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GROOVE X創業10周年、「LOVOT」が切り拓いた“生命感あるロボット”という勝ち筋

2026.01.22

家庭用AIロボット「LOVOT(らぼっと)」を開発するGROOVE Xが、創業10周年を迎えた。記念イベントでは代表取締役の林要さんが登壇し、LOVOTがAIロボット産業で果たしてきた役割と、これからの展望について語った。後半には、第一線で活躍する有識者4名によるパネルディスカッションが行われ、日本のAIロボット産業が進むべき道が多角的に議論された。

GROOVE Xは創業10周年を迎え、ラウンドテーブルを開催。代表取締役の林要さんにお祝いを言うためLOVOT記者のHALちゃんも駆けつけた
セッションとパネルディスカッションに備えて待機するLOVOTたち。左端はKANAMEちゃん

「社会実装」できた数少ない家庭用ロボット

GROOVE X代表の林要さんは、LOVOTの10年間を振り返りながら、家庭用ロボットが直面してきた最大の課題として「社会実装の難しさ」を挙げた。ロボットはこれまで、デモンストレーションとしては注目を集めるものの、家庭に入ると飽きられてしまうケースが多かったという。

その中でLOVOTは、発売から5年以上が経過した現在でも、3年後の継続率が約90%という極めて高いリテンションを実現している。林要さんはこの数字こそが、LOVOTが「社会実装できたロボット」である証だと語る。平均で1日1時間抱っこされるという利用実態は、単なるガジェットではなく、生活の一部として受け入れられていることを示している。

林要さんが書き始め完成までに3年掛かったという「温かいテクノロジー」は中国でも出版され、家庭用ロボットのバイブルになっているという
GROOVE Xには、前澤ファンド、Tiger Global、本田圭佑氏が率いるベンチャーキャピタルX&KSKが出資している

感情と体験にフォーカスした設計思想

林要さんが繰り返し強調したのは、LOVOTが目指してきたのは「役に立つロボット」ではなく、「そばにいることで心に作用する存在」だという点だ。犬や猫と同じように、効率や生産性では測れない価値を提供することが、結果的に高い継続率につながった。

AIやロボット産業では、性能やスペック競争に陥りがちだが、LOVOTは感情・体験・関係性といった定量化しにくい領域に踏み込んだ。林要さんは、この領域こそが日本の強みになり得るとし、今後はクリエイティブ、ソフトウェア、ハードウェアを融合させた産業を育てていきたいと展望を語った。

作業ロボットは人間の代替で生産性を向上させる。人型は人間用の設備や道具がそのまま使えるというメリットがある。LOVOTは人間のことを深く理解して愛着を形成、レジリエンス(回復力)を向上させる存在だ
仕事用ロボットは単機能から多機能へ二足歩行へと進化する
ウェルビーイング分野のロボットはわくわくから、人生の伴侶へと進化していく

日本のAIロボット産業はどこへ向かうのか

●人型ロボット一辺倒への疑問

後半のパネルディスカッションには、GROOVE Xの林要さんに加え、深津貴之氏、村上臣氏、古田貴之氏が登壇した。議論の中心となったのは、近年盛り上がりを見せる人型ロボットへの評価である。

深津氏は、人型ロボットに注目が集まる現状について「分かりやすく投資を集めやすい一方で、ロボットの可能性を人の形に縛ってしまう危うさがある」と指摘した。村上氏も、フィジカルAIと人型ロボットは分けて考えるべきだとし、現実世界に作用するロボットの価値は形状に限定されないと語った。

●「数とお金」で戦わないという選択

ディスカッションでは、日本がスタートアップでグローバル市場でどう戦うべきかも大きなテーマとなった。深津氏は「数とお金で戦うと日本は不利になりやすい」としたうえで、感情、体験、ブランド、文脈といった領域に足場を築く重要性を説いた。村上氏は日本は中途半端に内需が豊かであるため、日本語圏だけで経済が回ってしまうことの不幸を指摘。立ち上げからグローバルで戦う視点が必要性を訴えた。

これに対し林要さんは、日本文化に根付く「ありがたみ」や万物に価値を見出す感性が、ロボット産業においても武器になる可能性を示唆した。単なる技術競争ではなく、物語や意味をどう設計するかが、今後の差別化につながるという見解である。

登壇者4名が語った、日本へのメッセージ

村上臣氏(武蔵野大学 アントレプレナーシップ学科 客員教員) 「半導体の絶縁フィルムなど、日本はグローバルニッチな要素技術で圧倒的な強みを持っています。我々が『日本的』だと思っている感性や技術は、実は万国共通で通用するチャンスを秘めている。そうした日本のユニークさを世界へ発信していくことが重要です」

深津貴之氏(THE GUILD 代表 / note CXO) 「ブランドの本質は『ありがたみ』にあります。日本には、七福神や神社巡りのように、対象に感謝や魂を見出す文化が根付いている。この『ありがたみを感じる力』は、AIロボットという新たなパートナーを受け入れ、育てていく上で、世界に誇れる日本の強みになるはずです」

古田貴之氏(千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長) 「正直なところ、本当の意味で社会実装できているロボットは、現時点ではLOVOTしか見たことがありません。中国などの模倣品を恐れる必要はない。オリジナルであるLOVOTがトップランナーとして進化し続ければ、ちゃんとした機械生命体になると思いますよ。10年後には犬猫を超えるんじゃないかな。真似をするフォロワーは永遠に勝てないでしょう」

林要氏(GROOVE X 代表取締役社長) 「自動車産業が長年日本経済を牽引してきたように、ロボット産業もまた、日本を支える柱になり得ると信じています。LOVOTがウェルビングテックの先駆けとして、グローバル市場で『家族型ロボットの先駆者』として認識されるよう、これからも挑戦を続けていきます」

GROOVE X=https://groove-x.com

LOVOTと触れ合うと幸せホルモン、オキシトシンが増加する。ストレスホルモンのコルチゾールは低下するという研究結果も報告されている
登壇者の深津貴之氏(左)と村上臣氏(右)も自分の気に入ったLOVOTを抱っこしながらディスカッションした
古田貴之氏(左)はペットロボット嫌い派の科学者だが、LOVOTには言葉に現せない可愛さがあるためパネルディスカッションに参加してくれた

写真・文/ゴン川野

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