
ここ数年、「交通分野での国主導の実証実験」という言葉をよく聞くようになった。
日本の交通業界は、文字通り岐路に立たされている。少子高齢化に起因するタクシー及び路線バスの利用者の減少、そしてドライバーの担い手不足の只中にあり、公共交通機関を再設計しなければいけない段階に日本は突入している。そのためには法改正を行う必要が生じる場合が大半ではあるが、その前に「この新事業は本当に収益を得られるのか?」というような実証実験を行わなければならない。
そこで国交省は、独自に『COMmmmONS』というプロジェクトを立ち上げた。これは一言で言えば「交通関連の斬新なビジネス、集まれ!」である。何と、特設サイトも存在する。
このサイトが、本当に面白い!
「どのアプリでも呼べるタクシー」を目指す
日本という国では、交通関連ビジネスへの進出には長い道のりが設けられている。
今現在オペレーションを行っている交通事業者に無断で新規路線を許可する、ということは今の時代にはできない。多くの場合は自治体を巻き込む大事業になる。思いつきで手を出すことができない分野ということは確かだ。
が、それでも国交省は野心的かつ「新しい」事業を探している。
COMmmmONSのサイトを見てみると、これが官公庁のものであるとは到底思えない雰囲気がすぐに確認できる。このプロジェクトに参画している企業及び事業を、以下にいくつか取り上げたい。
まず最初は、「タクシー配車アプリの複数乱立問題」に切り込む事業である。
日本でもスマホアプリからタクシーを呼べるオンラインサービスが定着しつつあるが、より広域的な視野で見てみるとそこに大きな問題が立ちはだかる。「地域毎に使えるアプリがバラバラ」という問題だ。これは各地域に独自のタクシー会社が存在し、それぞれが別のアプリを導入しているから。結果、日本列島は「配車アプリのモザイク」と化している。
株式会社電脳交通は、それを解消するための中間システムの開発に取り組んでいる。
「アプリを使えばタクシーがすぐ呼べる」――そんな便利な時代になったはずなのに、地域や会社ごとに使えるアプリはバラバラ。「結局、どれを使えば一番早いのかわからない」なんて経験はありませんか?
この“ちょっとした分断”をなくすための実証実験が、いま全国で始まろうとしています。2015年創業の徳島市発スタートアップ、株式会社電脳交通が取り組むのは、「タクシー配車業務・システムの共通化プロジェクト」。事業者間の壁を越えて、「どのアプリからでも、どのタクシー会社にもつながる」世界を目指します。
(タクシー配車業務・システムの共通化プロジェクト COMmmmONS)
事業者毎に異なる配車アプリを、共通の仕組みと接続することによってどのアプリからでも問題なく該当地域のタクシーを呼ぶことができるのだ。
新幹線とタクシーの連携プロジェクト

タクシーといえば、COMmmmONSにはこんな事業もある。
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、株式会社ケー・シー・エス、そしてやはり電脳交通が実証実験を行っている「新幹線×タクシーの予約連携プロジェクト」だ。これはJR東日本の指定券予約サービス『えきねっと』を活用した仕組みになっている。
利用者は出発前、えきねっとで新幹線を予約する。同時に降車駅でのタクシーを予約するのだが、これには利用者が乗車駅の新幹線改札口を通ったことをタクシー会社のオペレーターに通知する仕組みが備えられているのだ。
この実証では、新幹線などの予約サービス「えきねっと」と、電脳交通のクラウド型タクシー配車システム「DS」を連携させ、列車の到着時刻に合わせてタクシーを事前に手配できる仕組みを構築します。
さらに、Suicaの改札通過情報をリアルタイムで取得し、タクシー側で利用者の到着を把握。無駄な待機時間を削減しつつ、スムーズな乗車体験の提供を目指します。
(新幹線×タクシーの予約連携プロジェクト COMmmmONS)
タクシー会社から見れば、利用者の到着時間が「見える化」するため効率的な配車が可能になる。上の引用にもある通り、タクシーを駅前で長時間待機させる必要が省かれるのだ。
今の時点では、JR高崎駅での実証実験に留まっているが、同様の仕組みが全国の駅に広がっていくことは間違いないだろう。
来院・離院時間に合わせてオンデマンド交通を自動予約

COMmmmONSの中には不思議な呼び名の事業もある。「ヘルスケアMaaS社会実装プロジェクト」は富士通株式会社と富士通Japan株式会社が開発を手がけているが、これは一体どのようなことを行っているのだろうか。
地方都市では、病院に行くためにタクシーや公共ライドシェアを使っている人が少なくない。中には居住の自治体が運営しているオンデマンド交通を利用して病院に行く場合も。しかし、帰りはどうするのか?
「病院に行くときは送迎サービスやAIオンデマンド交通を使っているけれど、帰りは使えない」
そんな声を耳にしたことはないでしょうか。
各地で通院支援の交通サービスは整ってきていますが、実際には「帰りの足」がなかなか使われていません。その理由のひとつが、診察がいつ終わるか予測しにくく、帰りの移動手段を予約しづらいということです。
(ヘルスケアMaaS社会実装プロジェクト COMmmmONS)
では、どうするのか? 富士通グループは地域のAIオンデマンド交通と電子カルテを組み合わせて、その利用者の来院及び離院時間を予測してそれに基づく予約を自動生成する仕組みを開発するのだ。行きも帰りも、AIが移動手段を用立ててくれるということである。
今回の実証では、富士通の電子カルテシステムとAIオンデマンド交通を組み合わせたプロトタイプを開発します。診察予約と車両の配車手配を一体化し、診察終了見込み時間をデータから予測。その情報をもとに、帰りの交通手段を自動で手配したり、帰宅途中の立ち寄り先を案内したりする仕組みを検証します。
(同上)
筆者自身、病院へ行った家族の帰路のために愛車のダイハツ・コペンを走らせたことがある。なぜそういうことをせざるを得ないかというと、「自分の診察がいつ終わるのか見当がつかない」からだ。が、そうしたこともAIに予測させ、オンデマンド交通と連携させよう……というのがこの事業の肝である。去年の11月から12月にかけて、徳島県で実証実験が行われている。
「日本の交通再編」の縮図
以上、COMmmmONSの採択プロジェクトのいくつかを取り上げた。
COMmmmONSの特設サイトは、そのデザインからして官公庁のサイトのイメージを覆すもので、しかも見やすい。どのような事業が採択されているのかが、簡単に把握できる。
そしてこれは、現在進行形で進められている「日本の交通再編」の縮図でもある。日本の近未来をいち早く観察できる「小さな窓」と言ってもいいだろう。
【参考】
COMmmmONS
タクシー配車業務・システムの共通化プロジェクト COMmmmONS
新幹線×タクシーの予約連携プロジェクト COMmmmONS
新幹線×タクシー連携予約サービス開始! 群馬県高崎市で全国初となる「交通空白」解消型MaaSの実証実験を実施します JR東日本
ヘルスケアMaaS社会実装プロジェクト COMmmmONS
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文/澤田真一
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