ふるさと納税が、転換点を迎えている。
自分の応援したい自治体に向けた寄附を行い、その分は住民税や所得税から控除される仕組みのふるさと納税。多くの人がこのような制度を利用する理由は、何と言っても「返礼品」である。その地域でしか生産されていないものを入手するため、ふるさと納税を活用する。ここにECサイトが仲介者として入る形になっている。
が、これは実質的な「物品の売買」ではないか?
そうした声が以前から存在したのも事実で、それ故に国はふるさと納税に関するレギュレーションの厳格化を検討・実施するようになった。この記事では「ポイント禁止」「募集費用の上限引き下げ」「高額所得者の納税制限」について解説したい。
寄附金に対するポイント付与の禁止
たとえば、筆者がA市の1万円分の返礼品に対して寄附を行ったとする。その1万円に対して、仲介者であるECサイトが5%相当の自社銘柄ポイントを配布したと仮定してみよう。こうしたことは、どこのECサイトでも去年10月までは当たり前のように行われていた。それが禁止事項になってしまったことは、大きな話題になった。
ポイント付与を禁止した理由を決定者である国に求めた場合、そこに「公平性」という言葉がどうしても出てくる。
2017年には、ふるさと納税の返礼品の価格を寄附額の3割以下に抑えるよう総務省が全国の自治体に通達している。ふるさと納税とは、言い換えれば「自主的な納税」であり、国民及び住民に課せられている義務の遂行に過ぎない。そうしたスタンスを保つとしたら、返礼品はあくまでも「オマケ」でなければならない。商品の売買とは一線を画したいという国の意図が、随所に見て取れる。
が、2017年以降は返礼品の価格を補うかのような「ポイント攻勢」が始まった。
仮に、このポイント付与の原資に寄附金が使われているとしたら、それはふるさと納税の趣旨とは大きく逸脱していると言わざるを得ない。ふるさと納税に対するポイント付与禁止が決定し、それが公表されたのは2024年6月のことだ。
以下は2025年7月15日の村上誠一郎総務大臣(当時)の記者会見からの引用である。
問:ふるさと納税についてお尋ねします。今年の10月から寄附者に対してポイントを付与するポータルサイトの利用を禁止する新しい指定基準に関して、先週、楽天グループが国を相手取って無効確認を求める訴訟を起こしました。このことについての総務省としての受け止めをお願いします。また、予定通り10月に新基準を施行するというお考えに変わりはありませんでしょうか、併せてお聞かせください。
答: 楽天グループ株式会社が、総務省告示の無効確認を求める訴訟を提起したということについては承知しておりますが、現時点では訴状は届いておりません。
訴状が届きましたら、内容を十分に精査した上で、適切に対応していきたいと考えております。
ポイント付与を禁止する見直しは、ポイント付与で寄附者を誘引するポータルサイト等が利用され、その付与率に係る競争が過熱化することが、お世話になった自治体等への感謝や応援の気持ちを伝えるという、ふるさと納税の本来の趣旨に則った適正なものとはいえないことから、関係者のご意見を聞いた上で実施することにしたものであります。
この見直しにつきましては、既に昨年の6月に告示を改正し、本年10月から適用することにしております。
(村上総務大臣閣議後記者会見の概要 総務省)
村上氏も言及しているように、この時すでに楽天グループが政府の決定に対して訴訟を起こしていた。同社は「ポイントの原資に寄附金は使われていない」と主張してポイント付与禁止措置に反対する署名を集め、石破茂総理大臣(当時)に提出する行動にも踏み切っている。
当社はこれまで、地域振興や地域の自立的な成長を支援することを目的に、「楽天ふるさと納税」を通じ、自治体が「楽天市場」の仕組みを用いて寄附募集できる環境を整え、当社が寄附の受付や決済、寄附者からの問い合わせ対応などの関連業務に加え、自治体に向けてデータの活用ノウハウを含めたコンサルティング、DX支援なども行うことで、ふるさと納税の普及促進に取り組んできました。従前より「楽天市場」の仕組みの一つであったポイントの付与は、2015年に「楽天ふるさと納税」を開設してから変わることなく、10年以上にわたりふるさと納税ポータルサイトの運営方法の一環として行ってきたものであり、2019年からは自治体に負担を求めず当社の負担において実施しています。このような当社のポイント付与の仕組みは、事業効率や寄附者の利便性を高め、ふるさと納税の普及促進に大きく寄与してきました。現在、ふるさと納税を通じた寄附募集は多くの国民に受け入れられており、寄附額も年々増加傾向にあります。さらに多くの地方自治体にとって貴重な財源であるだけでなく、返礼品として寄附者に送られる地産品は、地元企業の振興にも大きく貢献していると考えています。
(ふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示の無効確認を求める訴訟の提起について 楽天グループ株式会社 ※下線は筆者による)
地方自治体を揺るがす「募集費用50%ルール」

上の村上氏の会見から2ヶ月後、地方自治体を揺るがす大騒動が発生した。
熊本県山都町が「募集費用は寄付総額の50%以下」とするふるさと納税の規約に反したとして、2年間制度から除外されることが決まったのだ。これにより、山都町は億単位の税収を失うと見られている。
山都町が公開しているPDF資料によると、2023年10月1日から2024年9月30日までの期間、募集費用即ちふるさと納税の募集にかかる諸経費が寄付総額に対して56.14%に上ってしまったという。
これには運送費の高騰などがあったというが、その可能性を考慮した上で国が決断を下したとすれば、「50%ルール」は今後も厳格に運用されるという強いメッセージを発していることになる。いや、このルールは数年後にはさらに引き下げられる可能性もある。
政府、与党は、ふるさと納税の募集で自治体が支払う費用を抑制する方向で検討に入った。寄付の半分近くが返礼品の調達費や事務費になっている現状を改め、自治体の収入増につなげる。具体案は与党税制調査会で詰める。「募集費用は寄付総額の50%以下」としている基準の引き下げなどが検討対象となる見通し。複数の関係者が26日、明らかにした。
2024年度の寄付総額1兆2728億円のうち、46.4%に当たる5901億円を返礼品調達費や事務費などが占める。政府、与党には多額の寄付金が自治体の収入になっていないのは問題だとの見方が強い。
(ふるさと納税、自治体の費用抑制 政府与党、「寄付の半分」問題視 47NEWS)
「一律的な規制」は業者の首を絞めるだけ?
その上で、政府は年収1億円以上の高所得者のふるさと納税に対する控除の上限を設ける調整に入ったことも大きく報道されている。
「ふるさと納税は高所得者ほど大きな控除を得られる」という批判の声があったことは事実だ。そして、高所得者向けの高額返礼品をラインナップに加えていた自治体も。総合的に考えた場合、上の「50%ルール」と相成って税制本来のコンセプトから脱線しているのではという意見が出るのはやむを得ないだろう。
だが一方で、これらのふるさと納税制度の見直しが地域経済に悪影響を与えてしまうのではという見方もある。
一般社団法人ふるさと納税地域商社会が全国のふるさと納税の返礼品出品事業者1,000件を対象に取ったアンケート調査のレポートが、PR TIMESで公開されている。「制度変更が続いた場合、事業継続に影響が生じる可能性はありますか?」という質問に対して、「事業縮小の可能性がある」と答えた事業者は28.6%、「廃業・倒産の可能性がある」と答えた事業者は6.9%に上った。35.5%の事業者が、質問に対してネガティブな回答をしたことになる。
ここで、話は山都町の件に戻る。もしも、山都町のふるさと納税にかかる募集費用が50%を超えた原因がまさに運送費高騰であったとしたら——国による一律的な規制は各地の返礼品事業者、そして陸運業者の首を絞めるだけの悪法になってしまうのではないか?
ふるさと納税とは、果たして誰のための制度なのか。それを真剣に考えざるを得ない時期に来ているようだ。
【参考】
ふるさと納税の指定基準の見直し等 総務省
村上総務大臣閣議後記者会見の概要 総務省
ふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示の無効確認を求める訴訟の提起について 楽天グループ株式会社
ふるさと納税、自治体の費用抑制 政府与党、「寄付の半分」問題視 47NEWS
お知らせとお詫び(ふるさと納税指定対象団体取消しに関して)山都町
ふるさと納税制度の見直しで、35.5%が「事業継続・雇用」に危機感 PR TIMES
調査期間
2025年12月6日~16日
調査機関
一般社団法人ふるさと納税地域商社会
調査対象
全国のふるさと納税の返礼品出品事業者
有効回答数
1,000件
調査方法
インターネット調査
文/澤田真一







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