2025年12月8日深夜に青森県東方沖を震源とする最大震度6強の地震「北海道・三陸沖地震」が発生。そのあと、聞きなれない「北海道・三陸沖後発地震注意報」が発令された(現在は解除)。
気象庁が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表するのは、過去の大規模地震が後発地震として発生している事例が知られているからであり、たとえ不確実性が高くとも警戒レベルを上げることで被害軽減を図ることができると考えられるからだ。情報が発表されたら、地震発生から1週間程度、社会経済活動を継続しつつ、日頃からの地震への備えの再確認をすることに加え、揺れを感じたり、津波警報等が発表されたりしたら、すぐに避難できる態勢を整える必要がある。
地震大国の日本ではいつ大きな地震があってもおかしくない
これは、北海道・三陸だけのことではなく、地震大国の日本においては、日本中、いつ、どこでも大地震が起こるか分からず、日本中の誰もが、家庭、職場で防災意識を高め、備えるべきなのである。
新年を迎えるにあたり改めて家庭内の防災意識を高め備蓄を整えたい
ここでは家庭内の防災、備蓄について説明すると、最低限必要な備蓄品として、ミネラルウォーター、非常用トイレ、トイレットペーパー、モバイルバッテリー、カセットコンロ(+カセットガス)、LEDランタン、ウェットティッシュ、ペーパータオル、常備薬、そしてローリングストックしている食品、季節に合わせた備品(冬なら貼るカイロ、夏なら虫除け、保冷剤など)などが挙げられる。もちろん、家族間の連絡網も不可欠で、例えばLINEグループに「家族」を設定しておくことも役立つだろう。離れ離れになったときの連絡、安心である。
避難には避難所・自宅・知り合い宅・車内など複数の選択肢がある
大災害に見舞われたとき、避難先にはいくつかの選択肢がある。ひとつは避難所にお世話になることだが、自宅避難(自宅が無事である場合。愛犬とともに避難する場合に有効)、被災していない親戚、知人、友人宅に身を寄せる(愛犬とともに避難する場合に有効)、そしてクルマの中をシェルターとした車内避難(愛犬とともに避難する場合に有効)という選択もある。この選択肢が多ければ多いほど、安心とも言えるのだ。筆者の場合、家族の一員である愛犬とともに暮らし、避難は愛犬同伴(=同伴避難。同行ではなく避難者と同じ屋内の空間に避難できること)と決めているので、筆者の場合、近隣の小学校、体育館などの避難所が、現状、”同行避難”(ペットは屋外の決められた場所)のみしか認められていないため、避難所以外の選択を強いられるのである。※すぐ隣の地域では、ほぼすべての避難所で”同伴避難”できるのだから、悔しい思いをしているところだ(それぞれの自治体の判断。その長が愛犬家、愛猫家かどうかで決まる!?)。
被災経験から学んだ防災備蓄の正しい知識
話を備蓄品に戻せば、この@DIMEの防災記事で何度も説明しているように、備蓄品ひとつひとつにもこだわりたい。
●ミネラルウォーター
水のストックはとても大切だが、多くの人は2Lペットボトルのミネラルウォーターを6本入りの箱で用意しているかもしれない。それはそれで役立つのだが、現実的に断水した状況で水を飲むとしたら、コップは洗えない。そこで、2Lのミネラルウォーターとともに、500mlのミネラルウォーターも用意したい。であれば、コップを使わず、新鮮なうちに飲み干すことができるというわけだ。もちろん、カップ麺にお湯を注ぐ、パウチ食品を温めるといったシーンでは、2Lのペットボトルのミネラルウォーターが便利になる。わが家では、家族分、2週間分のミネラルウォーターを、2Lと500mlに分けて用意してある。
●非常用トイレ
断水時、あるいはトイレの便器が破損したときに役立つのが非常用トイレだ。ここでぜひ念を押したいのは、断水していても、風呂の貯め水があるから、トイレを使ってもいい・・・という間違った考え方だ。もし、トイレの配管が破損していたら、とんでもないことになる。また、上水が復旧しても、下水が復旧していないと、これまたとんでもないことになるのだ。東日本大震災で被災した筆者の場合、上水は1か月程度で復旧したものの、下水の復旧はそれよりずっとあとで、およそ2か月は風呂もトイレも使えなかった経験がある。
災害時にもっとも困るトイレ事情だが、ここでもトイレを使う現実的な選択肢はふたつある。ひとつは避難所、公園などに設置される仮設トイレの開設を待ち、利用すること。しかし、夜など、利用をためらう人も多いはずだ(東日本大震災のときは、家族の中で男性の筆者のみ利用。女性陣は自宅で非常用トイレを使用)。もよおしてすぐに使えないという問題点もある。
そこで、トイレが使えなくても家、部屋が無事であるという前提では、非常用トイレが役立つのだが、まずは個数。備蓄数は一人1日5回×人数×日数で、最低限、一週間の使用だとしても、4人家族の場合、5×4×7=140回分が必要になる。一週間で上水道が復旧しても、下水道が使えなければトイレは流せず、それ以上の備蓄が必要になるわけだ。「小」を1回分とせずに使い回したとしても、「大」はそうもいかず、備蓄数はそれより多いにしたことはない。
その非常用トイレについてだが、トイレの便器にかぶせて使うのが基本とはいえ、便器が壊れてしまったとこを想定し、別途、組み立て式、または家具調の据え置き型のポータブルトイレを用意しておきたい。
また、非常用トイレの主な構成物は便器カバー、凝固剤、そして防汚袋だが、汚物が入る防汚袋は、ペット用にもあるBOSの「うんちが臭わない袋BOS」などを使用した強力な防臭性能のあるものがベストだ。というのは、汚物袋がゴミとして回収できるのはかなりあとになるはずで、その汚物袋を自宅内、またはベランダ、庭などに一定期間、置いておかなくてはならない。やはり強力な防臭袋を使用した汚物袋がセットされた非常用トイレが望ましいということになる。合わせてポータブルを用意しておけば最強である。もちろん、トイレットペーパーの備蓄も合わせてお忘れなく。
災害時には電子決済やクレカが使えないこともあるため現金必須
このほかにも、LEDランタンは部屋数+玄関+トイレ分の数があると夜も安心で(ストックするアルカリ電池は10年保存、液漏れ対策品を推奨)、ローリングストックしてある食料品、備蓄食料にカップ麺を用意するなら汁の凝固剤(100均にある。残った汁をシンクに流せないため)、使い捨てできる箸やスプーン、フォーク、ポリラップ(お皿に敷けば、食器を洗わずに済む)、ウェットティッシュ、拭くだけ洗顔シート、ドライシャンプー、マウスウォッシュ、ポリエチレン手袋などの日用品、衛生用品のほか、現金も用意しておきたい(1万円札を除く。1000円札と小銭)。災害時、タッチ決済、クレジットカード、銀行のキャッシュディスペンサーが使えないことも大いにありうるからである。
大災害が起こったあと、トイレットペーパー、電池、食料品、ミネラルウォーター、クルマの燃料などが手に入りにくくなることは、これまでの大災害のあとを振り返れば明白。備蓄についてしっかりと考え、用意しておきたい。
避難所であるとより快適になるアイテムとは?
最後に、避難所に避難した場合、体育館、ホールなど、冬は寒く、床が板張りで固い場所に避難し、座ることにもなりうる(パーテーション、ダンボールベッド、毛布などの備蓄品の数は限られ、設置に時間がかかる)。そこで役立つのが、避難初期、床に座るための折り畳みクッション(折り畳み椅子にも有効)やクッションシート、そしてひざ掛けだ。最低限、それらがあれば、お尻が痛くならず、寒い時期でも暖かく過ごせることになる(クッションは通年、あると便利)。家族が入れるワンタッチ式テントも、設営が可能ならあるとプライバシーが守れる。
この年末年始、防災・備蓄について改めて考え、準備万端にして、安心して新年を迎えたいものである。
文/青山尚暉(防災研究家)







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