市場調査会社ミンテル(本社:ロンドン)が発表した「2026年:グローバル ビューティ&パーソナルケアトレンド予測」では、キーワードとして「ウェルネス重視の美容」「五感の相乗効果」などが挙がっている。
SNS映えはもう古い!?2026年の美容トレンドキーワードは〝理由で選ぶ〟
2025年もさまざまなトレンドが誕生した美容業界。「今年は成分推しのスキンケアやヘアケアがトレンドで、2026年もトレンド成分は変化しながらもその傾向は続きそう…
今回は、美容分野のグローバルなトレンドと共に、日本におけるトレンド、そして2026年の展望について、ミンテル 美容・化粧品部門 プリンシパルアナリストの長谷川怜子氏に聞いた。
1.代謝から見る美容~ウェルネス重視の美容
美容はグローバル規模で、健康、テクノロジー、パーソナライゼーションが融合する新しい段階に入っている。特に細胞レベルの体の内側からの健康に根ざす美容ケアがトレンドだ。
例えば、バイオマーカー(体の状態を示す生体指標)の検査や代謝のモニタリング、エネルギー補給・水分バランス・細胞修復を最適化する個別ケアなどがある。
こうした「ウェルネス重視」のトレンドの背景について、長谷川氏は次のように回答する。
【取材協力】
長谷川 怜子氏
ミンテル 美容・化粧品部門 プリンシパルアナリスト
美容・パーソナルケア分野におけるトレンド分析・予測および製品開発において、10年以上の経験を有する日本オフィスを拠点とするアナリスト。日本の美容市場におけるトレンド分析とインサイトの提供を担当し、In-Cosmetics Koreaなどの展示会講演やグローバル展開する大手美容ブランドに向けた講演実績あり。
●ウェルネス重視の美容がトレンドになっている背景
「パンデミック以降、免疫力やメンタルヘルスへの関心が急速に広がり、スキンケアやヘアケアも単なる外見の改善ではなく、体内の代謝やストレス管理と結びついた総合的なウェルネスを重視する傾向が強まっています。
さらに、科学的エビデンスに基づく成分や、機能性食品との融合が進み、ビューティとヘルスの境界が曖昧になっています。この流れの中で、代謝やホルモンバランスを整える美容法が注目され、ブランドは『内側と外側のケア』を統合した提案を強化しています」
●日本でのウェルネス重視の美容トレンド
「日本でもウェルネス志向は確実に広がっていますが、その特徴は『安心・安全』と『習慣化』です。海外ではバイオマーカーやパーソナライズ栄養など、先進的で革新的なアプローチが急速に普及しています。
一方、日本ではまずストレス軽減、腸活、睡眠改善など、日常生活に取り入れやすい方法が重視され、無理なく続けられることが価値とされています。
合わせて高齢化社会における健康寿命の延伸への関心が高まり、スキンケアやヘアケアにも予防医療的な価値を求める動きが広がっています。
こうした背景から、日本では世界的な潮流を取り入れつつ、安心感と継続性を軸にした商品やサービスが増えています」
●急速に伸びている分野・注目領域と理由
「注目されているのは『代謝モニタリング』と『個別最適化ケア』です。ウェアラブルデバイスやアプリで血糖値や水分バランスを管理し、そのデータをスキンケアやサプリメントに反映する仕組みが進化しています。
また、ランコムの『Cell BioPrint』のように、肌の生物学的年齢を測定し、将来的な肌トラブルを予測する診断デバイスも登場しています。こうした背景には、科学的根拠に基づくパーソナライズ提案が信頼性を高め、消費者の自己管理志向と一致していることがあります。
さらに、『NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)』など細胞修復やエネルギー補給をサポートする成分への関心も高まっています。エイジングケアとウェルネスを融合させるアプローチが加速している点が、今後の美容市場の大きな特徴です」
2.コスメによる五感の相乗効果
そして感覚を刺激するコスメのトレンドもある。製品は「日々の気分をコントロールするツール」としての役割を持つようになっている。
例えば神経科学により、香りで気分を整える機能性フレグランスや、VR(バーチャルリアリティ/仮想現実)やAR(オーグメンテッドリアリティ/拡張現実)などの没入型テクノロジーという新しい発想が生まれている。
長谷川氏はそれぞれについて次のように解説する。
「神経科学の応用では、香りや音楽を使ってストレスを軽減し、リラックス効果を高めることで、スキンケアや美容体験の効果を引き出す『感覚誘導型美容』が進化しています。脳科学に基づいた香りのブレンドや、音楽による気分調整などがその一例です」
「没入型テクノロジーでは、VRやARを活用し、製品の使用感や仕上がりを仮想空間で体験できるサービスが登場しています。例えば、日焼け止めを使わなかった場合の肌変化をシミュレーションするAR体験や、メイクの色味や質感をリアルタイムで試せるMR(ミックスドリアリティ/複合現実)メイクシミュレーションなどです。単なる機能価値を超えた『感情価値』を提供し、ブランド体験をより深くする動きが広がっています。
例えば、フランスの敏感肌向けスキンケアブランドであるアベンヌは、2024年にSnapchatを活用したARキャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、日焼け止めを使用しなかった場合に、肌の見た目が長期的にどのように変化する可能性があるのかを、ARを通じてユーザーに体験させる内容となっていました。
コーセーも高速プロジェクションマッピングによるMRメイクシミュレーション『Mixed Reality Makeup』を2022年よりコーセーのコンセプトストア Maison KOSÉ 銀座にて展開しています」
●体験価値重視の背景と日本市場との関係
化粧品業界では世界的に「体験価値」を重視する流れが世界的に強まっているという。その背景とは?
「従来の香りやテクスチャーといった付加価値に加え、ブランド全体を通じた体験が求められるようになっている背景には、モノ消費からコト消費、トキ消費へのシフト、SNSで共有できる体験の重要性、そしてCX(カスタマーエクスペリエンス/顧客体験価値)を高めるデジタル技術の進化があります。
日本では、実店舗やポップアップでブランドの世界観を体験させる取り組みが以前から盛んでした。一方、海外ではデジタルの進化や体験型リテールの需要が、ポップアップの人気を後押ししています。
今後の課題は、こうしたリアルな体験をどこまでデジタルで再現・拡張できるかという点です。香りや質感など五感に訴える要素は完全なオンライン化が難しいため、ARやVR、ハプティックス(振動などにより触感のフィードバックを提供する技術)による疑似体験に加え、香りや質感を想起させるクリエイティブな画像や音源を活用し、ライブ配信やオンラインイベントで特別感を演出するハイブリッド戦略が鍵となるでしょう」
2026年の世界の美容トレンド全体像
最後に、2026年の展望について長谷川氏に総括してもらった。
「2026年のキーワードは『科学と感性の融合』です。代謝やバイオマーカーを活用したウェルネス重視の美容が進化する一方で、五感を刺激する没入型体験がブランド価値を高めます。さらに、AI(人工知能)やデータ解析によるパーソナライズ提案が一般化し、美容は『健康・感情・テクノロジー』を包括する領域へと拡大します。今後はさらに、外見の美しさだけでなく、心身の調和を求める時代に突入していくでしょう」
美容健康分野に興味がある場合は、2026年はこれらのトレンドを押さえておくことは必須といえそうだ。
取材・文/石原亜香利







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