確定申告の時期が近づくと、「申告忘れに注意」「副業20万円ルール」といった言葉がSNSやニュースにあふれ始める。一方で、「会社員に年末調整は不要」という声も同時に聞こえてくる。副業も投資もしていない会社員であれば、「自分には関係ないはず」と思いつつ、どこか落ち着かない気持ちになる人も少なくないだろう。
結論から言えば、多くの会社員は確定申告で特別な手続きをする必要はない。
ただし、それは「何も考えなくていい」という意味ではない。重要なのは、自分が本当に「何もしなくていい会社員」に当てはまっているかどうかを、一度だけ確認することだ。
確定申告を過度に恐れたり、逆に楽観視しすぎたりしなくて済むよう、自分がどの立場にいるのかを見極めるための線引きを整理してみよう。
そもそも、なぜ会社員は「確定申告をしなくていい」のか
会社員が確定申告をしなくて済む最大の理由は、年末調整の仕組みがあるからだ。会社は毎月の給与から所得税を概算で天引きし、年末に1年間の収入と各種控除をまとめて計算し直す。これにより、払い過ぎた税金は還付され、不足分は追加で徴収される。
つまり、給与所得しかない会社員の場合、会社が本人に代わって確定申告に近い処理をしてくれている。この前提を知らないまま情報を追いかけると、「何か手続きしないと損をするのでは」「知らないうちに違反しているのでは」と不安が膨らんでしまいがちだ。
確定申告の要・不要は、「会社員かどうか」ではなく、年末調整で税金の計算が最後まで完結しているかどうかで決まる。以下は、会社員が最低限チェックしておきたいポイントだ。
(1) 給与収入が2000万円を超えていないか
給与収入が年間2000万円を超えると、年末調整の対象外となる。この場合、会社員であっても自分で確定申告を行う必要がある。役員報酬や外資系企業の高年収層だけの話と思われがちだが、賞与の影響などで一時的に超えるケースもあるため、念のため確認しておきたい。
(2) 本業以外の所得が20万円を超えていないか
副業や業務委託、原稿料、講演料など、本業以外の所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となる。ここで注意したいのは、基準となるのが「収入」ではなく「所得(=収入−経費)」だという点。本業以外で得た金額の内訳を、一度整理してみることが大切だ。
なお、確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になるケースがある点には注意したい。
(3) 株式投資などで申告が必要な取引をしていないか
株式投資をしている場合でも、特定口座(源泉徴収あり)で完結していれば、原則として確定申告は不要。しかし、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で利益が出ている場合は、会社員であっても確定申告が必要となる。
また、配当控除や損益通算を行いたい場合には、義務ではなくても、あえて申告した方が有利になるケースもある。「投資=確定申告が必要」と思い込まず、自分の口座区分を確認しておきたい。
(4) 年末調整では扱えない控除があるか
医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などは、年末調整では処理できない。確定申告は義務ではないが、申告しなければ還付を受けられずに「損をする」ケースとなってしまう。控除の対象者にとっては見逃せないポイントだ。
(5) ふるさと納税の処理が完了しているか
ワンストップ特例を利用していれば確定申告は不要だが、6自治体以上に寄付した場合や、期限に間に合わなかった場合は確定申告が必要となる。
「ふるさと納税をしたから税金が戻ってくる」などと思い込まず、手続きが最後まで完了しているかを確認しておきたい。
(6) 税金の計算が途中で止まっていないか
年の途中で転職・退職した場合や、年末調整の書類を提出し忘れた場合など、1年分の税金が会社側で精算されていないケースもある。この場合、確定申告が必要になることがあるため、一度状況を振り返っておくと安心だ。
以上のすべてに当てはまらなければ、今年は何もしなくていい可能性が高い。
「確認すべきかも」と思った時の確認方法
チェックポイントを見て、「自分は確定申告が必要かもしれない」と感じた場合でも、いきなり難しい手続きを始める必要はない。まずは以下のように、信頼できる公式の情報を確認することが近道だ。
●国税庁特設サイトで、申告が必要かを調べる
今年の確定申告に向け、国税庁は「令和7年分確定申告特集」と銘打って特設サイトを開設している。
第一歩としておすすめしたいのが、「申告が必要かなどを調べる」というページを確認することだ。ここではチャットボットへの相談ページが案内されていたり、所得税や贈与税についての説明が掲載されていたりと、第一に必要な情報がまとめられている。「本当に何もしなくていいの?」と不安な人が、まず訪れるべきページと言えるだろう。
●控除の条件を満たしているかを確認
前述の国税庁特設サイトには、医療費控除、住宅ローン控除(初年度)、ふるさと納税など、条件を満たしていれば利用できる制度についてもページが設けられている。自分が還付を受けられる対象なのかを調べるのに有用だ。
さらに、国税庁の公式YouTubeチャンネル「国税庁動画チャンネル」でも各控除について説明動画が掲載されており、多様な方法で、自分に必要な情報を得ることができるようになっている。
「やらなくていいこと」をはっきりさせておく
確定申告シーズンになると、専門用語や「簡単」「便利」をうたうツールの情報などが一気に増える。しかし、会社員にとってはやらなくていいことや気にしなくていいことばも多い。情報に巻き込まれて不安になる前に、自分には関係ない話を切り分けておくことも重要だ。ここでは、よく耳に入ってくることばを整理する。
●「青色申告」
個人事業主やフリーランス向けの制度であり、給与所得しかない会社員には基本的に関係ない。
●「副業20万円ルール」
SNSなどでは「20万円を超えたらアウト」などと強調されがちだが、副業収入がある人向けの話。本業以外の所得がなければ、このルールを細かく理解する必要はない。
●「freee」や「マネーフォワード」などの会計ソフト
確定申告が必要な人にとっては心強いツールだが、申告自体が不要な会社員が無理に使う必要はない。
●不安だからと税理士に相談するのは早計
「よくわからないから、とりあえず税理士に相談する」という選択は、必ずしも最初に取るべき手段ではない。会社員が抱く不安の大半は、自分に確定申告が必要なのかを整理するだけで解消されるはずだ。
必要以上に不安にならなくていい
確定申告という言葉には、どうしても「難しそう」「面倒そう」というイメージがつきまとう。しかし、会社員の大半は、年末調整という仕組みのおかげで特別な対応をしなくて済んでいる。大切なのは、自分が「ほぼ何もしなくていい人」なのか、それとも「一度だけ確認すべき人」なのかを見極めることだ。
確定申告の話題で混乱が生じやすいのは、「申告が〝義務〟な人」と「申告すると“得”な人」、そして「何もしなくていい人」が混ざって語られがちだから。
例えば、給与収入が2000万円を超えている人や、副業所得が20万円を超えている人、源泉徴収なし口座で株式利益が出ている人は、申告しなければならない「義務がある人」に該当する。一方で、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)、損益通算や配当控除などは、申告しなくても罰則はないが、しなければ還付が受けられない。つまり「申告すると得な人」だ。そして、これらのどちらにも当てはまらず、年末調整で税金の計算が完結している会社員は、「何もしなくていい人」に当てはまると理解しておこう。
必要以上に焦る必要はない。まずは自分の立ち位置を整理するだけで、確定申告シーズンのストレスは大きく減るはずだ。
文/田口遥
2025年も、もうおしまいに。@DIME読者の皆さんで、会社員の方であれば、2025年の源泉徴収票を無事受け取り、またフリーランスの方なら今年の収支計算が整った…







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