令和6年能登半島地震から2年。まさか元旦に大地震なんて……と不意を突かれた出来事であり、改めていつもの暮らしに”もしも“の備えが必要だと地域の防災マニュアルを見直した人は多いだろう。
けれども2年たった今、その防災マニュアルを手元に置き、読み返している人はそう多くはないのでは。
日本のキャンプシーンを支え続けているニューテックジャパンはオリジナルブランドである「鎌倉天幕」は横浜の老舗印刷会社「大川印刷」の協力のもと『読むだけでは終わらない防災マニュアル』を製作した。
防災マニュアルが便利なツールに変身
ニューテックジャパンの白石徳宏社長は、長年にわたり地域防災に携わっており「読むだけだった防災マニュアルを、道具としても使えるようにしたい」と取り組んだという。
「自主防災リーダー研修会で最初に学ぶのが新聞紙でスリッパと食器を作ること。
避難所となる体育館などは来客用のスリッパを用意していますが、避難する人全員分はありません。冷たい床の上で裸足は大変だし、土足だと不衛生。北海道の避難所ではこの問題に、新聞紙でスリッパを作って対応したと聞きました。
ところが地元で防災訓練を行うにあたり、事前に避難所にスリッパを持ってきてと伝えていても全員がスリッパを持ってくるわけではありません。
また、新聞紙で簡易スリッパを作れますが、今は新聞紙がありません。
そんなこともあり、いつもバッグに入れておけるサイズの防災マニュアルでスリッパや食器を作れるようにしたんです」(白石社長)
テント作りの知識から折り紙スリッパや食器の型を作ったのかと思ったがそうではない。地元企業から世界的ブランドまで多様なパッケージを手がける大川印刷が考案してくれたそうだ。
あくまで簡易スリッパ。
クッション性がないので、間に段ボールを挟んだりガムテープなどで補強したり。紙製なので、子ども用に折りたたんでもいい。
自分で工夫することが前提だ。
知識と応用力でトラブルを乗り切る
崎陽軒の包装紙・掛け紙を作っている大川印刷が考案しているだけあり、折り紙食器は比較的水に強い紙を使っており数度の食事に耐える。
さらに各自で食品用ラップやアルミホイルなどを敷けば繰り返し利用できる。
皿にプリントされているのは実用性の高い8種類のロープワークだ。
・輪っか作りの定番「もやい結び」と「ダブルドラゴンループ」
・2本のロープを結ぶ「一重つぎ」
・素早く柱にロープを結びつける「巻き結び」
・ロープの長さを調節できる「調節可能グリップヒッチ」
・ロープの中間に輪っかを固定する「中間結び」
・荷物の固定に便利な「トラッカーズヒッチ」
・救助にも使われる「腰掛け結び」
どれも細かな手順は掲載されておらず、完成時の結びのみ描かれている。
いざというときに防災マニュアルを引っ張り出して、いちいち確認しながら結ぶというわけにはいかない。また、「ロープワークがわからなければ動画で確認すればいい」とも言われるが、いつでも電波がつながるとは限らないし、災害時はスマホの電池残量も気にしたいところ。
あえて結びのイラストのみとしたのは、日頃から手を動かして反復練習し、手が動きを覚えていないと役に立たないのでまずはこの8種類の中の1種類から自分のモノにしておこう、という意味が込められている。
「災害時はサバイバル。キャンプ道具や防災バッグが手元にあればいいけれど、突然の地震ではそうじゃない場合も多いでしょう。
ロープワークなどの知識があり、そこにはない道具を作れるかどうかが大事なんです」(白石社長)
スリッパの工夫もそうだが、『読むだけでは終わらない防災マニュアル』には自分の知識で対応できる力を身につけていることが大切。それを意識してほしいと白石社長は語る。
「防災=知識だと考えています。知識があれば簡易的な道具を作れるし、避難する場所の選択も間違えず、生き残る確率が増えます。この防災マニュアルをきっかけに、自分で知識を増やしていただければ。
ただ、知識は重要ですが実践も必要。
たとえばテントやキャンプ道具は災害時に役に立ちますが、テントをたてたことがない人はたとえテントが目の前にあっても1時間たってもたてられません。
だからこそ、僕たちみたいなアウトドアメーカーは野外活動を通して、真剣に防災に取り組むほうがいいと思っています」(白石社長)
モニターの声をヒントに第二弾も
より多くの人に活用してもらうべく『読むだけでは終わらない防災マニュアル』は自治体や学校、企業への販売を予定。
現在はモニター企業を募集しており、希望する会社に10枚無償提供中だ。
また、意見をもとに今後も2作目、3作目を予定しているというから楽しみにしたい。
文/大森弘恵







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