なんかモヤモヤする。それは「価値観の押しつけ」社会の中で生きているから感じることだという。
人間関係のモヤモヤは、ほぼ立場のマウントであると言われる。他人と自分を比べ“自己の優位性を示す=マウントを取る“は、生存戦略として私たちの遺伝子に組み込まれた本能で、逃れることはできない。
なぜ遺伝子に刻まれたのか?
マウントとモヤモヤの構造を読み解く話題の書籍『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』から一部を抜粋してその正体を丁寧に紐解いていく。
モヤモヤをなくせばうまくいく「産後のモヤモヤ」
(1)育休のモヤモヤ──サボり扱いされるたびに、父親としての覚悟を否定された気がする
【ケース】育休を申し出た日のことを思い出すたびに、今も胸のどこかがひっかかる。こちらは覚悟を決めて切り出したのに、上司の返事は「いい気分転換になるんじゃない?」という、あまりにも軽い一言だった。その瞬間、胸の奥がすっと冷えた。こっちは、気晴らしの休暇をもらいに行くわけじゃない。夜泣きでヘトヘトの妻を支え、オムツやミルクに追われながら、ようやく父親として前に出ようとしている。会社から見れば、「職場を離れる=休み」に見えるのかもしれない。でも自分にとっては、これから始まるのは、ほとんど24時間体制の育児シフトに近い。その選択を、「ちょっと仕事をサボりに行く」くらいの感覚で受け止められたことが、どうしても受け入れられないまま、今も心に残っている。(30歳男性・会社員/ 妻30歳・専業主婦・第一子出産直後)
【解説】「育休ってリフレッシュでしょ?」まだそんなことを平気で言う人がいるなんて、正直驚いてしまう。育休は決して休みじゃない。夜泣きで何度も起き、寝不足のまま産後の妻を支え、家事と育児に追われながら、一日が息つく間もなく過ぎていく。むしろ会社にいるときより、ずっと体も心も激しく削られる。それなのに「休んでいる人」扱いをされれば、父親としての覚悟を軽く見られたようで、胸が苦しくなるのは当然だ。多くの人が、「育休を取ったらキャリアに響くのでは」と心の奥で不安を抱えている。家族をまっすぐに大切にしたいだけなのに、社会の空気がそれを許さない。けれど、忘れないでほしい。仕事はいつでも取り戻せる。一方で、子どもの成長も、妻を支えられる時間も、今このかけがえのない瞬間しか存在しない。育休はキャリアの後退ではなく、人生を前に進める選択だ。家族のために立ち止まることは、甘えでもサボりでもない。家族と真剣に向き合うその姿こそ、今の時代において、もっとも誇らしい働き方である。
(2)罪悪感のモヤモヤ──「可愛いと思えない瞬間」があるだけで、自分を責めてしまう
【ケース】娘のことがかわいいと思えない。顔を見るのさえつらくて、「産まなきゃよかった」という言葉が頭をかすめる。一歩動く気力もわかない。こんなにつらいなんて、誰も教えてくれなかった。ただ一日中、布団にもぐって眠っていたい。そんな自分を前にして、「私には母性なんてない」「母親失格どころか、人として終わっている」と、自分を責め続けてしまう。「もう消えてしまいたい」と思う瞬間もある。どうしてこんなにイライラするのか、自分でもよくわからない。夫に打ち明けてみても、返ってくるのはどこかで聞いたことのあるような一般論ばかり。そこにもまたイライラが募る。(27歳女性・産休中・第一子出産後2か月目/ 夫30歳・会社員)
【解説】「赤ちゃんが可愛いと思えない」その気持ちは、まったくおかしくない。誰だって、そんなふうに感じる瞬間はある。世の中にはいまだに、「母親になった瞬間に母性があふれ出る」なんて甘い幻想が根強く残っているけれど、現実はそんなにきれいでも、簡単でもない。出産を終えた体はボロボロで、ホルモンは激しく乱れ、寝不足と疲労で心も体もギリギリの状態になる。そんな極限の中でイライラしたり、何も感じられなくなったりするのは、むしろ当然のことだ。多くの母親が、「こんなに大変だなんて聞いてなかった」と、胸の奥でひっそり思っている。「もう無理」と感じるのは、それだけ本気で頑張ってきた証拠。「ひとりになりたい」と思うのは、逃げではなく、自分を守るための健全で切実な反応だ。
母性は最初から完璧に備わっているものではない。誰かの支えや、少しずつ積み重ねていく日々の中で、ゆっくりと育まれていくものだ。可愛いと思えない瞬間があっても、母親失格なんてことは絶対にない。むしろ、それでも赤ちゃんと真剣に向き合おうとしているあなたは、誰よりもやさしく、そして誠実な存在である。
(3)存在否定のモヤモヤ──入院室で勝手に記念撮影。ベッドの横で、私は蚊帳の外
【ケース】子どもが生まれて最初の面会で、義母に「どこへ行っても可愛がられる子に育ててね」と言われた瞬間、「お義母さんの理想どおりに子どもを仕上げる係」に任命されたような気がして、胸の奥がざらりとした。追い打ちをかけるように、産後3日目。まだ体を起こすのもしんどいタイミングで、義母と義姉がぞろぞろ病室になだれ込んでくる。赤ちゃんを真ん中に勝手に記念撮影が始まり、ベッド横の私は、完全に蚊帳の外。「男の子でよかった!」「跡取りだ!」と何度もはしゃいでいるけれど、うちには継ぐ家業も財産もない。あの光景は、祝福というより、目の前で子どもを義家族のものとして抱え込まれていくセレモニーみたいだった。同居だけは絶対にありえない。あのとき、心の中でそう固く決意した。(30歳女性・専業主婦・第一子出産直後/ 夫32歳・会社員・義母と義姉あり)
【解説】産後すぐの時期は、体も心も本当にボロボロで、限界ぎりぎりの状態だ。そんな中で、義母や義姉が勢いよく病室に来て、赤ちゃんを囲んでにぎやかに写真を撮ったり騒いだりすれば、「私、今ここにいるのに」と感じるのは当然のこと。産後は「ガルガル期」と呼ばれるように、わが子を守ろうとする本能が一段と強くなる時期だ。「今はそっとしてほしい」「子どもを奪わないで」と思うのは、自然な反応であって、決して心が狭いわけではない。むしろ、それは母になったからこそ芽生える大切な感覚だ。しかも、「産後の恨みは一生」と言われるように、この時期の出来事は想像以上に心に深く刻まれる。だからモヤモヤするのは、あなたが過敏だからじゃない。それは、守るべき命を前にした健全で誠実な反応だ。もし「蚊帳の外にされた」と感じたなら、その違和感を無理に押し殺す必要はない。ホルモン変化も含めた自分の今を夫に伝え、義家族と少し距離を取るなど対策をしてもらおう。母親としての存在は、誰にも軽く扱えない。あなたはすでに、確かな愛情と覚悟をもって、お母さんとしての力を立派に発揮している。
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『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』
著/勝木健太 小学館
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勝木健太 かつき・けんた
1986年生まれ。京都大学工学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経てフリーランスとして独立。2019年にAnd Technologiesを創業し、2021年には同社をみらいワークス(現東証グロース上場)へ売却。売却後は、執行役員としてリード獲得DX事業部を統括し、2年間の任期を満了して退任。著書に『「マウント消費」の経済学』(小学館)、『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績に『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)など。
構成/DIME編集部







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