2025年の年末年始は、日並びにより最大9連休(12月28日〜1月5日)が実現する。これを受けてコロナ禍以降で最も活発な帰省・旅行ラッシュが予想される一方、住宅を長期間不在にする家庭も増えることから、防犯対策の必要性が指摘されている。
最大9連休という「空白の時間」は、昨今世間を騒がせている「闇バイト」や、巧妙化する空き巣犯にとって絶好の機会でもあるからだ。実際、警察庁のまとめによれば、2024年の住宅を対象とする侵入窃盗の認知件数は「空き巣」が最も多く、全体の約3割を占めている。
というわけで、セキュリティサービスのセコムから自宅を長期間不在にするときの防犯対策をまとめたレターが届いているので、その概要を専門家による防犯アドバイスと併せてお伝えする。
特に注意が必要な「SNS空き巣」の傾向と対策
かつての空き巣は「足」で下見をしていたが、現代の泥棒は「指(スマホ)」で下見を行なう。単に「SNSを見た」だけではなく、複数の情報をパズルのように組み合わせるのが現代の空き巣の手口だ。その具体例は以下のとおり。
■モザイクアプローチ

1枚の写真や1つの投稿では個人を特定できなくても、複数の断片的な情報(SNSの背景、過去の投稿、位置情報、ストリートビュー等)を組み合わせることで、隠されていた住所などの個人情報を手に入れる手法のこと。
<事例1:窓の外の「景色」とストリートビューの照合>
1)ターゲットがSNSに「今日の夕焼け綺麗!」と、自宅の窓から撮影した写真を投稿。
2)犯人は写真に映り込んだ「特徴的な看板」「マンションの屋上の形」「鉄道の線路のカーブ」などに注目。
3)Googleストリートビューでそのランドマークが見える角度を探して、建物の外観と階数、さらには部屋の位置まで特定。
4)後日、同じターゲットが「今からハワイへ出発!」と空港の写真を投稿した瞬間、犯行におよぶ。
★写真に住所が書いていなくても、背景の「点」とストリートビューの「面」が合致すると、ピンポイントで家が特定される。

<事例2:マンホールや電柱の「地域記号」からの特定>
1)ペットや子供を撮影した「道端の写真」を投稿。
2)足元に映ったマンホールのデザイン(自治体ごとに異なる)や、足元に電柱にある「住所表示板(の一部)」、あるいは「ゴミ収集日の看板」から地域を絞り込む。
3)ストリートビューを使い、その周辺でSNSに映り込んでいた「家の生垣」や「玄関のタイルの色」が一致する家を特定。
★自宅の「外」での撮影であっても、生活圏内であれば自宅特定への大きなヒントになる。
「走るカレー(は・し・る・か・れ・え)」とは何か

セコムでは、自宅を長期間不在にするときの防犯対策をまとめたフレーズ「走るカレー」を考案している。
<「は」:配達物を止めておく>
長期不在にするときは、新聞や郵便物の留め置きの手続きを必ず行ないたい。2〜3日の留守でも郵便受けがいっぱいになってしまうこともあるので、油断は禁物だ。宅配便も、注文した荷物が不在中に届かないよう日時指定をしておくといいだろう。
<「し」:照明のタイマー設定で在宅を装う>
連日夜間に灯りがつかない家は、長期留守を知らせているようなもの。照明のタイマー設定で在宅を装ったり、門扉を常夜灯にしたりすると、在宅を演出できる。ラジオやテレビをタイマーで起動すると、「声」でも人の気配を感じさせることができ、より効果的だ。
<「る」:留守番電話の応答は「在宅中」。またはスマホ転送>
固定電話に電話をかけて、留守かどうかを確認する泥棒もいる。留守番電話の応答メッセージに「●日まで留守にします」「帰省中です」などの内容は控えること。「ただいま手が離せません」のような在宅を装うメッセージにするか、またはスマホに転送する設定にしておく。

<「か」:鍵をきちんとかける。1ドア2ロック、窓にも補助錠を>
施錠は防犯の基本だが、長期不在にするときはさらなる徹底が必要。特に窓から侵入する手口が多いため、補助鍵をつけるなどして対策を強化しておきたい。「ガラス破り」の手口も横行しているので、防犯フィルムや防犯ガラスで補強するのも有効だ。
<「れ」:連絡を親しい隣近所、近くの親族に>
長期不在中に空き巣に入られた場合、誰にも気づかれず対応が後手に回ってしまう可能性がある。不審火などのリスクも想定されるので、親しい隣人や近くに住む親せき・友人などには、不在期間や自身の緊急連絡先を教えておくこと。
<「え」:SNSはすべて事後投稿>
近年、空き巣狙いがターゲットを求めてSNS投稿を検索していたケースが多数確認されている。旅行先からリアルタイムで投稿すると、不在を悟られるので注意が必要だ。「明日から旅行」「●日まで実家に行ってきます」といった先の予定を投稿するのも控える。
旅行中のSNS投稿で気を付けたい4つのポイント
セコム株式会社 IS研究所リスクインテリジェンスグループ チーフ研究員
シニアリスクコンサルタント/防犯設備士/防災士/
日本市民安全学会常任理事
濱田宏彰 氏
■SNS投稿内容や投稿タイミングに注意
旅行の予定をSNSに投稿するなら注意が必要です。「●月●日から待ちに待った旅行!」「明日から●●へ行ってくる」といった行き先や自宅の留守がわかるような投稿はNG。同様に、旅先でも「いま●●にいるよ」「●●でごはんを食べている」などリアルタイムの投稿は控えましょう。
■投稿する写真は大丈夫?
投稿する写真は事前にしっかりチェックしましょう。背景から滞在先のホテルや、旅行中に立ち寄る場所などが特定される可能性があります。また自分の顔や友達の顔などがはっきり認識できる写真が、悪意を持つ第三者の関心を引く可能性も否定できません。投稿写真にはスタンプやぼかしを使うなど工夫したほうが良いでしょう。周囲に写り込んだ人にも配慮が必要です。
■画像のGPS情報はオフに
スマートフォンで撮影した写真には撮影地点や日時などの情報が記録されています。最近は投稿時に位置情報を自動削除するSNSが増えていますが、すべてのSNSに該当するわけではありません。プライベートな写真を投稿するなら、使っているSNSの設定を確認してみてください。旅行以外の投稿でも、自宅や行動範囲を特定されるリスクがあることを忘れてはいけません。
■公開範囲にも注意する
SNSの非公開アカウントを利用していても、シェアされれば広く拡散されてしまう可能性があります。メッセージアプリの非公開のグループトークやタイムラインへの投稿も同様です。「友だち限定」でも、仲間内で「勝手に転載しない」などのルールを事前に決めておいたほうが安心です。
構成/清水眞希







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