国民的アニメ『ドラえもん』の歴史的名作『海底鬼岩城』が、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』として再映画化され、2月27日から公開となる。
今回、宣伝アンバサダーに就任し、ゲスト声優として物語の世界に飛び込んだのは、お笑いコンビのアルコ&ピース。
子どもの頃から「ドラえもんは海や空と同じように当たり前に存在していた」と語る平子祐希さんと、映画のノベルティを今も大切に保管する酒井健太さん。
長年のファンである2人を待ち受けていたのは、芸人としての経験値が全く通用しないアフレコ現場。そして大人になって改めて、ドラえもんの物語の奥深さに気づかされたという。ひみつ道具『どくさいスイッチ』に自身のキャリアを重ねる平子さんの独自視点とは……?
DIME独占取材でのロングインタビューをお届け!
PROFILE アルコ&ピース
平子祐希と酒井健太によるお笑いコンビ。2006年結成。『THE MANZAI 2012』『キングオブコント2013』ではいずれも決勝に進出した。現在はテレビやラジオをはじめ、幅広い分野で活躍中。
「コント経験が全く通用しない」「脳みそ腫れちゃう」別ジャンルに思えたアフレコ
――ゲスト声優に決まった時のお気持ちは。

平子「通常の仕事の時のようにマネージャーから告げられて、その時は『わかったよ』くらいの反応でした。でも家に帰って、『ドラえもん……? あのドラえもん……だよな?』って、感覚が麻痺しているというか。後からジワジワきました。『ドラえもん』は海や空や山と並列で、“生まれた時からにあったもの”なので。その“内側”に入るという感覚が、まだちょっとよく分かんない」
――実感がわかないという感じでしょうか。
平子「初めて(フジテレビの)『森田一義アワー 笑っていいとも!』に出演した時の感覚に似ているかな。タモリさんは自分が生まれた時からいた人で、見てきた人。そのタモリさんが自分の名前を目の前で呼んでいて、頭は中学時代の自分に戻って訳が分からなくなっている。『映画ドラえもん』への出演も、そもそも存在が大きすぎて、自分が今どこにいるのか分からない状態です」
――酒井さんはいかがですか。
酒井「僕も、今もまだ実感はわいていないですね。実際にもうアフレコもしたのに、まだ信じられない状況です」

――アフレコ現場はどんな様子でしたか。
酒井「2人で現場に入って、先に平子さんがやって。平子さんは割となんでもできるから器用にやれるかなと思ったら、最初からつまづいていて(笑)。『これはマジでヤバいぞ』って震えました。後攻の方がラッキーだと思ったんですけど、僕もモゴモゴしちゃって、全然何もできない状況でしたね」
平子「コントやナレーションなど声を出す仕事はやってきたし、いろんな現場に行っているので『意外とできるだろう』と思っていましたが、もう別ジャンルというか、全く触れたことのない領域で。
自分が出しているつもりの声と聞こえる声が違ったり、単純に『口に合わせる』という作業が難しかったり。『思ったより早い』『思ったより置きに行く』とか、タイミングのズレや距離感の難しさがありました」
――お互いが声を吹き込む場面を見てどう感じましたか。
平子「いや、そんな(相方を見る)余裕なかったです! 自分の中がもうパンパンになっていて。焦りと刺激とショッキングさで、脳みそがちょっと腫れたんじゃないかっていうぐらい。最低でも半年ぐらい、どこかで修行を積んでからやらないと、脳みそ腫れちゃう(笑)」
酒井「アフレコの前に台本は読んでいましたが、自分なりにやってきていたコントなどの経験も全く通用しなかったです」
平子「(お笑いの時)は現場に、“パターンC”、“パターンD”ぐらいまで持って行くんです。『Aじゃない』と言われたらBを出して、『Bじゃない』と言われたらCを試す。『Cじゃない』と言われたらDを持っていって微調整する。
でもアフレコ現場では、AでもBでもCでもDでもなかったっていう。その現場に立った時のパニック感がありました」
「好きだからこそ追い出す」大人になって改めて分かった意味が深く刺さった
――『ドラえもん』はコミックから数えると50年以上の歴史があります。これまでの作品で好きなアニメや映画はありますか。
平子「僕は最初にコミックから入って、『海底鬼岩城』もばあちゃんちで読んでいました。『水中バギー』が大好きで、今回この作品への出演が決まった時は運命のようなものを感じました。アニメも見ていて、『森は生きている』という回が印象に残っています。これは、のび太がママとケンカしたりジャイアンたちから意地悪されたりと嫌なことがたくさんあって、『自分は一生森に住むんだ』と決意して裏山に住む話です。
ドラえもんのひみつ道具を使って住みやすい森になるのですが、そこには裏山の精霊というか、“山の心”がいるんです。裏山(山の心)のおかげで、さらに森は“より住みやすい環境”になるのですが、そのせいでのび太は裏山に依存してしまいます。ドラえもんは“山の心”を呼び出して、『このままではのび太がダメになる』と伝え、ドラえもんの説得を受けた裏山(山の心)は、のび太を追い出すんですよ。その最後にドラえもんが、裏山(山の心)に向かって『君も本当にのび太くんが好きだったんだね』って語りかける描写があって」
――深いお話です。
平子「子ども心に、当時はそこがピンとこないんですよ。『なんで好きなのに追い出すの』って。裏山が『のび太を好きだからこそ追い出す』っていう、その理屈がよく分からなくて、『ピンとこない不思議な回』として子ども心に残っていました。
それが大人になって、自分の子どもも生まれて、よりその描写が分かるどころか、もう深く刺さるワンシーンになっていて。見る時々で意味合いが変わる・理解度が深まるという意味でも、すごく印象深いお話でした」
酒井「僕は初めてドラえもんの映画を見に行ったのが(1990年の)『ドラえもん のび太とアニマル惑星』。作品はもちろん面白いんですけど、ノベルティが欲しくて(笑)。
ノベルティ欲しさに友達と何度も見に行った記憶があります。その時のノベルティもまだ実家にあります(笑)」
フリー芸人への憧れを“セルフどくさいスイッチ”で自ら戒める
――『ドラえもん』といえばひみつ道具ですが、もし1つ選べるとしたら、何の道具を使ってみたいですか。
酒井「僕は、パンに写した内容を丸暗記することができる『アンキパン』ですね。ネタをスラスラ言えるように(笑)」


平子「いいんじゃないですか!」
酒井「“しゃべくり漫才”みたいなのをやったことがないので、『アンキパン』を使ってネタをバシバシやってみたいですね」
――そのネタもぜひ見て見たいです。平子さんはいかがですか。
平子「僕は、気に入らない人間や生物を消し去ることが出来る『どくさいスイッチ』です」


――『どくさいスイッチ』で消された人間や生物は、最初からこの世に存在していなかったことになります。未来の独裁者が開発させた道具ですが、実際には『独裁者を懲らしめる為の道具』です。
平子「『どくさいスイッチ』は、のび太が痛い目にあう回に登場しました。のび太が嫌いな人を次々と消していって、最後に後悔する。いかに周囲の人が大切かというのを思い知らされる道具です。これは他の道具と一線を画すというか、『便利な使い方』というよりは、『己の思い上がった慢心さを思い知るため』のダメージが、自分の方に来る道具。他にあまりないものです」
――ダメージが自分に来る『どくさいスイッチ』を選んだ理由は。
平子「今、周りにフリーの芸人が増えています。収入の手取りだったり自由な働き方だったり、フリーの“良い側面”ばっかりが流れてきていて、『羨ましいな』と思っちゃったりしています。でも自分は、マネジメントをしてもらって仕事が来て、他の番組との裏被りなどの時間の調整もしてもらって、衣装もメイクさんも手配してもらって、入り時間などの微調整もしてもらっている。
仕事に集中できるように、みんなにやっていただいている。『フリーに憧れすぎて忘れているんじゃないか』という自戒もこめて、『どくさいスイッチ』を選びました」
――平子さんクラスでもフリーに対する憧れがあるのですね。
平子「めちゃくちゃあります。いい話ばっかり聞こえてくるので。いい話がいっぱい回ってくると、自分の置かれている環境のありがたみが闇に隠れて、自分がいる環境の悪いところばっかりが浮き彫りになって、『羨ましい』となっちゃう。『そうじゃないんだ』というのを思い知らせるために『どくさいスイッチ』を使って、周りに支えてもらっていることを思い知るというか。
まぁ、実際に『どくさいスイッチ』を使わなくても、(考えすぎて)“セルフどくさいスイッチ”でその境地に行き着いたんですけど」
――自分で自分を戒めることができましたね。
平子「そうですね。考えていたら自分で『どくさいスイッチ』押していた、みたいな(笑)。『己の今の立ち位置を見直す』というのが、自分にとって必要な作業だなと」
『海底鬼岩城』は“エンターテインメントと事実”が混じり合ったショッキングな作品
――今作は海底が舞台です。もし「水中バギー」に乗って海底1万メートルの世界に行けるとしたら、どんなことをしてみたいですか。
酒井「沈没船とか見に行ってみたいですね。歴史的にも、海の中に沈んで分からなくなっている船もたくさんあると思うので、見てみたいですね」
平子「小さい頃に83年作の『海底鬼岩城』を見た時、マリアナ海溝とか、エベレストよりももっと高い山が海中にあることを知って、“エンターテインメントと史実”が絶妙に混じり合っていてすごくショッキングでした。学術的というか、ある種、教科書の側面もあって。それまでは自分の中で『海』というと海岸でパチャパチャ遊ぶのが関の山で、どうしても空や宇宙に思いを馳せがちでした。
でも、『深い海溝があって、人間はとてもじゃないけど辿り着けなくて、水圧というものが存在してペチャンコになって人間は生きられないんだ』という学術的なところに着目させた。僕もそれで深海に興味がわいていろいろ調べました。だからやっぱり、行きつけない場所というところで、海溝に行ってみたいですね」
――『海底鬼岩城』の「水中バギー」はもともと人間の心が分からず、しずかちゃんを筆頭に人と関わっていく中で、『人間がどういうものか』を知ってきます。今回の映画を通してお2人が学んだことがあったら教えてください。
平子「水中バギーの存在やキャラクター性はすごく特殊な存在感というか。僕が人生で初めて触れた“ツンデレ”かもしれないです。前半でツンデレのキャラなのに、最後に“男気の塊”というか、自己犠牲の精神と尊さを見せる。心にブッ刺さったというか。この年になっても、『水中バギーの精神を強く持っておかなきゃいけない』と色濃く残っています」
酒井「今回、声優の仕事をさせていただくにあたって、またコミックスを読み返してみたんです。やっぱりいまだに、いろいろと気づかされることが多くて。年齢を重ねて、50歳手前になって読み返してみても、またちょっと違った見方になったので、永遠に教材になる作品だなと思います」

『ドラえもん』は永遠の教材、1万ページの教科書
――映画を楽しみにしている方にメッセージを。
平子「この作品は、僕が幼な心に感じた学術的な部分はもちろん、冒険譚や、『誰かを守る』という心など、1万ページの大きな教科書をギュッと映画にまとめてくれたストーリーです。親子、恋人、ご家族、友人、大事な人を連れだって見てほしいです」
酒井「これから初めて見るお子さんはもちろん、当時見て今大人になった人たちも、改めて『あの時こうだったな』と思い返してほしいです。自分もそう思ったので。子どもも大人も、みんなで見に行ってほしいです」
2月27日(金)公開!『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』
1983年公開作がついに再映画化。ドラえもんのひみつ道具「水中バギー」を使って海底キャンプに向かったのび太たちは、謎の海底人・エルに出会う。海底人が恐れる「鬼岩城」とは一体? 地球の運命をかけたドキドキの大冒険に出発する!
『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』 公式サイト
取材・文/コティマム 撮影/田中麻以 スタイリング/久保佑美奈 ヘアメイク/久木田梨花(アートメイク・トキ)
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2026







DIME MAGAZINE

















