義母の介護で痛感した、“身元保証人不在”という現実
ひとり暮らしをしていた義母の歩行が困難になり、介護施設に入所することになった。長男である夫が義母の身元保証人となりさまざまな手続きをしたが、筆者夫妻には子供がいないし、数少ない親戚も高齢化が進んでいるので、将来、身元保証人を頼めそうな人がいないという事実に気づいた。
よく考えてみると、高齢化が進む日本社会において、「身元保証人がいない」という問題は、もはや一部の特殊なケースではない。つまり、これまであたりまえのように家族が担ってきた役割を代行してくれる存在が必要不可欠な時代になっているのだ。そんな存在として、高齢者の身元保証などを代行してくれる「身元保証サポート」サービスというものがあることを今年の年初、新聞広告で知った。
興味を持ってざっと調べてみると今、日本国内には高齢者向け身元保証等サポート事業者が約400社もあるという。もし依頼する場合、その中から何をポイントに選べばいいのか、費用はどれくらいかかるのか、そもそもどんなことをやってくれるのか…。400社もある事業者のどこに聞けばいいかもわからなかったので、身元保証サポート事業者として日本で唯一、「公益社団法人」として認定されている「シニア総合サポートセンター」に話を聞くことにした。
「シニア総合サポートセンター」とは?
公益社団法人シニア総合サポートセンター(以下「シニア総合サポートセンター」)は、2014年4月、虎ノ門法律経済事務所を設立母体として誕生した。身元保証サポート事業者は400社前後あっても、設立年数が5年未満の事業者が圧倒的に多いというから、この業界では歴史が長いといえる。
設立の背景には、弁護士事務所に寄せられる「身寄りがなく、誰にも頼れない高齢者からの相談」が年々増えてきたという現実があった。弁護士が直接、日常的・継続的な生活支援や緊急対応まで担うのは、業務の性質上どうしても限界がある。そこで、法的専門性を土台にしつつ、高齢者一人ひとりの生活に寄り添う実務を専門に担う組織として、同団体が立ち上げられた。
取材に対応してくださったのは、同団体副理事長の鈴村 洲太郎氏、同じく副理事長の谷川賢史氏、事業企画室長の青木 伸夫氏の3名。さっそく素朴な疑問を率直にぶつけてみた。
Q1…そもそも「身元保証人」とは?「連帯保証人」とどう違う?
青木氏「一口に『身元保証人』と言っても、その中身は決して単純ではありません。一般に【身元保証】は身体的・生活面での支援を引き受ける役割、【連帯保証】は金銭的責任を負う役割であり、【緊急連絡先】は緊急搬送時の駆けつけ対応が求められます。これら複数の役割が組み合わさったものが【身元保証人】といえるでしょう。特に病院では、これらが明確に区別されないまま一括りにされるケースも多いですね」
身元保証サービスとは、そうした一切を総合したものを言うらしい。では具体的に、何をしてくれるのだろう。
青木氏「当団体の『総合身元保証サポート』を例にとりますと、大きく『身元保証』『生活支援』『死後事務支援』の3つに分けられます。身元保証とは、施設への入所や入院時に求められる身元保証人、それらにかかる費用の連帯保証人、退所時や退院時の身元引受人、緊急搬送時などの緊急連絡先の対応を行うサービスです。
生活支援は、例えば怪我や病気などの緊急時の駆けつけ対応や入院手続きの対応、入退院の立ち合い、必要品の購入、医師との協議、手術の立ち会い、病院受診の付き添い、安否確認などです。また施設への入所に関しては、ケアマネージャーや施設担当者との協議、施設の見学同行、入居契約の立ち合い、転居時の付き添い、住所変更などの代行も含まれます。
死後事務支援とは、身元引受人として行うご逝去後の対応です。親族に代わって葬儀や納骨を行い、居室の片付け、返還や諸費用の清算、さまざまな公的な事務手続きの代行などをします」
単に「手続きに必要な保証人の代行」というイメージしかなかったので、病院の付き添いや老人ホームの見学同行といった、家族にしか頼めないようなことも頼めることに驚いた(ただし生活支援には、その都度料金がかかる)。そして何より不安なのは、全体の料金だ。
Q2…料金はいくらくらいかかる?
青木氏「当団体の場合は入会金が1万年、年会費は1年につき1万円、終身にわたるサポートを行うための事務管理費が53万9815円、病院や施設の身元保証を引き受ける対価となる身元保証料が35万6481円、葬儀・納骨などの死後事務手続きの対価や実費の支払いに充てる死後事務委託金が50万円から、総合計金額が141万6296円からとなります」
これが果たして高いのか安いのかわからないので、「身元保証」で検索して、上位にヒットした業者と比較してみた。システムや内容が異なるので「身元保証料」のみで比較したが、33万円、66万円、99万円とかなり幅があった。サービス内容が違うので料金だけで比較はできないと思うが、同団体の35万6481円という身元保証料金は相場と比較して高くないことがわかった。
Q3…どんな業者を選べばいい?
料金の相場も、どんなことをしてもらえるのかも、うっすら見えてきた。しかし一番気になるのは、「では、どんな業者を選べば間違いないのか」ということ。一番確実なのは、消費者庁のまとめた「身元保証等高齢者サポート事業」に関するチェックリストに沿って確認することだという。
消費者庁が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」に基づき、事業者が消費者(高齢者)に提供すべき説明や、契約締結時・履行時の確認事項をまとめたチェックリスト
確かに重要なことが書かれているのはわかるが、30項目もあり、契約書のすみからすみまで読まないとチェックできなそうでハードルが高い…。そう訴えると、谷川氏が以下の3つのポイントをあげてくれた。
身元保証サービスを選ぶ時の3つの注意ポイント
(1) 契約内容が書面で明確に示され、丁寧に説明されているか
谷川氏「まず大前提となるのが、『何を、いくらで、どこまでやってくれるのか』が、きちんと書面で定められているかどうかです。身元保証サービスでは長期契約になるケースが多くなるため、サービス内容や費用、解約時の扱いなどが曖昧なまま契約するのは非常にリスクが高いと言えます。信頼できる事業者であれば、契約書だけでなく『重要事項説明書』を用意し、要点を一つひとつ説明する仕組みを整えています。
一方、地域密着型の小規模なNPO法人や一般社団法人の中には、書面の整備や説明が不十分なケースも見受けられます。『信頼関係があるから』『昔からこうしているから』といった理由で契約書を交わさない、あるいは内容説明が口頭のみという場合は注意が必要です」
つまり入口段階で、契約内容が明確に文書化され、それを納得いくまで説明してもらえるかどうか。この点は、身元保証サービス選びの最初の、そして最も基本的なチェックポイントといえそうだ。
(2) 預託金(預かり金)の管理方法が安全か
谷川氏「二つ目の大きなポイントが、預託金の管理です。身元保証サービスでは、本人が亡くなった後に発生する葬儀費用や納骨費用、各種清算のために、あらかじめ一定額のお金を預ける仕組みが一般的です。亡くなった後は本人から支払いを受けることができないため、事前に預かる必要があるからです。
ここで重要なのは、『そのお金を誰が、どのように管理しているか』です。過去には、預かったお金を事業者自身が管理し、別の用途に流用してしまった結果、破綻に至った法人もありました。手元に自由に使えるお金があると、経営が苦しくなった際につい使ってしまう——そのリスクを防ぐ仕組みが必要なのです。現在、信頼性が高いとされている管理方法は主に二つあります。一つは、預かったお金を信託会社などの『お金を預かる専門機関』に再度預ける方法です。死亡の事実など、正式な証明がなければ払い出されない仕組みになっており、資金がしっかり保全されます。もう一つは、弁護士や司法書士に預ける方法です。これら以外の方法、特に『自分たちで管理しています』という説明を受けた場合は、慎重に判断したほうがよいでしょう」
ちなみに同団体は公益法人なので、毎年の事業報告、原則3年に1度の監査など、継続的に行政のチェックを受け続けなければならない。
鈴村氏「利用者にとって長期、場合によっては人生の最終段階まで関わるサービスだからこそ、公明正大であることを制度的に担保することが何より重要。そこで外部の目が常に入る体制をあえて選びました」
(3) 遺贈寄付を「条件」にしていないか
谷川氏「三つ目は、遺贈寄付に関する姿勢です。身元保証サービスは、決して大きな利益が出る事業ではありません。数十年にわたって利用者を支えるため、運営は常に安定性が求められます。その中で、一部の団体では、利用者が亡くなった後に財産の一部を寄付してもらう『遺贈寄付』を、運営資金の一助としている場合があります。
利用者がサービスに心から感謝し寄付をするのであれば、それ自体は問題ではありません。ただし遺族から見れば、疑念を抱かれやすい部分でもあります。特に注意したいのは、『契約時点で寄付が条件になっている』ケースです。こうした条件を提示する事業者には、慎重な姿勢が求められます」
近年、終身サポート事業者向けのガイドラインが策定され、2つの業界団体が立ち上がった。シニア総合サポートセンターが中心となっている「高齢者等終身サポート事業者協議会」は、比較的業歴が長く、利用者数や事例を多く持つ事業者で構成されているのが特徴だという。
「家族の代替」ではなく、「社会のインフラ」へ
取材を通じて感じたのは、未婚率が上昇し、子どもを持たない選択が増え、地縁・血縁の希薄化が進む現代において、身元保証や終身サポートが、もはや「特殊な高齢者向けサービス」ではないという現実だ。一方で、長期にわたり人の人生に深く関わる事業だからこそ、事業者の質や透明性には厳しい目が必要で、公益法人という形を選び、行政のチェックを受け続ける姿勢は、その一つの回答だと感じた。
谷川氏「身元保証サービスは、家族だけに責任を背負わせないための社会的な受け皿として、今後さらに制度的な整備と理解が進むことが求められています」
鈴村氏「身元保証サービスに関して消費者センターに届く声は、苦情というより『どんなものかわからない』という不安が多いと聞いています。安心して利用していただくために、業界全体でさらなる周知のための取り組みが必要と考えています」
取材協力/公益社団法人シニア総合サポートセンター、高齢者等終身サポート事業者協議会
取材・文/桑原恵美子







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