なんかモヤモヤする。それは「価値観の押しつけ」社会の中で生きているから感じることだという。
人間関係のモヤモヤは、ほぼ立場のマウントであると言われる。他人と自分を比べ“自己の優位性を示す=マウントを取る“は、生存戦略として私たちの遺伝子に組み込まれた本能で、逃れることはできない。
なぜ遺伝子に刻まれたのか?
マウントとモヤモヤの構造を読み解く話題の書籍『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』から一部を抜粋してその正体を丁寧に紐解いていく。
モヤモヤをなくせばうまくいく「配属のモヤモヤ」
(1)やりがいのモヤモヤ──「ありがとう」だけじゃ、生きていけない。介護する側にも人権を
【ケース】介護の現場は、本当に人手が足りない。だから「来てくれるなら基本誰でもウェルカム」となりがちで、その結果、ちゃんと動けて段取りを組める人のほうが少数派なんて職場も珍しくない。「え、この人が介護する側?むしろ入所する側じゃない?」と思うような人が、職員としてシフトに入っていることもある。そのぶん、他のスタッフがひとりで2~3人分の仕事を抱えて走り回るしかない。シフトを終える頃には体じゅうガチガチで、翌朝ベッドから起き上がるだけでもうんざりする。なのに、外から聞こえてくるのは「介護は奉仕」「利用者さんのありがとうで報われる」といったきれいなフレーズばかりだ。現場で働いている側からすれば、こっちだって生活のためにやっている、れっきとした労働なのに。ボランティアでもないのに、給料の話を口にした瞬間、「やっぱりお金目当てなんだ」と言いたげな視線を向けられるのが、いちばん腹立たしい。幹部クラスから「夜勤手当を払ってあげてるんだから、きつくても我慢しなきゃ」と真顔で言われたときは、笑うしかなかった。心の中ではずっと、「いや、あんた何様なんだ」と突っ込んでいた。
利用者は終始「お客様」扱いだから、どれだけ暴言を浴びても、叩かれても、ひたすら耐えて当たり前という空気がある。こちらが少し強めに言い返しただけで、すぐに「虐待」扱い。夜勤中にナースコールが同時に3つ鳴り、どこから先に行くか一瞬で判断して駆け出した背中のほうで、別の人が転倒し、その横では利用者同士が怒鳴り合っている。そんなカオスみたいな状況を、ほぼ最低賃金ぎりぎりの給料でどうにかさばいていく。それでも「やりがいがある仕事ですね」と言われると、「いや、やってられないが本音です」と喉元まで言葉がこみ上げてくる。(27歳男性・特別養護老人ホーム勤務・介護職・年収320万円・夜勤あり)
【解説】介護の仕事は「ありがとうで報われる」「奉仕の心が大事」とよく言われるけれど、現場の現実はそんなにきれいじゃない。人手が圧倒的に足りず、ひとりで何人分もの仕事をこなすのが当たり前になっている。夜勤ではナースコールが途切れることなく鳴り響き、転倒や暴言、喧嘩が同時に起きる。ほとんど寝る間もなく走り回り、体も心も限界ぎりぎりの状態で、それでも誰かの命を必死に支えている。それなのに、給料は決して高くない。
夜勤手当をもらっても生活に余裕はなく、「夜勤手当を払ってるんだから苦しいのは当然だろ」と幹部に冷たく言われたら、本当に心が折れそうになる。その一言は、現場で踏ん張る人たちの努力と誇りを踏みにじる、絶対に許されない言葉だ。おかしいのは、あなたじゃない。
あなたは過酷な現場で、人に寄り添い、命を支える専門性を磨き続けている。その力は、福祉や医療の枠を超えて、教育や接客、マネジメントにも通用する。これからの超高齢社会では、ますます欠かせない力だ。介護は「誰にでもできる仕事」なんかじゃない。体力も判断力も、人の心を受け止める繊細な力も必要な、立派な専門職だ。「もう無理」と思うのは、当たり前のこと。「おかしい」と感じるのは、弱さじゃなく、まっとうで健全な感覚だ。
(2)成果横取りのモヤモヤ──「手柄は上司、責任は部下」頑張るほど、名前が消えていく
【ケース】発表の日、拍手の中心に立っていたのは上司だった。「このプロジェクトは私が提案して」と誇らしげに話し始める声を聞いた瞬間、体の内側から血の気が引いていくのがわかった。この半年、プロジェクトの立ち上げから提案内容の設計、資料作り、データ集計、関数やマクロを組んだツール開発まで、実務を回してきたのはほとんど自分だ。深夜まで残ってスライドを直した夜も、土日にひとりで数字を洗い直した日も、いくつも思い出せる。それなのに、最終プレゼンのスライドに載っていたのは上司の名前だけ。私の名前はどこにもなく、本番の場でも「アシスタントとしていろいろサポートしてくれました」と軽く紹介されて、それで終わりだった。
失敗したときは「任せた以上、お前の責任だからな」と平然と押しつけてくるくせに、うまくいった途端、成果はきれいに自分の手柄として回収していく。見ているのは部下の成長でもチームの成果でもなく、自分のメンツと評価と出世ルートだけなんだろうな、と感じさせられる場面ばかりだ。報告書も同じ。最初のドラフトでは私の名前で作ったものが、提出の段階ではいつの間にか差し替えられ、最終版は上司の名義で社内を回っていく。何十時間もかけて組んだツールでさえ、「彼の開発したシステム」として紹介されていると聞いたときには、もう笑う気にもなれなかった。女であるというだけで、初めから「補助役」として枠を決められ、私の成果は「上司の業績」に書き換えられ、「ちょっと手伝った人」に矮小化される。頑張れば頑張るほど実績は横取りされ、「君はアシスタントでしょ」の一言で片付けられる。性別を理由に正当に評価されないうえに、積み重ねた努力の意味まで奪われるのが本当にきつい。何のためにやっているのか、自分でもわからなくなる。(28歳女性・IT企業勤務・システムエンジニア・年収520万円・入社6年目)
【解説】深夜まで残って作った資料も、何十時間もかけて仕上げたツールも、最後に名前を残すのはいつも上司。自分は「手伝ってくれただけ」と軽く紹介され、拍手も評価も、すべて持っていかれる。まるで「俺の手柄」にされるように、努力をまるごと横取りされる。でも、そんなやり方、どう考えてもおかしい。頑張れば頑張るほど裏方に押し込まれ、努力の意味すら見えなくなっていく。そんな状況で「やってられない」と思うのは、ごく当然のことだ。おかしいのは、あなたじゃない。成果を立場や性別で決めつける、古くて歪んだ慣習のほうだ。
あなたが積み上げてきた仕事は、誰かに横取りされても消えない。日々の工夫や判断、地道な気づきの一つひとつが、確実にあなた自身の力になっている。それは目には見えにくいけれど、確実に積み上がっていく「見えない貯金」のようなものである。今はまだ評価されなくても、その努力は必ず次のチャンスへとつながっていく。それでももし、限界を感じたなら、環境を変えることをためらわなくていい。異動でも転職でも、新しい場所に進むのは逃げじゃない。自分の名前で成果を語れる場所は、きっとどこかにある。「このままじゃ納得できない」と思う気持ちは、弱さじゃなく、自分を大切にしたいという正直なサインだ。その気持ちを、どうか無視しないでほしい。あなたの努力は、確実に力になっている。今はまだ報われなくても、その粘り強い頑張りが、これからのあなたの未来を、間違いなく押し上げていく。
(3)ノルマのモヤモヤ──「勝ち組」のはずが、数字と怒号に追われる証券営業の現実
【ケース】証券会社に入社したとき、親や友達からは「エリートコースだね」と、持ち上げられた。でも、実際に現場に出てみてわかったのは、そのイメージとはまるで違う景色だったということだ。最初に振られた仕事は、真夏の炎天下での飛び込み営業。スーツの中まで汗でびっしょりになりながら、見知らぬ家のチャイムを鳴らして「証券会社の者ですが」と頭を下げて回る。10軒連続で門前払いされたあたりで、「あ、これは自分には向いてない世界だ」と、悟った。支店に戻れば戻ったで、別の地獄が待っている。上司がホワイトボードをバンバン叩きながら「さっさと電話しろ、手を止めるな!」「いつかけるんだ、受話器放すな!」と怒鳴り続ける。支店長は支店長で、机を蹴り上げて「絶対やれ。どうなるかわかってるよな?」と恫喝してくる。昼休みに弁当を広げていたのに、途中で片づけられたこともある。
ノルマの中心は投資信託。正直、自分でも心から勧めたいとは思えない商品を、親戚や友人にまで頭を下げてお願い営業する。それでも数字が足りなければ、「10件?少なすぎだろ。
サボってたんじゃないのか」と詰められる。どれだけ走り回っても、「やり切った」という感覚はひとつも残らない。極めつけは、「ノルマ未達のお前が給料もらえるのおかしいだろ!」という一喝だった。机も椅子も蹴り飛ばされてガンガン音が響く中、顔を上げることすらできないまま、帰り道に寄った駅のトイレで、胃の中のものを全部吐いたこともある。外から見れば「大手証券=エリート」に見えるのかもしれないけど、中身はただの数字と怒号に潰される日々。売っても売っても次のノルマで上書きされて、誇らしさなんて一ミリも残らない。(25歳男性・証券会社勤務・営業職・年収450万円・入社3年目)
【解説】「勝ち組だね」と言われて入った証券会社で、待っていたのは怒鳴り声とノルマに追われる毎日だった。机を乱暴に蹴られ、営業の電話は一方的に切られ、朝から晩まで「数字を上げろ」と詰められる。目標を達成しても、「次はもっといけるだろ」と、さらに追い込まれる。息をつく暇もなく、気づけば心も体も限界まで削られていた。そんな環境で疲れ切ってしまうのは、あなたが弱いからじゃない。「数字がすべて」という仕組みそのものが、どう考えてもおかしいのだ。
売りたくないものを無理に売るのは違うと思うのは、とてもまっとうな感覚だ。あなたの誠実さは、押し売りではなく、信頼を育てる場所でこそ、まっすぐに光る。金融営業で培った粘り強さ、人の話を丁寧に聞く力、安心感を与える話し方。それらはどんな仕事でも確実に通用する。大事なのは、「ここで耐えること」ではなく、「自分をすり減らさずに生きること」。今の苦しさを「自分が未熟なせい」と責めなくていい。数字に追われながらも、人と真剣に向き合ってきたあなたには、確かな力がある。「もう限界だ」と思うのは、終わりのサインじゃない。「もっと自分らしく働きたい」という心の声だ。その気持ちを、どうか押し込めないでほしい。環境を変えることは、決して逃げじゃない。あなたの誠実さは、きっと次の場所で、より大きく報われる。
(4)希望外のモヤモヤ──配属通知の一枚で、積み上げた努力がゼロになる
【ケース】大学院まで残って研究を続けてきたのは、「いつかこの知識を開発の現場で活かせる」と本気で信じていたからだ。メーカーの研究職志望・総合職で内定が出たときには、「ようやくスタートラインに立てた」と胸が高鳴った。ところが、配属通知を開けてみると、そこに書かれていたのは、まさかの総務部。その瞬間から、頭の中の歯車がずれていく。同期たちは白衣を着て実験室にこもり、「このデータ、特許狙えそうじゃない?」なんて楽しそうに話している。そのすぐ横で、俺がしているのは「ホチキスの針が切れてます」といった連絡の受付と手配。研究室で何年もかけて積み上げてきたものが、配属通知一枚で別ジャンルの仕事に上書きされたようで、「努力って、こんなにもあっさり無かったことにされるんだな」と、どこかが一気に冷めた。気づけば毎晩、「明日、会社行きたくない」とつぶやきながら眠りにつき、リアルの友人の中で本気で「ガチで辞めたい」と言っているのは、自分だけなんじゃないかと思うこともある。配属ガチャも上司ガチャも、両方まとめて外した気分で、「課金して引き直せるなら今すぐ回したい」と何度も頭をよぎる。そんな中で参加した今日の飲み会で、先輩がふと「環境を変えたら、同じ人でも評価が180度ひっくり返るなんて普通にあるよ」と言っていて、「ガチャに失敗したら、自分から引き直しにいくのもアリなんだな」と思えた自分もいた。
衝撃だったのは、配属にも人間関係にも恵まれているように見えて、同僚と楽しそうにランチや飲みに行っていた同期の話だ。配属ガチャ当たり枠だと信じていたその子が、実は仕事でメンタルを削られ、クリニックに通っていると聞かされ、「こんな子ですら精神を病んでいる世界って、希望なさすぎだろ」と、さすがに笑えなくなった。配属通知一枚で人生の方向性を勝手に決められるくらいなら、自分でガチャ回したほうがよっぽどマシだ。(24歳男性・メーカー勤務・年収420万・総合職配属1年目)
【解説】大学院まで研究を続け、「開発で知識を生かしたい」と思って入社したのに、届いた辞令はまさかの総務配属。同期が白衣を着て楽しそうに実験の話をしている横で、自分は備品の管理や確認に追われる。積み上げてきた努力が、一瞬で無駄になったように感じるのはごく自然なことだ。けれど、それはあなたが評価されていないからではない。どんな環境でも動ける柔軟さ、任せられる安心感と信頼感。その能力を買われた結果でもある。希望外の部署でもちゃんと成果を出せる人は、実際そう多くはない。その冷静な対応力や確かな責任感は、これからの社会では確実に大きな武器となる。
ただ、納得できないまま我慢し続ける必要はない。会社から軽んじられていると感じたら、早めに転職を考えてもいい。異動を願い出るのも、第二新卒として仕切り直すのも、どちらも前向きで立派な選択だ。配属ガチャに人生を委ねるより、自分の意思で引き直す人生のほうが、ずっと健全で希望がある。「ここじゃない」と思うのは、逃げたいからじゃない。「まだ終わりたくない」と思えているからだ。その気持ちに、正直でいていい。あなたの努力や知識は、確かに息づいている。たとえ今は報われなくても、その経験は、きっと次の場所で力強く花開く。環境が合わなかっただけで、あなたの価値まで決まるわけじゃない。自分の手で未来を選び直せば、必ず「ここだ」と思える場所にたどり着ける。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
この本を読めば、マウントという補助線で自分と世界を見つめ直し、納得して生きる力を取り戻せるはず。そんなヒントが詰まった一冊をぜひ書店やオンラインでチェックしてみてください。

『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』
著/勝木健太 小学館
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勝木健太 かつき・けんた
1986年生まれ。京都大学工学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経てフリーランスとして独立。2019年にAnd Technologiesを創業し、2021年には同社をみらいワークス(現東証グロース上場)へ売却。売却後は、執行役員としてリード獲得DX事業部を統括し、2年間の任期を満了して退任。著書に『「マウント消費」の経済学』(小学館)、『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績に『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)など。
構成/DIME編集部







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