なんかモヤモヤする。それは「価値観の押しつけ」社会の中で生きているから感じることだという。
人間関係のモヤモヤは、ほぼ立場のマウントであると言われる。他人と自分を比べ“自己の優位性を示す=マウントを取る“は、生存戦略として私たちの遺伝子に組み込まれた本能で、逃れることはできない。
なぜ遺伝子に刻まれたのか?
マウントとモヤモヤの構造を読み解く話題の書籍『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』から一部を抜粋してその正体を丁寧に紐解いていく。
モヤモヤをなくせばうまくいく「住宅購入のモヤモヤ」
(1)与信のモヤモヤ──決算書より、「サラリーマンかどうか」がすべてを決める
【ケース】自分の家を買おうと思い立ち、銀行の窓口に住宅ローンの相談に行った。決算書も納税証明書もそろえ、会社も黒字でちゃんと回っている。数字だけ見れば、条件は十分クリアしているはずだ。なのに、担当者の口から最初に出てきたひと言は、「ほとんどの中小企業は、10年もしないうちに消えていきますから」だった。その瞬間、これまでの実績とは無関係に、自分が丸ごと「不安定な自営業」というラベルを貼られたように感じた。話を続けても、「自営業は安定していないので、サラリーマンじゃないと厳しいですね」と、半笑いのトーンは変わらない。会社を回し、従業員に給料を払い、税金も納めて、社会にちゃんと関わっているつもりなのに。(35歳男性・中小企業経営者・年収1200万円)
【解説】銀行で「サラリーマンじゃないと厳しいですね」とあっさり言われた瞬間、胸の奥がスッと冷たくなる。きちんと利益を出しているのに、最初から信用のない人のように扱われる。年収だって十分あるのに、「中小企業は不安定」「保証人をお願いします」と繰り返されるたび、積み重ねてきた努力がまるで見えていないようで、悔しさがじわりと広がる。でも、それはあなたが悪いわけじゃない。制度のほうに、いまだに古いバイアスが根強く残っているだけのことだ。銀行のモノサシはあまりに単純すぎる。「会社員=安定」「経営者=不安定」という古い図式のまま人を測っている。だから、正面からぶつかるよりも、仕組みを上手に使えばいい。たとえば、日頃からメインバンクと小さくても継続的な取引を重ねて信頼を積み上げる、経営者でも通りやすいフラット35などの制度を賢く活用する。視点を変えれば、道はいくらでもある。モヤモヤするのは弱さじゃない。「努力をちゃんと見てほしい」というまっとうで誠実な気持ちがあるからだ。社会の古い基準に無理に合わせなくていい。自分のやり方で着実に信用を積み重ねていけば、それが何より確かで、誇れる生き方になる。
(2)ペアローンのモヤモヤ──たった1年の産休・育休で、「稼げない人」の烙印を押される
【ケース】最近、社会から「稼げない側」にカウントされているんじゃないか、と感じさせられる出来事があった。分譲マンションを買おうと夫婦でペアローンの審査を受けたとき、ちょうど産休直前だった私は「今後収入が落ちる可能性がある」と見なされ、年収を実質半分として扱われたせいで、一気に審査が厳しくなったのだ。35年ローンのうち、産休・育休で休むのは一年ほどにすぎないのに、ここまで条件が変わるのかと思うと、「産後きちんと復帰できるか怪しい人」とスタンプを押されたみたいでモヤモヤする。
マンション購入のタイミングに合わせて、子どもをもうける時期まで綿密に計算しなきゃいけないという発想も、理屈ではわかるけれど、やっぱりやりきれない。「こんなんじゃ、子どもなんて増えないよな」とつぶやきたくなる。「ペアローンは離婚時のリスクが高いからやめたほうがいい」と聞くたびに、別のモヤモヤも顔を出す。片方の収入だけでローンを組めば好立地の物件にはまず手が届かないし、リスクを恐れて不便な場所に妥協すれば通勤時間が延びて家族の時間は削られ、そのストレスで、むしろ離婚リスクのほうが高くなるんじゃないか。そんな矛盾ばかりが目についてしまう。(32歳女性・年収430 万円・メーカー勤務・妊娠8か月/ 夫35歳・年収580万円・共働き)
【解説】ペアローンは、理想の場所に家を持つための、現実的で前向きな選択肢だ。通勤時間が少し短くなるだけで、家族と過ごせる時間は確実に増えるし、子育てもぐっとラクになる。「ペアローン=リスク」と言われがちだけれど、使い方次第では、むしろ賢い選択になることも多い。大切なのは、「今がそのタイミングかどうか」を冷静に見極めることだ。産休・育休のたった1年が、35年ローン全体を「不安定」と判断されてしまう現実は、確かに理不尽でやるせない。でも、焦らなくていい。子どもが生まれてからでないと、収入のバランスや生活のリズムは、具体的に見えてこないものだ。「今買えない=負け」ではなく、「もう少し将来の生活の解像度を上げてから決める」と考えたほうが、ずっと健全だ。
家を買うことはゴールではなく、これからの暮らしをどうデザインしていくかというスタートにすぎない。産休や育休はキャリアの空白じゃなく、人生を整えるための大切な時間。だからこそ、焦らずに選びたい。じっくり考えて動いた人ほど、あとで「このタイミングで本当によかった」と心から思える日がきっと来る。家も人生も、あわててつかむより、丁寧に選ぶほうが、ずっとしなやかで、ちゃんと幸せに近づける。
(3)実家格差のモヤモヤ──親の太さで、住まいもキャリアも、最初から決まってしまう
【ケース】同世代が都心のタワマンを買ったという話を耳にするたび、「まあ親のお金が入ってるんだろうな」と、つい心の中でつぶやいてしまう。こちらは住宅ローンのシミュレーション画面とにらめっこしながら、上限は7000万円。駅から離れた新築か、中古をリノベするあたりが、現実的なラインだ。気づけば、実家にいた頃より生活レベルが下がっている自分がいて、その事実に軽くショックを受ける。
会社では、親の援助がある組が30代前半で都心の3LDKに住み、子どもを親に預けながら働いているだけで、「憧れのロールモデル」として持ち上げられている。その一方で、援助ゼロ組は保育園の送り迎えと残業のやりくりに追われ、住宅ローンと教育費のダブルパンチで、じりじりと削られていく。親の資産次第で、どこに住めるかも、職場でどう扱われるかも、子育てのしやすささえ変わってしまう。その現実を目の前に突きつけられるたび、「結局、勝負なんてスタート地点でもうほとんど決まっているんじゃないか」と、どうしようもない虚しさがこみ上げてくる。(36歳男性・IT企業勤務・年収600万円・郊外在住)
【解説】家も子育ても、親の援助があるかないかで、現実は驚くほど違ってくる。援助があれば都心に家を購入でき、子どもを親に預けて安心して働ける。そんな暮らしが「理想のライフスタイル」として華やかに紹介されるたび、胸の奥がチクリと痛む。でもその一方、援助のない人たちが住宅ローンや教育費、送迎や家事、残業の調整まですべてを自分の力で抱え、必死に日々を回している。努力しても埋まらない差があるからこそ、「こんなに頑張っているのに報われない」と感じるのは、とても自然なことだ。
結婚すれば少しは生活が楽になると思っていたのに、実際にはむしろ負担が増えている。そんな現実に戸惑うのも当然だ。でも、それは能力や努力の差じゃない。ただ、スタートラインが根本的に違うだけのこと。援助のある人には、「これって本当に自分の実力なのかな」という別の悩みがあるように、誰もがそれぞれの不安やモヤモヤを抱えながら生きている。だから、比べすぎなくていい。動かせない差に心を削られるより、自分のペースで積み上げてきたものを見つめよう。援助がなくてもここまでやってきたあなたは、間違いなく強い。支えがなかったぶん、現実をしなやかに乗り越える力が確実に育っている。その強さこそが、これからの人生を間違いなく力強く支えていく。
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『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』
著/勝木健太 小学館
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勝木健太 かつき・けんた
1986年生まれ。京都大学工学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経てフリーランスとして独立。2019年にAnd Technologiesを創業し、2021年には同社をみらいワークス(現東証グロース上場)へ売却。売却後は、執行役員としてリード獲得DX事業部を統括し、2年間の任期を満了して退任。著書に『「マウント消費」の経済学』(小学館)、『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績に『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)など。
構成/DIME編集部







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