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映画「国宝」ブームで盛り上がる歌舞伎!それでも敷居が高いという人におすすめしたい「シネマ歌舞伎」の魅力

2026.01.04

2025年のヒット映画といえば、歌舞伎の世界を描いた『国宝』が挙げられる。6月に公開されて以来、22年ぶりに邦画実写作品の国内興行記録を塗り替え、興行収入178.7億円を突破。

1231万人という観客動員数を記録し、第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品にも決定している。

『国宝』にも出てきた舞踊演目『二人藤娘』

『国宝』をきっかけに歌舞伎に興味を持った人も多いかもしれない。筆者は13年ほど歌舞伎取材を担当しているが、今年は取材のたびに歌舞伎俳優から「『国宝』効果で“初めて”のお客さまが増えている」といった声を聞いた。

とはいえ、歌舞伎座や新橋演舞場などの劇場に足を運ぶのが難しい人や、高価格帯のチケット(桟敷席1万8000円~2万円、1等席1万6000円~1万8000円)などから、歌舞伎観賞に二の足を踏んでいる人もいるだろう。

※3等席は5000円台もある。また一幕ごと見ることができる『幕見席』であれば1000円台もあり。

そこで、ぜひオススメしたいのが、『シネマ歌舞伎』だ。

映画感覚で見ることができるシネマ歌舞伎

全国32エリアの映画館で歌舞伎を上映する『シネマ歌舞伎』

シネマ歌舞伎は、松竹が制作・配給する歌舞伎の舞台公演を高性能カメラで撮影し、スクリーンで上映するために編集・制作した映像作品のこと。

単なる「公演の記録映像」や、生中継を行う「ライブビューイング」とは異なり、映画館の大スクリーンと高音質の音響設備で楽しむことを前提にカット割りや音の調整が徹底的に行われた、一つの「映画作品」となっている。

歌舞伎座近くの東劇を始め、TOHOシネマズやMOVIXなど、北海道から鹿児島まで全国32エリアの映画館で上映されている。

東京・東銀座にある映画館『東劇』

2200円で観賞!初心者にこそ推したい『シネマ歌舞伎』3つのメリット

シネマ歌舞伎は2025年で20周年

シネマ歌舞伎は2005年にスタートし、今年で20周年。各映画館では古典作品や舞踊などがピックアップされている他、特定の作品を毎月1回上映する『月イチ歌舞伎』もある。

シネマ歌舞伎のメリットのひとつが、その価格。料金は一般2200円、学生・幼児1100円(一部例外あり)とお手頃だ。

「まずは試しに見てみたい」という方にとって、映画を見る感覚でふらりと立ち寄れる価格設定は大きな魅力。ポップコーンを食べながらカジュアルに楽しむことができる。

東劇の1階窓口。現在は3階でチケットを購入する

2つ目のメリットは、特等席でも見られない圧倒的な臨場感。実際の歌舞伎座や劇場で観劇する場合、後方の席では役者の細かな表情まで見えづらいことがある。

さらに、自分が座っている座席からの視点でしか見ることができない。しかしシネマ歌舞伎では複数のカメラを駆使し、「ここぞ!」という場面で役者の顔をアップで捉える。

したたる汗、涙、目の動き、豪華な衣裳の刺繍の細部まで、まるで舞台に上がって見ているような距離感で楽しむことができる。

また花道や舞台上から客席が映る“役者目線”の景色も見えるため、通常の観劇では絶対に見られない視点を体感できる。

古典や舞踊など幅広い作品を見ることができる

3つ目のメリットは、ラインナップの充実ぶりだ。シネマ歌舞伎には、古典的な演目だけでなく、漫画原作の作品や、最新の演出技術を駆使した新作歌舞伎も数多くラインナップされている。

特に『月イチ歌舞伎』は毎月異なる作品が全国の映画館で上映され、その時期に見るべき名作がセレクトされている。劇場で見る前の予行演習にもなるだろう。

“歌舞伎の沼”に引き込んだヒット作『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』も

『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』の主演・松本幸四郎さん(当時の市川染五郎)/写真提供:松竹

ちょうど12月は、全国の映画館や東劇で劇団☆新感線の脚本家・中島かずき氏が手掛けた『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』がシネマ歌舞伎として上映されていた。

同作は2015年に新橋演舞場で上演された話題作を収録したもの。もともとは2002年に劇団☆新感線によって上映された舞台で、松本幸四郎さん(当時は市川染五郎)や堤真一さん、水野美紀さんらが出演した。

坂上田村麻呂を演じた中村勘九郎さん/写真提供:松竹

2015年に作・中島氏、演出・いのうえひでのり氏(ともに劇団☆新感線)という強力タッグのもと歌舞伎化され、幸四郎さん(染五郎)、中村勘九郎さん、中村七之助さんら豪華キャストが出演。

照明、音響を駆使しスピーディーな殺陣と壮大なドラマ展開で、「歌舞伎は静かなもの」というイメージを覆した。

2015年当時、筆者も『阿弖流為』関連の取材はほぼ全て出席したが、現在の『国宝』のように「これがきっかけで歌舞伎にハマった」という人も多く、“歌舞伎の沼”に引き込む作品だ。

謎の女・立烏帽子と鈴鹿を演じた中村七之助さん/写真提供:松竹

物語の舞台は平安時代。実在した歴史上の人物・阿弖流為(アテルイ)の舞台化を構想した幸四郎さん(染五郎)自身が、阿弖流為役で主演。蝦夷(えみし)を率いるリーダー・阿弖流為と、蝦夷を討伐する坂上田村麻呂(勘九郎)が敵同士でありながら奇妙な友情で結ばれ、阿弖流為を導く謎の女・立烏帽子(七之助)をはじめとする一筋縄ではいかない登場人物たちによる物語が、従来の歌舞伎にはないスピードとスケール感で描かれている。

トークショーや舞台あいさつがある時も 

シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』のティーチイン付き上映会

12月18日には東劇でシネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』のティーチイン付き上映会が開催され、中島氏とライターの九龍ジョー氏が登壇。

シネマ歌舞伎は時々、脚本家や演者が登壇する舞台あいさつやトークショーを開催するので、そうしたイベント狙いで見に行ってみるのもいいかもしれない。

東劇内では場面写真が展示されていた

この日のティーチイン付き上映会では中島氏が当時の作品作りを振り返り、「勘九郎くんが演じる坂上田村麻呂は、(舞台版より)年齢的にも若くなるため、より真っ直ぐで未熟な人間に設定を変えた」と解説。

七之助さんの起用についても、「男性が女性を演じるという抽象性があるからこそ、思い切って演じることで『人ならざるもの(神)』へと昇華できる」と、歌舞伎ならではの演出意図を明かした。

シネマ歌舞伎だからこそスクリーンに永遠に残すことができる

蛮甲役を演じた故・片岡亀蔵さん/写真提供:松竹

また、同作には11月24日に都内で発生した火災により亡くなった片岡亀蔵さんも蛮甲(ばんこう)役で出演している。

蛮甲は自分が生き残るために仲間をも裏切り、クマが“嫁”というトリッキーな役どころ。

中島氏は亀蔵さんの演技について、「歌舞伎役者の懐の深さを感じた。亀蔵さんの蛮甲、本当に素晴らしくって」と称賛。

「もっともっと一緒にお仕事したかった。悔しい」と惜しみながらも、「こうやって、(亀蔵さんの)素晴らしい仕事がスクリーンに残っているのを、いつでも見ることができるというのが、自分としては救いになっている」と語った。

上映時間が長いので途中で休憩が入る(休憩中の映像)

その瞬間しか見ることができない劇場の“生”の熱量を、シネマ歌舞伎では永遠に残すことができる。

10年前の幸四郎さん、勘九郎さん、七之助さん、そして亀蔵さんの、“あの時”にしか出せない動きやキレを映像としてずっと残すことができるのは、シネマ歌舞伎の最大の魅力かもしれない。

1月公開のシネマ歌舞伎は『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』/写真提供:松竹

2026年1月からは、幸四郎さんと息子・市川染五郎さんの親子共演や尾上松也さんとのダブル主演が話題の新作『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』のシネマ歌舞伎公開も控えている。

映画館という身近な場所で、日本の伝統芸能の「今」に触れてみてはいかがだろう。

取材・文/コティマム

元テレビ朝日芸能記者で、現・フリーランス記者。2児(姉妹)の母。歌舞伎や舞台、芸能イベント、企業・経営者を取材中。音楽雑誌やレコード会社勤務経験もあり、舞台評や音楽評、ライブレポ等も担当。執筆記事1.3万本以上。取材は5200回以上。ライターを目指す方向けのライター講座や、企業広報へのメディアアプローチ等のコンサルも実施。24年11月に合同会社パラレルコネクトの設立メンバーとなり、メディアやインフルエンサーと企業をつなぐサポートも行っている。

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