株式会社前方後円墳『古墳墓』


竹田恒泰(たけだ・つねやす/前列右)
1800年ぶりの古墳新築に挑む。古墳のみならず三種の神器の制作からサイトの運営までこだわりつづけ新事業を創出。
若山浩之(わかやま・ひろゆき/前列左)
顧客サポートを担当。バスツアーや、「墓友」が生まれる同窓会を企画、アナログな顧客対応もカバーした。
本合史伯(ほんごう・ふみのり/後列右)
竹田が運営する(株)Exchangers情報システム部所属。サイト「古墳の窓口」と霊園のDXシステム基盤を構築。
丸茂 大(まるも・だい/後列左)
広報・広告を担当。広告に頼らないメディア戦略を立案し、古墳墓の事業の独自性を的確に世に伝えた。
一般人も古墳に入れる!ビジネスチャンスだった
死者はお坊さんにお経をあげてもらい、親族のお墓に入る──そんな弔いの形が変化しつつある。明治天皇の玄孫で、文化人・作家としても知られる竹田恒泰が話す。
「2024年にはお墓の購入者の約半数が、安価で手間もかかりにくい〝樹木葬(一般墓や納骨堂以外の簡易なお墓)〟へシフトしています。また少子化もあって墓地との契約を打ち切る〝墓じまい〟も増えていたのです」
彼自身にも悩みがあった。
「豊島岡墓地には竹田宮の墓所がありますが、私の父は三男で、一人一基の古墳に埋葬されるため、新規に古墳をつくるスペースがないのです」
竹田はいつしか、自分で古墳と呼ばれる神道式のお墓をつくれないか、と考えるようになった。一般の方たちが皆で入れるようにすれば、樹木葬同様に低価格にもできるはずだ。古墳時代には大小約10万基もの古墳墓が造られ、一般人も古墳に入っていた。現代でも宗教問わず入ることができる。もしや「終活」の現状を打破するきっかけになるのではないか?
「私、実は根っからの経営者なのです(笑)。子供の頃から実業家を目指し『ビジネスの本質は人の困り事を解決すること』と考えていました。例えばコロナ前まで両替所を経営していたのですが、銀行が休みの土日も店を開け、日本では両替しにくい通貨も扱うと、皆さん困っていたのでしょう、広告なしで年間140億円もの取引量を扱うまでになっています」
古墳の着想を得たのは23年末頃。まず、彼はよく知る考古学者らに思いを明かし、資料が比較的豊富で忠実に再現しやすい3世紀前半~中頃の大和地方の前方後円墳をモチーフにすると決めた。ここから彼は仲間を集めていくが、その経緯は着想が斬新すぎるが故に少々ユーモラスでもあった。
神器と古墳に太古の昔から続く〝日本人の祈り〟を込めました

現在販売中の古墳墓は3箇所

最も手頃なプランは遺骨を合同で埋葬する「合祀墓(合同永眠埋葬)」で10万円台から。千葉にはペットと共に入れる区画も。「大阪メモリアルパーク」は、建築家・安藤忠雄氏の設計。
古墳墓に納まる三種の神器

剣
神宮の御神宝も手がける刀匠・宮入法廣氏が黒塚古墳から出土した1800年前の「両刃の直剣」を再現。

勾玉
「生命力」や「守護」の象徴。糸魚川翡翠工房こたきが出土品をモデルに当時の姿を忠実に再現。

鏡
国内では数少ない鏡師、山本合金製作所・山本晃久氏が柳本大塚古墳の内行花文鏡を紋様まで再現。
©Wikimedia Commons
斬新すぎる話に錚々たるキャストが集まった理由
最初の壁は宗派だった。
「墓所は公的に許可されたエリアにしか造れないため、新規開業は現実的に難易度が高いのです。そこで既存の霊園さんに依頼し、中に古墳を造らせて頂こうと考えたのですが、日本の霊園の99%以上は仏教霊園です。一方、古墳墓は神道にあたります。様々な霊園に電話をかけたのですが……」
断られつづけた。話を聞いてもらえた霊園からも「定期的に神主さんが来るのは厳しい」「古墳はまだしも鳥居は難しい」と断られた。竹田から突然連絡が来た人の驚きはいかばかりだったか。
並行して連絡した建築会社の人も「古墳……ですか?」と戸惑った。考古学者や庭園に詳しい設計士がざっくりした図面を見せたが、「すみません、見積もりようがありません」と言う。
竹田の会社でシステム開発を行なってきた本合史伯も振り返る。
「竹田から『古墳墓をネットで販売したい』と言われたんです。聞いた時はのけぞりましたね(笑)」
竹田は、終活業界のゾゾタウンを目指そうと考えたらしい。
「ゾゾさんは、今までネットでは買いにくかったアパレル製品を安心して買えるようにしたことが素晴らしかったと思うのです。お墓も同じですよね」(竹田)
要するに皆が驚き、戸惑い、のけぞった。こういう話はだいたい流れる。協力者も集まりにくい。ところが竹田の事業には次々と人がジョインしてくるではないか。
霊園から断られてもくじけず電話を掛けつづけると、いくつか前向きな施設があった。中でも竹田は宗派のアイデンティティー上、最も厳しいと思しき浄土真宗の住職が口にした言葉が忘れられない。
「寺の敷地内に古墳を造ることに何の違和感もない、と仰るのです。これでほかの霊園さんにも横展開しやすくなる!と思いました」
様々な建築会社に相談すると、古墳墓の造成は建築に加え土木の分野にも通じた企業でないとできないと教わり、これを基に絞り込むと地場の企業が手を挙げてくれた。古墳墓の下に石を積む必要があったが、これも城の石垣の修繕などを行なう専門性が高い職人が協力してくれることになった。
協力者が集まるのは、やはり皇族の血を引く有名人だから?
全然違うらしい。本合が話す。
「……熱量ですかね、やっぱり」
今、お客様への販売を担当している若山浩之が話を継いだ。
「先生は勉強家なんです。一夜にして玄人になるほど徹底的に勉強されます。のちに古墳が完成すると、先生は霊園の約款まで自分で作ってしまったくらいです」
知識の量も本気度を示すはずだ。胆力も生半可ではない。地位にもお金にも不自由ないはずなのに、彼は使命感など、時にお金より他者を巻き込みやすい何かを掲げて動き、時にはYouTube等で賛否あることも臆せず発言する。
そんな竹田の周りにはその「生き方」に感応する人物が集まるのかもしれない。しかも、単純に好かれているようだった。若山らは「先生に言われたら頑張りますよね」と話し合う。
広報を担当する丸茂大が話す。
「私は『お題がいい』のだと思います。何をやっても日本初だから、仕事をするのが楽しいですよね」







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