新たに開催します。内容はピーターバラカンさんがセレクトする音楽ライブ・とトークショーです。
温泉を常に最適な温度に管理し、整える、いわば湯の番人ことを「湯守」と言いますが、この“温泉のスペシャリスト”といえる深山荘高見屋の湯守の吉岡昌次氏をゲストに迎え、私とホストのピーターバラカン氏による3名で、蔵王温泉の泉質や効能、湯守の仕事内容や苦労話など、湯守の視点中心に蔵王温泉を深堀していきます。さらに温泉と“食”も加えて、蔵王名産の“いがもち”を作るワークショップを行います。(チケットは再販売を含めて即完売でした)
――これまで全国約1500湯もの温泉を巡ってきた井出さんですが、一番好きな温泉とその理由を教えてください。
井出さん たくさんありすぎますが、今、ぱっと浮かぶものと言えば自然と地球の液体を最も感じられる場所という意味でも青森県の奥奥八九郎温泉という野湯です。
Yuumiesは香り、色、効能など五感で楽しむ温泉を提案
――Yuumies(ユーミーズ)がローンチしましたが、企画の動機などについて教えてください。
井出さん 25歳くらいまでは海外生活が長くて温泉が嫌いだったのですが、日本に帰国して、移転前の静岡県の赤石温泉に出会って、ライフチェンジングしました。そこからそれまでの趣味であり仕事である音楽への熱が冷めるほどに、温泉にのめりこんでいきました。
のめりこむうちに、温泉の現状を知ることになりました。大好きな温泉が近年老朽化し、さらに後継ぎ不足や外資系ホテルの進出など、様々な要因が重なって、最盛期に3万施設あった温泉施設は、先日数えてみたら2万2000施設まで減ってしまっていました。こうした状況に、日本の温泉の危機を感じています。
今、ネットで「温泉」と検索すると楽天やじゃらんなどの宿泊施設が先に紹介され、温泉は旅のサブコンテンツになってしまっています。本来、温泉は湯治が始まりで、入ると効能があったり、共同浴場でのもらい湯文化などしっかりしたカルチャーがあります。それを海外の方、インバウンドに向けても今一度日本の誇れる文化を見つめなおし磨き上げ、広めたいと考えています。
それにはまず温泉とは何かをYuumiesを通じて理解していただき、香り、色、効能など五感で楽しんでもらいたいですね。地球と繋がって現代の疲れをデトックスしてもらいたいです。
――もう少し詳しく、井出さんの考える日本の温泉文化について教えてください。
井出さん 日本で最も古い温泉は道後温泉で、今から3000年以上前から使われているほか、湯の峰温泉が開湯1800年など1000年以上の歴史がある温泉は全国各地にゴロゴロあります。戦国武将・武田信玄が愛用していた湯治場や、坂本龍馬が新婚旅行で行った温泉が有名ですが、日本の観光の歴史は温泉とともに広がったと言ってもよいでしょう。
その温泉を改めて日本の「文化」として見直すべきだと思うのです。温泉地の減少に歯止めをかける意味合いと同時に、温泉をちゃんと見直して、日本の文化として、もう一度見つめなおして磨き上げ、世界に誇れる文化として広げていきたいのです。
温泉はもともと湯治など傷や病気を癒す目的で利用されました。放射能泉ががんに効いたり、酸性の温泉は傷によく効くなど、確かな効能があったからです。戦国時代、武士や僧侶によって広まった温泉文化は、江戸時代に庶民にも広がりました。
温泉文化の関連で言えば、共同浴場なども日本独自の文化の一つでしょう。地元の人が集まって一緒にお湯に浸かることで、共同体意識が形成していく。温泉は日本の独自の文化なのです。
――Yuumiesの強みと特徴は何ですか?
井出さん お湯にフォーカスして、旅のサブコンテンツではなく温泉メインで展開していくコンテンツを目指した点です。お湯からリサーチすることができるのが特徴です。
たとえば温泉はワインやワイナリーに似ています。源泉によって泉質が異なるからです。日本の定義では塩化物温泉や硫黄泉、放射能泉など10種類の泉質があります。それらの泉質や効能、色、香りから、どの温泉に行きたいのかがわかるような設計になっています。
他の温泉サイトでは、「露天風呂から絶景が見られる」といった紹介の仕方ですが、Yuumiesは源泉の温度、何の泉質か、効能は何か、香りなど、お湯そのものでチョイスできます。まさに味で選ぶワインのように、お湯そのものが主体なのです。
10件に1件程度しかない本当の温泉かけ流し
――サイトをどのように進化させたいですか?
井出さん いろいろ賛否はあるのですが、「お湯をどう扱っているか」「それぞれの温泉の湯使い」を開示して提唱していきたいと思っています。
よく、「源泉かけ流し」と言われますが、本当に源泉をかけ流している温泉は、多分、10件に1件ぐらいしかないでしょう。レジオネラ菌対策で塩素消毒したり、何らかの手が入っていることが多いです。
「湯使い」とは、こうした源泉の扱い方をどうしているかで、例えば源泉の温度は90度以上と高い場合は冷まさないと入れません。これをどうやって冷ましているか、加水するのか、貯めておいて冷ますか、部屋や建物にパイプを張り巡らせて暖房として使い、距離を延ばすことで自然とお湯を冷ますか、いろいろな方法がありますが、どうしているかを開示して、お知らせしたいのです。そうしたお湯の取り扱い方や、提供の仕方も紹介できれば良いなと思っています。
とはいえ、まずは本ローンチを目指しています。温泉とは何かを見直したい。ゆくゆくは表示法、法律なども変えたいです。そして、源泉かけ流しと言われているものの約1/10しか正しく提供されていない現実を、見直す機会を作りたいです。
――最後に、温泉に行くときのアドバイスをお願いします。1)例えば持っていくと便利なモノや、2)行く前の準備、3)温泉地の食事、4)温泉地で買うべきお土産などなど、ぜひご教示ください。
井出さん 1)手ぬぐい ハンドタオルより乾きやすいので 何湯も浸かるにもよいです。2)はリサーチすることです。どこの温泉がいいか どんな泉質か効能があるか調べていくほうがより楽しめますよ。3)良い温泉の近くには、良い水があり、美味しいお酒やお蕎麦も食べられるところが多いです。体質にもよるとは思いますが食べてから時間をある程度あけてから温泉に入るほうがいいと言われています。4)自宅に帰ってからもまるで同じではないが香りや湯ざわりなど温泉気分を味わえる“湯の華”(温泉成分の結晶)はおすすめです。あとは温泉饅頭かな。あと、余談ですが良い温泉には決まって人懐っこい猫がいることが多いです(笑)
――ぜひ猫たちに会いに行きたいです。ありがとうございました。
インタビュー
井出 辰之助(いで・たつのすけ)さん
infusiondesign代表/イベントプロデューサー/温泉プロデューサー
1999年より野外音楽フェス、アートイベント、企業イベント等の企画・制作・運営として、これまで1000以上のイベントに携わる。
フェスではTRUE PEOPLE‘S CELEBRATIONを皮切りにGREENROOM FES、TAICOCLUB、SENSE OF WONDER等の立ち上げから参加し、その後全国津々浦々で開催される数々のフェスに従事する。
2019年よりWOWOWと共に静岡県富士市で野外音楽フェス「FUJI&SUN」を主催。
趣味は温泉と登山とバックカントリー。
温泉はこれまでに1500湯以上を巡り、2019年から“YAMAP”のウェブマガジンで温泉コラムの連載開始とともに温泉プロジェクト“湯口は宇宙”をスタートさせる。
2025年6月に自身が巡った1500湯をベースとした温泉検索サービス「YUUMIES」のトライアル版をリリース、2026年に完成版のローンチを目指している。
2026年4月に初開催を迎える、Peter Barakan氏が手掛ける音楽フェス「LIVE MAGIC」のスピンオフイベント「ONSEN MAGIC」に立ち上げから参画。
LIVE MAGIC チームとともに“音楽×温泉”をコンセプトに打ち出した新しい形のエンターテインメントの確立を目指す。
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温泉コラム
文/柿川鮎子







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