なんかモヤモヤする。それは「価値観の押しつけ」社会の中で生きているから感じることだという。
人間関係のモヤモヤは、ほぼ立場のマウントであると言われる。他人と自分を比べ“自己の優位性を示す=マウントを取る“は、生存戦略として私たちの遺伝子に組み込まれた本能で、逃れることはできない。
なぜ遺伝子に刻まれたのか?
マウントとモヤモヤの構造を読み解く話題の書籍『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』から一部を抜粋してその正体を丁寧に紐解いていく。
モヤモヤをなくせばうまくいく「老後のモヤモヤ」
(1)再雇用のモヤモヤ──「65歳まで働ける幸運」の陰に、納得できない現実がある
【ケース】定年を迎えたあと、そのまま再雇用で同じ会社に残った。収入はぐっと減ったのに、やっている仕事はほとんど変わらない。会社一筋でここまで来たのに、行き着いた先がこの景色かと思うと、どうにも笑えない。とはいえ、65歳までは働き口があるのはありがたい、と頭ではわかっている。けれど、おそらく自分は85歳くらいまでは生きるだろう。その残りの時間をどう生きていけばいいのか、まるで見通しが立たない。年金と預貯金、退職金を崩しながら静かに暮らすのか。それとも、まったく別の仕事に踏み出してみるのか。答えが出ないまま、毎日どこかモヤモヤした気分で気持ちが沈みがちになる。今は元気な両親も、いずれ介護が必要になる日が来ると思うと、胸のあたりがざわつく。自分自身、いつから老人として生きていけばいいのだろう。(60代男性・元メーカー勤務・再雇用で同じ部署に在籍中・妻とふたり暮らし)
【解説】定年後の再雇用は労働時間は短縮するものの、仕事の内容はほとんど変わらないのに、給料が半分以下になることが多い。そんな理不尽さにモヤモヤするのは、ごく自然なことだ。けれど、そこで不満だけを抱えて立ち止まっている場合じゃない。人生100年時代、65歳からがむしろ本番だ。収入は減っても、自由に使える時間は増える。その時間をどう使うかで、これからの人生の豊かさは大きく変わってくる。
新しい資格を取ってみる。昔の趣味をもう一度始めてみる。地域の仲間と小さな活動を立ち上げてみる。そんな控えめな一歩でいい。動き出せば、心は驚くほど早く温まり、日々の景色が少しずつ変わっていく。何より大切なのは、体を動かし続けること。軽い筋トレや有酸素運動を続けるだけで、体力だけでなく、頭の回転や集中力まで冴えてくる。体が元気を取り戻せば、気持ちも自然と前向きになる。再雇用は、終わりの延長ではなく、新しい章の始まりだ。モヤモヤは「まだ終わりたくない」という心のサイン。焦らず、比べず、自分のテンポで歩いていこう。人生のピークは、まだこれから先に訪れる。
(2)年金生活のモヤモヤ──家に居場所がなく、少し離れたカフェで孤独をやり過ごす
【ケース】今の暮らしを数字だけで眺めると、年金は自分の積み立ても含めて月30万円に届くか届かないか。退職金はおよそ3000万円。紙の上だけ見れば、きっと「悪くない老後ですね」と言われる条件なのだろう。けれど、実際に持て余しているのはお金ではなく、急に空いた「時間」のほうだ。 朝になると家を出て、自宅から少し離れたカフェへ向かう。コーヒーを飲み、なんとなく昼食をとり、外が薄暗くなり始めた頃に、ようやく家へ戻る。そのあとはテレビをぼんやり眺めて、そのまま少し早めに布団に入る。一日を並べてみれば、本当にそれだけのことだ。どこを切り取っても、「ここが自分の居場所だ」と思える場面が見当たらない。この家の中にたしかに自分はいるはずなのに、誰の視界にも映っていないような気がしてしまう。(60代男性・元会社員・定年退職・既婚・子ども独立済み・自宅ありだが居場所なし)
【解説】年金も退職金もあって、生活には困っていない。けれど、一日がやけに長く感じる。家にいても落ち着かず、なんとなく外へ出て、少し離れたカフェでぼんやりと時間をつぶす。そんな日々を過ごしている人は、きっと少なくない。まわりの笑い声を聞くたびに、自分だけがどこか取り残されたような気がして、心の奥が少しずつ冷えていく。でも、そこで止まらなくていい。孤独は終わりじゃない。「まだ誰かとつながりたい」という、生きようとする力のあらわれだ。朝の散歩のついでに、いつもの喫茶店でゆっくりコーヒーを飲む。店員さんに「いつものですね」と声をかけられる。たったそれだけで、心は不思議と温まる。本を借りてみる。地域のボランティアに少しだけ顔を出してみる。そんな小さな行動が、閉じかけていた世界をやさしく開いてくれる。
もしまだ働けるなら、週に数日だけでも仕事をしてみよう。誰かに「ありがとう」と言われる瞬間があれば、それだけで心に小さな灯がともる。年金生活は、決して余生なんかじゃない。むしろ、ここからが新しい人生の本番だ。肩書きも競争もない今だからこそ、自分のリズムで、自分らしい生き方をもう一度選び直せる。人生の後半戦は、自由を取り戻すための貴重な時間。穏やかに、そして力強く、あなたの物語はこれからも続いていく。
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『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』
著/勝木健太 小学館
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勝木健太 かつき・けんた
1986年生まれ。京都大学工学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経てフリーランスとして独立。2019年にAnd Technologiesを創業し、2021年には同社をみらいワークス(現東証グロース上場)へ売却。売却後は、執行役員としてリード獲得DX事業部を統括し、2年間の任期を満了して退任。著書に『「マウント消費」の経済学』(小学館)、『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績に『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)など。
構成/DIME編集部







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