昨年に40周年を迎えたスーパーマリオシリーズ
1985年に第一作が発売されたスーパーマリオシリーズは世界中で楽しまれるビデオゲームとして、全世界での累計の売り上げが4億1300万本以上(2022年3月末時点)に達している誰もが知るレジェンド的ゲームシリーズである。
昨年の2025年は40周年を迎えた『スーパーマリオブラザーズ』だが、その節目に昨年11月14日には任天堂株式会社の直営オフィシャルストア「Nintendo FUKUOKA(ニンテンドーフクオカ)」がオープンし、昨年11月から今年1月まではJR博多駅前広場や、JR博多シティ館内で「光の街・博多~HAPPY HOLIDAYS in HAKATA with SUPER MARIO~」が開催され、「スーパーマリオ」でデコレーションされた高さ14.9mの巨大なシンボルツリーや、全長約70mのLED装飾などが設置されて多くのマリオファンを楽しませている。
ゲームに登場する「マリオ」などのキャラクターの飄々としたどこかユーモラスな印象や、BGMと効果音のいい意味での脱力感などが実に親しみやすのだが、新たな研究ではスーパーマリオブラザーズやヨッシーのゲームをプレイすると、若者の燃え尽き症候群のリスクが軽減される可能性があることが報告されている。
〝マリオ〟は「子どものような好奇心」を育む

インペリアル・カレッジ・ロンドンと九州産業大学の合同研究チームが2025年12月に「JMIR Serious Games」で発表した研究では、スーパーマリオブラザーズのようなゲームは「子どものような好奇心」を育み、幸福感を高め、精神的な疲労を軽減する効果があることが示されている。この効果は、高いストレスや不安を抱える学生にとって、メンタルヘルスを改善するための有効なツールとして活用できる可能性がある。
米クラーク大学心理学部の教授のジェフリー・アーネット氏は、今日の若者はアイデンティティの探求において、特有の不安定さや不安も伴うことから18歳から29歳までを「エマージングアダルト(emerging adulthood)」という発達段階にあると定義している。青年期から成人期への移行期はかつてないほど複雑になり長期化しているのだ。
そして生活費の高騰と競争の激しい教育環境は、この年齢層の燃え尽き症候群のリスクを高めている。さらにソーシャルメディアでの絶え間ない他者との比較や、常にオンラインの対人交流を通じて、こうしたプレッシャーをさらに悪化させているといえる。
これらの蓄積されたストレス要因は、慢性的な疲労と冷笑的な精神状態につながる可能性があり、研究チームは特定のビデオゲームが解決策となり得るかどうかを解明しようと試みた。
研究チームは任天堂のゲームプレイの軽妙な特性が、精神のリセットをもたらすかどうかに焦点を当て、これらのゲームの特殊なデザインが、燃え尽き症候群に関連するネガティブな感情を打ち消す可能性があるという仮説を立てた。
〝マリオ〟は若者の燃え尽き症候群を軽減する

まず最初に研究チームはスーパーマリオブラザーズまたはヨッシーのゲームをプレイした経験がある41人の大学生を対象に詳細なインタビューを実施した。その目的は日常的な環境におけるゲームプレイの主観的な感情体験を理解することで、ゲームが学生たちの日常生活や感情の状態にどのような影響を与えたかを振り返ってもらったのである。
インタビューで学生たちはスーパーマリオブラザーズの明るい色彩と楽観的な音楽が安心感を与えてくれると語り、ある回答者はまるで「心地よく温かい毛布に包まれているような」体験だと表現した。
また雲の動きやジャンプの音といった細部までゲームを通して楽しめたと指摘する学生もいた。こうした視点の変化は、現実世界のややもすれば冷淡な状況から距離を置くのに役立ち、明確で達成可能な目標を提示するゲームは現実社会における曖昧な課題とは対照的な役割を果たしているのだ。
このインタビューの後、研究チームは336人の生徒を対象にアンケート調査を実施した。この調査では燃え尽き症候群のリスク、全体的な幸福度、そして子どものような驚きの経験という3つの具体的な変数が測定された。研究チームは子どものような驚きを、開放性、好奇心、発見への喜びの状態と定義し、統計モデルを用いてこれらの要因間の関係性を分析した。
分析の結果、ゲームによって誘発される驚きと人生全般の幸福感との間に正の相関関係があることが示されることになった。ゲームが驚きというメカニズムを通じて幸福感を高めることで、特に燃え尽き症候群を軽減する可能性があることを意味しており、この結果は男女を問わず一貫していた。
〝童心〟に帰ることの効能
研究チームは若年成人の燃え尽き症候群を防ぐ取り組みは伝統的な健康法だけでなく、喜びを取り戻すことの重要性をを指摘し、これらのゲームが「心の休暇」として機能すると主張している。
自然の神秘さや不思議さに心を奪われ、深く感動したり驚嘆したりする感性は「センス・オブ・ワンダー」と呼ばれ、大人になっても持ち続けるべき重要な感覚とされているが、この感覚は自然からだけではなくスーパーマリオブラザーズのようなゲームからも享受できるのである。
そして日常生活での〝小さな喜び〟はメンタルヘルスの維持に不可欠であるもいわれ、ストレス軽減、生産性向上、幸福感の増進に繋がると考えられている。
日々の学業や社会生活に疲れたり、孤独にさいなまれたりと現在の若者にかつてないストレスにさらされているといえるが、スーパーマリオブラザースのようなゲームをプレイして束の間であれ〝童心〟に帰ることの効能をあらためて理解しておきたいものだ。
※研究論文
https://games.jmir.org/2025/1/e84219
文/仲田しんじ
ファン待望の「バットマン2」は2027年10月公開 2022年3月4日に全米公開、日本では2022年3月に公開されたスーパーヒーロー映画『THE BATMAN-…







DIME MAGAZINE













