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米国がベネズエラを〝運営〟する?トランプ発言を松下幸之助と本田宗一郎ならどう裁くか

2026.01.11

「運営する」と言った瞬間、話は“経営”になる。

トランプ米大統領は記者会見で、「安全で適切かつ賢明な政権移行が完了するまで、われわれが(ベネズエラを)国を運営する」と述べました。この「運営する(run)」という一言が出た瞬間、話の重心は軍事や外交から“経営”の視点を持ちました。

もっとも、この“運営”が行政の直接統治まで意味するのか、影響力行使や資源・収益の管理を指すのかは、報道上も整理が揺れている点には留意が必要です。

なぜなら、「運営を引き受ける」ということは、単に政権を倒す以上の責任を背負うことになるからです。企業経営に例えるなら、新たな子会社や事業部門を丸ごと預かるようなもので、その瞬間から問われるのは経営者としての判断です。

まず、運営を宣言した以上、責任・コスト・撤退条件といった経営的視点を無視できなくなります。責任とは、その国の日々の行政サービスや経済活動が滞りなく回るよう保証する責務です。軍事作戦の成功だけでは終われず、「いつまでに何を達成したら運営を引き渡すのか」という出口戦略まで考える必要があります。

例えば企業買収でも、買収後の統合や将来の売却条件を考えず勢いで決めれば失敗しかねません。同様に国家の“運営”も、開始前に終了条件を定めておくのが経営者的判断でしょう。

またコストの問題も現実的です。国家運営には莫大な資金と人材が必要です。特にベネズエラの場合、石油産業の復興が鍵ですが、試算には幅があり、10年で約1000億ドル規模という見立てもあれば、15年で最大1850億ドルに達し得るという分析もあります。

経営者の目線では、「やった」より「引き受けた」後の方が怖いのです。なぜなら、成果を上げ続ける責任と、それに伴うコストが永続的にのしかかるからです。つまり、市場は理想論ではなく実際に誰が運営し、どれだけ石油を供給できるかを注視しているのです。経営の観点でも、組織やプロジェクトを引き継ぐ際には、世間の評価以上に実務が回るかどうかが重要であり、投資家や市場もそこを見ています。

→ 経営者視点では、「やった(攻略した)」より「引き受けた(運営する)」瞬間の方が本当の勝負です。軍事介入の成否より、その後の日常業務を如何に維持し改善するか――この怖さと重みを理解しているかどうかが、経営者としての資質を映す鏡になります。

松下幸之助なら、まずこう考える?

問い(1) これは誰のものになるのか?

松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助なら、この事態にまず「それは誰のものになるのか?」と問うかもしれません。米国が「運営する」とは言いましたが、ではベネズエラという国の権限や資源、そこで生まれる成果は誰のものなのか?と考えるはずです。

松下幸之助は生前、「企業は社会の公器である」と説きました。企業(あるいは組織)の持ち主は自分ではなく社会であり、人材・資金・物資など経営資源はすべて社会から預かったものだと考えたのです。この考え方に立てば、たとえ米国が一時的にベネズエラを掌握しても、その権限や資源は「自分のもの」ではなく「預かりもの」という認識になるでしょう。トランプ氏が宣言した「運営する」は、その国を預かる責任を引き受けたことを意味します。

もしかしたら、松下幸之助ならトランプ氏にこう問いかけるかもしれません。「それはあなたの手柄ですか、それとも預かった責任ですか?」と。軍事作戦の成功を「自分の手柄」と捉えるのか、それとも約2,850万人のベネズエラ国民の暮らしを預かった「重い責任」と捉えるのか――この違いは経営の舵取りを大きく左右します。

松下は「権限・資源・成果は預かりもの」という信条を理念ではなく判断基準としていました。もし彼がこの状況に直面したなら、まず自らに「自分は何を預かったのか」を問い、責任の所在と目的を明確にするでしょう。

こうした思考習慣から考えてみると、米国によるベネズエラ運営は「預かったものをどう扱うか」という問題に他なりません。自国の勝利として振る舞えば傲慢の芽が生まれますが、預かった責任として臨めば謙虚さと慎重さが生まれます。

松下幸之助なら、「自分のものではない大切な預かりものを任された」という緊張感を持って、まず権限の使い方や成果の帰属を丁寧に考えることでしょう。

本田宗一郎なら、ここを見る

問い(2) 現場は本当に回るのか?

一方、ホンダ創業者の本田宗一郎なら、「現場は本当に回るのか?」とまず着目するでしょう。工場のラインでもレース現場でも、自動車の神様と呼ばれた本田宗一郎は、机上の理屈ではなく現場で起こることを直感的に想像する天才でした。

トランプ氏の「運営」発言に対しても、彼ならその先にある具体的な現場の光景を思い浮かべるかもしれません。

例えば、首都カラカスの役所は明日から正常に機能するのか、停電や物流はどう影響を受けるのか、住民は安心して暮らせるのか――そうしたリアルな情景を想像し、「果たして本当に回るのか?」と問うでしょう。

本田宗一郎は「夢は大きく、目標は高く」であっても、「やっていることは現場主義」だと言われます。彼自身、「ちゃんと物を見て、直に物に触れ、現実をよく知らなきゃいけない」という“三現主義”(現場・現物・現実)を創業当初から徹底していました。

どんなに立派な計画や理論があっても、自分の目で見て手を動かさなければ何も分からないという考えです。「前提となる理論や計算はもちろん大切だけれども、やってみなければわからないこともある。頭の中や机の上の考えだけで、『やってもどうせダメだろう』と言って手を動かさないところからは、何も生まれない」という、まさに現場で起こる生々しい現実こそが真実だという信念です。

この信念に照らすと、米国がベネズエラを運営する計画にも「机上の空論になっていないか?」いうチェックが欠かせません。

本田宗一郎なら、作戦会議室のプランだけで満足せず、現地の役人や技術者、生活者の視点で「その運営プラン」を検証するでしょう。例えば、現場で何が止まり、誰が困り、何が必要かを細かく洗い出すはずです。石油プラントの操業は再開できるのか?現地スタッフとの言語・文化の壁は?治安維持にどれほど人員が要るか?――そうした具体を詰めずに「運営する」と言っていないか、嗅ぎ取ろうとするでしょう。

では、もし本田宗一郎がトランプ氏の立場だったら何を問うでしょうか。

想像するに、彼はトランプ氏にこう尋ねるかもしれません。「それを引き受けて、現場は回りますか?」と。

すなわち、「あなたはベネズエラを運営すると言うが、現地の人々の日常や産業は本当に動くのか?」という問いです。

大統領の演説で高らかに語られる構想も、現場で電気が止まり水が出なければ絵に描いた餅です。本田宗一郎の視線は常に地に足の着いたリアルに向いていました。彼ならきっと「そのプランで具体的にどこまで現場が動くのか」をしつこいくらい確認し、動かすための工夫を次々と提案したでしょう。

本田宗一郎の言葉に「『それはムリでしょう』『おそらくダメでしょう』といった言葉は、『やってみもせんで、何をいっとるか』という一喝で消し飛んでしまう」というものがあります。彼は不可能に見えることでもとにかく現場で試行錯誤しろと促しました。

ただし、それは場当たり的に突進することとは違います。徹底的に現場を観察し、小さな兆候から問題点を洗い出し、手を打つ。この積み重ねで初めて大きな夢が現実になると知っていたのです。ベネズエラ運営という前代未聞の事業でも、本田の目はまず現場に注がれ、地道な検証と改善を繰り返すことでしょう。

2人に共通する“経営者の思考習慣”

松下幸之助と本田宗一郎。一見タイプの違う二人ですが、“経営者の思考習慣”という点で共通するものがあります。それは、判断を「勢い」や「正しさ」だけで終わらせないということです。彼らは大きな決断をする際、決してその瞬間の高揚感や周囲の称賛に浸って終わりにしませんでした。むしろ決断したその瞬間から、「ではこれを引き受けた後の運営責任はどうなるか?」と先を考える習慣が身についていました。

例えば松下幸之助は、どんなに事業が成功していても「驕るなかれ、これは社会から預かったもの」と自戒しました。

同様に本田宗一郎も、新製品がヒットしても「現場がついてきているか」「次の改善点は何か」と貪欲に追求しました。彼は成功を単なるゴールではなく新たなスタートと捉え、持続的に現場を磨き上げることに情熱を燃やしたのです。

二人に共通する視点は、「成功」そのものより「それを続けられるか」に注目することでした。企業経営において一度のヒットや一時の勝利は重要ですが、それを持続的な事業として回し続けることは別次元の難しさがあります。松下も本田も、その難しさを肌で知っていたのでしょう。だからこそ、彼らは判断の段階で既に「この選択は長続きするのか?」「将来にわたり維持できる体制は整っているか?」と自問しました。

おわりに

松下幸之助も本田宗一郎も、経営者として常に“逃げられない問い”を自分に課していました。

• それは誰のものか?(自分の利益か、社会から預かった責務か?)
• 現場は耐えられるか?(机上の計画ではなく、現実の現場は回るのか?)

これらはトランプ氏への問いであると同時に、私たち自身の仕事や判断にも通じる問いではないでしょうか。日々のビジネスでも、新しいプロジェクトを任された時、あるいはリーダーとして決断を下す時、その結果生じる責任の所在や現場への影響をどこまで考えられているか――。経営的視点とは、まさにそうした問いを先んじて発し、自らに答えを求める姿勢に他なりません。

2026年のベネズエラを巡る騒動は、一国の運命を左右する重大事です。

しかし本稿で見てきたように、「運営する」と宣言した瞬間から求められるのは、戦争の勝敗を超えた経営者の胆力です。それは松下幸之助や本田宗一郎といった偉大な経営者たちが示唆する問いを、避けずに直視することで初めて得られるものかもしれません。政治の世界であれ企業の世界であれ、何かを成し遂げる本当の勝負は、その後にそれをどう運営し続けるかにかかっています。

トランプ氏のベネズエラ「運営」発言をきっかけに浮かび上がったこれらの問いを、自分自身の仕事に置き換えて考えてみること――それこそが、本当の意味で経営目線で世の中の出来事を読み解くということではないでしょうか。

著者名/suzuki
肩書き/テックライター
経歴/企業史・起業家のストーリー、ビジネス文化の変遷を横断的に取材・執筆。教育・地域DXや情報リテラシーのテーマを発信。生成AIやテック全般の実務検証が得意。「難しいテクノロジーを生活のことばで伝える」がモットー。休日は山登りをしている。

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