多くの人が感じる、暮らしている街への誇りや愛着。こうした「シビックプライド」を持つ住人の割合が、日本全国で最も高い自治体はいったいどこだろうか?
YOMIKO 都市生活研究所はこのほど、住民による「愛着」や「誇り」などの街への評価を明らかにする「シビックプライド調査」を実施し、その集計結果の概要をランキングにて発表した。
同社は2008年より、市民や街に関わる人たちが、その地域、街に対して持つ意識「シビックプライド」に関する研究を行っている。関東・関西の調査・ランキングは定期的に実施していたが、今回初めて全国規模、278自治体の調査を実施した。
“シビックプライドランキング 全国版”総合ランキング1位~30位
<ランキングの総合ポイント集計方法>
総合ポイントは、【愛着(この街に愛着を持っている)】【誇り(この街に誇りを持っている)】【エンゲージメント(この街と自分の人生は切り離せない)】の3指標のスコアを足し上げ300点満点化、小数点第二位までを算出したものだ。
<総合1位> 中央区(東京都)
2021年にトップだった中央区が、初の全国調査でNo.1に返り咲いた。
中央区といってまず思い浮かぶのは、日本を代表するショッピングエリア・銀座や、勝どき・晴海エリアのタワーマンションが林立する近未来的な都市の風景、超都心ならではの抜きんでた交通アクセスの良さ、日本橋エリアに残る歴史的建造物や、歌舞伎座などの伝統文化がある。
これらに関する評価が高かったのはもちろんだが、今回No.1獲得を牽引した要素は「歩きたくなる個性豊かなまちの魅力」と「公共施設や公園に対する評価の高さ」となった。例えば人形町や八重洲、八丁堀などは江戸時代から受け継がれてきた小路や老舗もあり、商店街や個人商店も充実しているなど、歩いて楽しく、個性豊かで人に寄り添った街並みが多く残っている。
また、2022年にオープンして人気の「本の森ちゅうおう」をはじめ、住民がボランティアとしてサポートしている公民館やスポーツ施設での習い事支援、整備され快適な憩いの場になった「隅田川テラス」、「太陽のマルシェ」「大江戸まつり盆踊り大会」に代表される地域イベントの存在は、日々の暮らしを豊かに彩っている。
これらが結果として住環境やワークライフバランスに対する満足度の高さ、継続居住意向の高さなどに繋がり、シビックプライド向上に貢献していると考えられる。
外から見ると華やかな商業都市のイメージが先に立つ中央区だが、その実、毎日の暮らしに寄り添った生活者目線の丁寧なまちづくりがなされていることがわかる。
■高槻市(大阪府)がランキング3位に大きく躍進
過去3回は30位以内に名を連ねながらも、上位進出には及ばなかった高槻市。初の全国調査で評価が高まり、全国3位へ躍進した。関西ではこれまでTOPだった西宮市(今回全国6位)を抜き、堂々の1位となった。
これまで高槻市は、大阪・京都のベッドタウンとして、交通利便性や生活利便性の高さから「住み続けたい」街として評価されていた。今回さらに、「遺跡」という歴史資産を活用して街の魅力を伝える“ストーリー性”が高まった点に加え、かねてより進行している駅前再開発、地域密着型のショッピングセンターの開業、府内初となる子どもの医療費完全無償化など、暮らしやすさをアップデートしつづけている点がランキング向上に貢献したと考えられる。
ウェルビーイングに関するほとんどの項目について全国平均を大きく上回った高槻市は、コンスタントな努力の積み重ねにより、すべてがバランスよく整った街として住民の評価を獲得した街といえるだろう。
20代・30代のTOP3は「高槻市(大阪府)」「明石市(兵庫県)」「西宮市(兵庫県)」と関西圏の都市が独占
20代・30代TOP3は、1位高槻市、2位明石市、3位西宮市と関西圏の都市が占めた。逆に50代以上の場合、1位中央区、2位文京区、3位渋谷区と東京都心で占められ、年代によって対照的な結果となった。
TOP3の関西都市における20代・30代が、地域へのコミットメント(地産地消や地域のための活動参加、地元企業応援)が高いのに対し、50代以上のTOP3の都市は、自分好みの過ごし方ができるか(お気に入りの風景がある、散策や散歩をする)が若年層に比べて高い傾向にある。
また20代・30代ランキングでは、TOP10内に3つ、九州エリアの都市が入るなど(鹿児島市、福岡市、那覇市)、東阪以外の都市の台頭が目立つ。
※年代別分析はサンプル数の関係上、政令指定都市、中核市、東京都区部(千代田区除く)に限定
男性1位は「文京区(東京都)」、女性1位は「港区(東京都)」
総合では7位だった文京区が男性でTOPに。女性1位は総合2位だった港区となった。文京区では、地域との関わりや伝統・歴史・文化の豊かさが高く評価され、港区は新しい変化や刺激・情報に触れることができるという点で平均を大きく上回る評価を得た。
また男性では、総合26位だった高崎市(群馬県)が4位に順位を大きく上げるとともに、TOP10のうち5つが関西圏の都市だったのに比べ、女性ではTOP10に関西圏の都市は2つのみ、札幌市や函館市など北海道エリアの都市が入るなど、男女でランキングの顔ぶれが異なる結果に。
今後もこの街に住み続けたいTOPは「鎌倉市(神奈川県)」に。続いて「高槻市(大阪府)」「中央区(東京都)」
定住に関わる「今後もこの街に住み続けたい」のTOPは「鎌倉市(神奈川県)」。鎌倉市は「この街と自分の人生は切り離せない」「この街をもっと良い街にしたい」もTOPと、住民とまちとのエンゲージメント・まちへの関与意向の高さが継続居住意向につながっているといえる。
また、サンプル数が少ないので参考値ではあるが、鎌倉市は人口10万人以上の278自治体において、女性でTOP、20代・30代でもTOPと、若年女性の地域住民からの支持が高い点も特徴だ。
読売広告社 都市生活研究所 所長 山下雅洋氏より
今回、初の全国規模でのシビックプライドリサーチで「日本におけるシビックプライド」の全容・詳細がより明らかになり、都市生活研究所が2008年以来続けているシビックプライド研究もアップデートされました。
まず興味深かったのは、伊勢市や浦添市、別府市や生駒市など人口規模が比較的小さい自治体がランキング上位に食い込んだこと。規模の大きさ・都市機能の高さがシビックプライドに影響する側面はあるものの、たとえ規模が小さな自治体でも、まちと住民とのつながり形成や、まちに関わる機会づくりなどでシビックプライドを醸成することは十分可能だということがわかりました。
また、20代・30代と50代以上の年代別で、ランキング結果が変化する点もポイントです。
東京都心エリアが上位を占める50代以上に対して、若年層が誇りを感じる街は、高槻市や明石市、鹿児島市や那覇市、高崎市や金沢市など、様々な地域の都市が上位にランクイン。
それらの都市の若年層は、50代以上と比べると、地域とのふれあいやつながりを感じることをより重視し、実際に地域イベントへの参加や地産地消、地元企業の応援などまちのための様々な活動に時間を割いていることがわかりました。若年層のシビックプライドを高め、まちへの定住を図るには、若年層が主体的にまちと関わる・活動する場や機会をいかにつくるかが、鍵といえそうです。
現在、都市生活研究所ではさらなる分析を進めており、自治体ごとのタイプ分けによる類型化や、シビックプライドが醸成される要因や仕組みを、新たに開発した指標を活用して明らかにし、近くそれらを発表する予定です。調査のための調査ではなく、それぞれの地域が独自の魅力や価値を磨き、その地域ならではの、色とりどりの輝きを放つための示唆を少しでも提供できればと願っています。
都市生活研究所所長 日本女子大学非常勤講師 山下雅洋氏
<「シビックプライドリサーチ」概要>
●調査方法:インターネット調査
●調査対象者:以下の調査対象エリアの自治体に居住する20~64歳の男女
●調査対象エリア:全国の人口10万人以上の278自治体 ※東京都区部はすべての区を対象
●調査内容(主要な聴取項目)
・現在 住んでいる街(自治体)に対する意識
ー【住民と街との関係性を把握する『シビックプライド指標』関連項目】
愛着、誇り、共感、エンゲージメント、継続居住意向、他者推奨意向、地域関与意識などに関する項目
ー【住民の街に対するニーズと評価に関する『地域インサイト・地域快適性指標』関連項目】
住民の主体的活動、地域との繋がり、学びの機会の充実、トレンド性、地域文化等街のストーリー性、他者(地域外)からの評価性、誠実性(助け合いの風土や包摂性)、生活利便性、近隣環境の充実、行政の充実、などに関する項目
・現在 住んでいる街(自治体)や地域における普段の行動
地産地消、応援消費、地域イベント関与、地元施設利用、地域内余暇行動(公共空間とのつながり)、地域貢献活動などに関する項目
・現在の街での暮らしにおける生活満足度、ウェルビーイング評価
●有効回収数:49,778サンプル
※政令指定都市、中核市、東京都区部(千代田区除く)は300サンプル。それ以外は100サンプルを回収目標に設定。
※各自治体の人口構成比に合わせたウェイトバック集計を行った。
●調査時期:2025年11月
●調査委託先:マクロミル
出典元:YOMIKO
構成/こじへい







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