クアルトリクスはこのほど、第5回目となる年次レポート「2026年消費者トレンドレポート」を発表した。14の国・地域の約20,000人(日本1,500人含む)の消費者調査に基づき、本レポートは、日本におけるカスタマーエクスペリエンス(CX)の現状に関する重要なインサイトを提供するものだ。
1.AIを活用したカスタマーサービスにメリットを感じていない
調査の結果、メール作成、情報リサーチといった一般的なAI活用領域の中で、カスタマーサービスにおけるAIは最低評価となった。
AIによるカスタマーサービスを利用した消費者の約5人に1人が「メリットはなかった」と回答しており、これは他の活用例と比べてほぼ4倍という高い失敗率を示している。
特にカスタマーサービスのAI活用は、利便性、時間短縮、有用性の各項目で評価が低く、それよりさらに低評価だったのは「AIアシスタント」となった。
企業が多額の投資を行っているにもかかわらず、AIによるサービス品質向上は期待された効果を上げていないことがわかった。
AIによる顧客サポートの自動化に対して、消費者が最も懸念しているのは個人情報の不正利用だ。この懸念を持つ日本の消費者は55%に上る。
また、約4割(39%)の消費者がAIへの移行によるやり取りの質の低下を懸念し、さらに34%が提供される情報の信頼性に疑念を抱いている。
クアルトリクス合同会社のXM ストラテジー シニアディレクター 久崎智子氏は次のように述べている。
「AIを問題解決のためではなく、単なるコスト削減の代替手段として導入することは顧客体験を大きく損ない、結果的に逆効果となります。AIは人と人とのつながりを強化し、顧客体験そのものの価値を高めるために活用されるべきです。
この理想的な活用を実現するため、まずは十分な能力を備えたAIエージェントは、単純な定型業務や用件を効率的に処理するとこに設置し効率化を計り、人間のオペレーターは、複雑で高度な顧客課題に対応するために、AIが提供する背景情報や解決策の提案を参照しながら、解決する体制を構築することが理想です」
2. 日本の消費者は悪い体験後も購入を継続傾向:リカバリーの兆しを見逃さない対策を

カスタマーサービスにおけるAI導入は課題があるものの、調査対象となっている全業種の消費者体験は改善している。世界的にファストフード、オンライン小売などのブランドスイッチ(商品やサービスの乗り換え)が容易な業界では、満足度、信頼、ロイヤルティが最も大きく改善された。
一方、公共サービスのように乗り換えが難しい業界では、消費者体験の改善ペースが緩やかで、その結果、現状に満足している業界を狙う新規参入者の標的になりやすい傾向がある。
日本においては、満足度、信頼度、推奨意向、追加購入意向すべてにおいて世界平均と比較してポイントが約2倍上昇した。推奨意向や追加購入の意向は半数にとどまっていることから、「可もなく不可もない」場合でも微増傾向であることがわかった。
関税問題や物価高により経済の先行きが不透明となる中、世界の消費者は価格に敏感になり、46%が「価格に見合う価値」を求めたが、日本の消費者の場合は30%と、企業や商品を選ぶ理由について、決定打はなく、均一的な数字にとどまっている。
<日本の内訳>
さらにネガティブな顧客体験が売上に与えるリスクは、他国と比べて低い水準にある。具体的には、体験後に購入を停止したり、利用を削減したりする顧客が少ないことが起因し、売上のリスクは2%未満に留まっている。
このような「悪い体験しても停止しない」消費者の行動傾向から、企業は、惰性・無関心で継続する消費者にフォーカスし、質の高い体験の提供を通じて継続的な購入行動を促すことが、さらなる上位の提案を受け入れてもらう土台となり、効果的なアップセルへ繋げることができると考察される。
久崎氏は次のように述べている。
「日本の消費者はよほどの不満がない限り、購入を停止することがない傾向です。だからこそ、企業はお客様の声に耳を傾け、商品やサービス・利便性・カスタマーサービスも含めた体験を“選ばれる決め手”として重要視する必要があります。
あらゆるタッチポイントから得られるフィードバックは改善のための好機と捉えるべきです。長期的なロイヤルティは、価格競争だけで維持できるものではありません。包括的な顧客体験を磨き上げた企業が市場において大きな成果を上げています。
包括的な顧客体験の向上の施策に対するROIは即効性で評価するのではなく、中長期的な視点でこそ正しく評価されるべきです」
3.半数以上が悪い体験を「何も伝えない」、企業が消費者のフィードバックを得難い状況

企業がこれまで以上にインサイトを必要としている一方で、消費者からのフィードバックは逆に減少している。
「悪かった体験を企業に直接伝える」という日本の消費者はわずか10%で、2021年から4.5ポイント減少している。さらに「何も伝えない」という顧客は54%で、2021年から13.6ポイント増加している。
日本では、ネガティブな顧客体験をした際、約4割(39%)の消費者が実際には支出の減少につながるにもかかわらず、その不満が企業に直接届きにくい傾向がある。
こうした状況では、企業経営陣が変化する消費者の行動や、顧客離脱の原因を正確に把握することは難しく、結果として適切な対策を講じるのはさらに困難になる。
消費者からの直接的なフィードバックが得られにくい状況下において、SNSやレビューのような間接的なフィードバックは、企業が顧客の真の感情や潜在的な不満を補完するための重要な手段として、その重要性が高まっている。
成功を収めている企業は、この散在しているシグナル(兆候)を点と点でつなぎ合わせ、顧客の潜在的な感情を把握している。
久崎氏は次のように述べる。
「日本の消費市場ではサービス、質、価格とも平均的になっている傾向なので、差別化された価値を提供することがビジネス成長の鍵となります。そのためにもあらゆるタッチポイントでフィードバックを得ることが重要です。全方位でサーベイを実施しお客様の声を拾い、反映することで競争力が得られます」
4.パーソナライゼーションに必要なのは「より多くのデータ」ではなく「より多くの信頼 」
個々の体験に寄り添った対応をしてくれる企業から商品を購入したいと考える日本の消費者は44%にのぼる。
しかし、個別の体験を望むものの、そのメリットを受けるために個人情報を提供することには消極的な層が大半を占めているのが実情だ。
企業が個人データを適切に取り扱うと信頼している人は29%。懸念が大きいのは詐欺(22%)と企業での個人情報の売買(20%)だ。
消費者が比較的受け入れやすいのは、企業が消費者の購買習慣を学習するために個人データを使う場合だ。約3割(27%)が定番のコーヒー注文やおすすめアイテムの提案などに利用の際は許容できると回答している。
一方で、約4割(38%)は「パーソナライゼーション全般に抵抗感を抱く」と回答しているので、パーソナライゼーションの浸透は低い水準にとどまっている。
この調査結果は、明確な指針を示している。信頼を取り戻すためには、透明性の確保とユーザーによるコントロールの提供が不可欠だ。消費者の56%が「データの使用を自分で管理できるようになれば、データ提供に前向きである」と回答し、45%が「データセキュリティーについて説明があれば納得する」と答えた。
「企業はすべてのデータを所有することのみを目的として、あらゆる情報を収集するのは止めるべきです。必要以上のデータを求めるのではなく、顧客が何を必要としているかを理解する方が、詳細なプロファイル作成よりもはるかに重要です。その理解こそが、現状に合ったニーズに対応する鍵となります。データが体験を向上させた具体例を示し、透明性と顧客によるコントロールを提供することが、長期的なロイヤルティを生む信頼関係の基盤となります」と久崎氏は強調する。
<消費者調査について>
・対象:14の国・地域の20,001人の消費者(日本1,500人含む)
・機関:クアルトリクスXM Institute
・実施時期:2025年第3四半期
・対象国:オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、スウェーデン、アラブ首長国連邦、英国、米国
*回答は、各国の性別、年齢、収入の人口構成をもとに割り当てた回答数を設定している
出典元:クアルトリクス
構成/こじへい







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