なんかモヤモヤする。それは「価値観の押しつけ」社会の中で生きているから感じることだという。
人間関係のモヤモヤは、ほぼ立場のマウントであると言われる。他人と自分を比べ“自己の優位性を示す=マウントを取る“は、生存戦略として私たちの遺伝子に組み込まれた本能で、逃れることはできない。
なぜ遺伝子に刻まれたのか?
マウントとモヤモヤの構造を読み解く話題の書籍『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』から一部を抜粋してその正体を丁寧に紐解いていく。
モヤモヤをなくせばうまくいく「就職のモヤモヤ」
(1)現場のモヤモヤ──「安定だから安心」のはずが、現場では使い捨てが当たり前だった
【ケース】高卒で上場企業の工場に入った。親や先生は「安定してるから安心だね」と口を揃えたが、実際に働いてみると、そんな実感はどこにもない。寮生活で会社側に全て管理されている体制で、まるで「使い捨て要員」みたいな扱いだ。年収は400万円。
毎月60時間超えの残業が常態化。1年に130日ほど休日はあるが、土日出勤も月に2~3回。チーム作業なのに人付き合いが苦手な俺は上司とうまくかみ合わず、いつもタスクが残る。愛想のいいやつは、上司とタバコ休憩で仲良くなって、おいしい仕事を回してもらっている。
代わり映えのしない日々で、楽しみは飯だけ。汗水垂らして地方工場で働いている従業員に「本社でカフェラウンジがオープン」みたいな会報送ってくるの、ほとんど拷問だろ。(25歳男性・高卒・上場メーカー工場勤務・年収400万円・入社7年目)
【解説】「安定してるから安心」と言われて入ったのに、安心なんてどこにもなかった。汗をかいて必死に働いている自分たちの頭上で、本社の人たちは優雅にコーヒーを飲んでいる。会報に載ったカフェラウンジのきらびやかな写真を見て力が抜ける。それはおかしなことじゃない。ただ、ちゃんと現実が見えているだけだ。毎日、黙々とラインを止めずに動かしているのは、他の誰でもなく、あなただ。その積み重ねは、どんな場所に行っても通用する力になっている。「このままでいいのか」と思うのは、決して弱さじゃない。むしろ、自分の人生をまっすぐに見つめているからこそ生まれる、健全な感情だ。真面目に働く人ほど、報われにくい時代かもしれない。けれど、その真面目さこそが、あなたの武器だ。大事なのは、がむしゃらに頑張り続けることじゃない。長く働ける自分なりのペースを見つけること。肩の力をそっと抜いて、会社とほど良い距離を保つこと。それが、心を守るコツだ。
忘れないでほしい。最初の職場がゴールじゃない。今いる場所は、社会を知るためのスタート地点にすぎない。「仕組みの問題」と「自分が弱い」を混同しないこと。モヤモヤするのは、まだ自分を諦めていない証拠だ。「このままじゃ終われない」と思える気持ちがある限り、人生は、いつだって何度でもやり直せる。
(2)憧れのモヤモヤ──憧れの仕事は、いつの間にか人生をすり減らす場所になっていた
【ケース】美容師になりたくて専門学校を出てサロンに入った。最初はシザーケースを腰につけただけでうれしかったけど、現実はクソ安月給で立ちっぱなしの毎日。リモートなんてできるはずもなく、この体ひとつで稼ぐしかないのに、手取りはバイト以下。やらされるのは掃除、タオル畳み、先輩のおつかい。シャンプー作業で腰を痛めても「根性でやれ」と言われる。独立できるような資金も勉強の時間もない。パワハラも日常茶飯事。普段は普通に雑談してるのに、技術を教えるときには豹変して怒鳴ってくる。売上で天狗になった先輩はタバコ臭いまま顔を近づけて説教してくる。休憩もろくに取れず、12時間以上立ちっぱなしで働かされたあとに「はい練習ね」と2時間拘束。手指はシャンプーで荒れてひび割れ、足の裏はジンジンして感覚がなくなる。( 21歳女性・美容師アシスタント・専門学校卒・年収240万・入社2年目)
【解説】「夢を追って飛び込んだのに、現実は安月給と怒鳴り声の毎日だった」そう感じるのは、何も間違っていない。美容師の世界では「修業だから」とよく言われるけれど、実際のところ、あれは修業というより、苦行だ。朝から晩まで立ちっぱなしで、重たい荷物を抱えて掃除や買い出しに追われ、まともな休憩もほとんど取れない。それでも「根性が足りない」「やりがいで頑張れ」と怒鳴られる。どう考えても、それは健全な職場環境とはいいがたい。夢や情熱を、都合よく搾取されているだけだと気づいたあなたは、むしろ正しい。心が折れそうになるのは、弱いからじゃない。理不尽を理不尽だと敏感に感じ取れる、その感性があるからだ。あなたはすでに、国家資格を持つ立派な美容師。その積み重ねた努力や技術は、誰にも奪えない。
もし今のサロンが合わないなら、違う働き方を選んでいい。最近は、美容師の資格を生かして新しい道に進む人も確実に増えている。眉毛サロン、メンズ専門、ヘアメイク、フリーランス。働き方はいくらでも柔軟に変えられる。もう「ひとつの店で一生やれ」という時代じゃない。自分に合ったスタイルを、自分が心地よく続けられる形で選べばいい。夢だったのに現実は違ったと感じるのは、「夢を諦めろ」というサインじゃない。「もっと自分らしく輝ける場所を探せ」というサインだ。理不尽に気づけた時点で、あなたはすでに次のステージに立っている。そのモヤモヤを無理に押し殺さなくていい。「このままじゃ終われない」と思う気持ちがある限り、人生は、何度でも、ここから始められる。
(3)大手のモヤモヤ──「大手に決まったのに報われない」SNS社会でこぼれ落ちる劣等感
【ケース】MARCHから大手メーカーに内定した。親も先生も「十分立派だよ」って言ってくれるけど、その「十分」がどうしても引っかかる。なんか「一流じゃない」って遠回しに言われてるみたいで、素直に喜べない。就活中も「MARCH枠」でひとくくりにされるのがずっと嫌だった。実際は大学ごとに全然違うし、学部のレベルだって差があるのに。
早慶に対しても、どうしても劣等感を持ってしまう。説明会で「出身大学は?」って聞かれて、隣で「早稲田です」「慶應です」って出ると、もうその瞬間に空気が変わる感じがして。自分だってそれなりに勉強してきたのに、「トップクラスじゃない」というラベルを勝手に貼られてる気がする。
内定報告の飲み会では、友達が「3年目あたりでシンガポール配属らしい」なんて話してて、俺は笑いながら聞いてるけど、心の中ではずっと、「自分は結局そこまで行けなかった」って思ってる。大手メーカーに決まったはずなのに、SNSで「商社内定!」「外資コンサル決まった!」って投稿を見るたびに胸がざわつく。(22歳男性・MARCH卒・大手メーカー内定)
【解説】大手メーカーに内定したのに、SNSを開くと「商社」「外コン」といった華やかそうな名前ばかりが飛び込んでくる。親や先生には「十分立派だよ」とやさしく言われても、その「十分」という言葉がどこか胸に引っかかる。まるで「一流じゃない」と遠回しに言われているようで、素直に喜べない。ここまで必死に頑張ってきたのに、心の奥にモヤモヤが残る。けれど、そんなふうに感じるのは決しておかしなことじゃない。誰だって、ふと比べてしまう瞬間がある。むしろ、それだけ真剣に努力を積み重ねてきた証拠だ。大手メーカーに入るというのは、本当にすごいこと。地道な努力を重ね、限られたチャンスを自分の力でつかみ取った。その実力は、間違いなく本物だ。
SNSの中でキラキラ輝いてみえる商社や外コンの人たちも、実際は強いプレッシャーと厳しい競争の中でもがいている。肩書きの派手さが、幸せを決めるわけじゃない。社会に出たら、どこに入ったかよりも、そこで何をどれだけ積み上げたかが大切になる。メーカーの仕事で得られる経験は、確実に人の生活を支える力になる。「自分のキャリアは地味かもしれない」と感じる日があっても、それは真面目に頑張っている証拠。焦らなくていい。あなたの努力は、確かに未来へつながっている。比べるより、自分のペースで一歩ずつ進めばいい。気づけばきっと、あなただけの道ができている。
(4)性差のモヤモヤ──「女子だから通ったんでしょ?」その一言が、努力の価値を奪っていく
【ケース】就活中ずっと耳にしたのが、「女子は有利だよね」っていう言葉だった。最初は聞き流していたけれど、内定が出るたびに「枠で取られたんじゃないの?」と陰で言われているような気がして、素直に喜べなかった。実際、男友達からも「美人の女子は通りやすいからいいよね」と冗談めかして言われることがあって、そのたびに自分の努力が軽く扱われているように感じてしまう。説明会や面接では「女子学生歓迎」とはっきり書かれた募集を見ることもあり、なんだか心がざわつく。大学でも女子枠の導入が話題になっていて、自分の内定までもが「性別の恩恵」だと見られてしまう気がする。もちろん必死に準備してきたし、何社も落ちて悔しい思いもしているのに、その努力は見てもらえない。内定報告をしても「女子は有利だからね」と片付けられると、誇らしい気持ちよりも、むしろ虚しさが残る。焦りや不安に加えて、努力が性別で上書きされてしまう感覚が、就活のモヤモヤをよりいっそう大きくしている。(22歳女性・日東駒専卒・大手金融内定)
【解説】何枚もエントリーシートを書き、何度も落ちて、それでも粘り強く立ち上がってきた。その全部をいちばんよく知っているのは、他でもないあなた自身のはずだ。それなのに「女性枠で受かった」と言われると、胸の奥がざわつく。その違和感は、まっとうで誇るべき感性の証である。悔しいのは、「ちゃんと自分の力で認められたい」と思っているからにほかならない。「女子学生歓迎」と書かれていても、誰でも通るわけじゃない。最後に選ばれるのは、地道に準備を重ね、努力を積み上げてきた人だけだ。
あなたが手にした内定は、社会が少しずつ変わり始めた時代の中で、自らの力でつかみ取ったものである。「女性枠」というのは特別扱いではない。これまで不自然に狭かった入口を、ようやく少し広げただけのこと。社会に出たら、性別よりも誠実さや仕事ぶりで評価されるようになる。どんな言葉を投げかけられても、あなたの努力まで軽くできる人はいない。「女子だから」と言われてモヤモヤするのは、努力を心から大切にしている証拠。その気持ちは、まっすぐで、揺るぎなく、そして強い。
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いかがだったでしょうか?
この本を読めば、マウントという補助線で自分と世界を見つめ直し、納得して生きる力を取り戻せるはず。そんなヒントが詰まった一冊をぜひ書店やオンラインでチェックしてみてください。

『モヤモヤをなくせばうまくいく マウント社会をこう生き抜け』
著/勝木健太 小学館
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勝木健太 かつき・けんた
1986年生まれ。京都大学工学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。PwCコンサルティングおよび監査法人トーマツを経てフリーランスとして独立。2019年にAnd Technologiesを創業し、2021年には同社をみらいワークス(現東証グロース上場)へ売却。売却後は、執行役員としてリード獲得DX事業部を統括し、2年間の任期を満了して退任。著書に『「マウント消費」の経済学』(小学館)、『「いい会社」のはずなのに、今日もモヤモヤ働いてる』(ダイヤモンド社)、企画・プロデュース実績に『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)など。
構成/DIME編集部







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